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過去からの疼き 5
「え、えっと……しかしまた、どうして?」
「アンタがよくご存じの理由だよ。ほら前回の闘技大会があったろう?」
「あー」
よく覚えている。加えてナギトは当事者であり、戦いの幕引きに貢献した人物の一人だ。
「前回の予選は大変だったと聞くぞ? 兄様」
促すようなイピネゲイアに反応したのは、聞き手に徹していたリオ。
彼女は戦争へ直接加わっていなかったため、好奇心を刺激されたんだろう。口調の割に幼い顔が、前かがみになって近付いてくる。
「前回前回大会の予選では我らの一族――いやバルバロイか。それが二つに分かれて、大規模な戦いに発展したんだろう?」
「そうだね。……でもリオ、バルバロイ、ってこの町では言わない方がいいよ。特に魔術工房のある区域ではね」
「む、そうか、差別的な発言と取られるんだったな」
危機意識に急かされて、リオは病室の入口へと向かっていった。
何事もなく戻ってくる辺り、今の発言を第三者に聞かれたわけではないらしい。
「……兄様は怒らないのか?」




