嵐の前後 5
「んじゃ、アタシはこれで。くれぐれも無茶はすんじゃないよ?」
「あはは、考えときます」
体裁上の台詞を聞いて、皇女は病室を後にした。
しかし足音はなかなか消えない。――それどころか徐々に大きくなって、病室の方に再び近づいてくる。
何だろうか。随分と焦っている様子だが。
音の正体は、二人の見張りと何か話しているようだった。不安のこもった抑揚がナギトにも届く。帝国がどうたら、とも聞こえてきた。
「ナギト君!」
現れたのは、テストミアの市長。
彼は息を切らしながら、一杯の焦燥感と共に口を開く。
「この病院から、直ぐに出ていってくれ!」
「へ?」
間抜けな声を出しながら、思う。
嵐の前の静けさって、本当にあるんだな、と。
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病院から叩きだされたのは、ナギトに限った話じゃなかった。
一人の帝国兵。イピネゲイアに背負わせている彼は、不幸にもクリティアスの撤退に置いていかれたらしい。その後テストミアに留まっていたが、市民に発見され――というわけだ。
頭には髪飾りのような、小さな石をつけている。確か近衞兵に与えられるお守りの品だ。神の力が宿っているとかで、皇家からの送られるらしい。
そんな負傷者と一緒に、ナギトたちは人気のない路地を進んでいく。




