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皇帝の遺言 6
獲物を捕えることはなかったが、常識はずれの一撃は容易く木の幹をもぎ取っていた。直撃していれば今ごろ、ナギトは血だるまにでもなっていただろう。
今も折れている枝の向こうには、荒々しい獣の眼光が二つ。
鳥だった。
十メートル近くはある巨大な鳥。体毛の一部は鉄のように輝いている。二人を襲った刃の雨は、ソレを投擲したのだろう。硬化する能力があった筈だ。
加えて頭には、人間のような髪。普通の鳥とは何もかもが違う。
「ハルピュイア……!」
名を呼ばれた怪鳥は、応えるように飛び上がった。
ナギトは追えないし、止めようともしない。それが人間として普通の対応だ。帝国にいる多くの人だって、歯向かう前に逃げることを選択するだろう。
だからその選択は、アルクノメにくれてやった。
この場で、叩き落としてやる。
「っ……!」
大空へ到達した直後、ハルピュイアは羽根の刃を叩きつけた。
月明かりに染まる敵意を見て、ナギトは右手の魔術を発動させる。
唐突に現れたのは、槍だった。
何の装飾もない、シンプルな一本槍。柄は木で作られ、先端に短く魔術言語を記している。
「やるよ、雷帝真槍」




