皇帝の遺言 7
いつも通りの感触に呼び掛けるナギト。
脅威は、すでに目前まで迫っていた。
「ふ――!」
槍を振るい、迫りくる刃を落としていく、
ナギトはアルクノメが逃げた森から反対方向に移動した。自分の仕事は、あくまでも彼女の囮だと。ハルピュイアを引きつけるために、来た道を戻っていく。
敵の追撃は正確だった。ナギトの先を読み、道を塞ぐように羽根を撃ち込む。
「あれ!?」
気付けば、道を塞がれていた。
聞こえるのは空気が裂ける音。逃げ場を失った獲物へ、ハルピュイアが全速力で突っ込んできている。
壁を登る時間はない、防ぐ手立てもありはしない。
迎え撃つのが、唯一の手段。
「……」
投擲の構えを取るナギト。
緑を引き裂く爪は、一瞬の間で降ってきた。
ハルピュイアの身体は至るところで光を放っている。恐らく防御を兼ねて、羽毛を硬化させているのだろう。普通の武器では貫けない。
なら問題はなさそうだ。
普通じゃ、ないんだから。
「ふ――!」
槍が手を離れた直後、鳴り響くのは空が割れるような轟音。
防御など許さない。躱すだけの時間もない。
ただの一撃。攻防一体の状態にあったハルピュイアは、雷帝真槍の一撃によって吹き飛ばされた。