第九話 過去からの疼き 1
「なんだいアンタ。独り言かい?」
ノックすらせず、入ってきたのはイピネゲイアだった。
――多分、見舞いに来たのだろう。手にはテストミアで製造されているワインが握られている。
「コイツでも飲んで、頭ん中スッキリさせな。包帯人間」
「い、いや、さすがにどうなんですか……あと僕、包帯人間じゃないですよ」
「は? どうして? その腕は包帯だらけじゃないか」
「いや、ガーゼだって貼ってますから」
「……」
受けが悪かったようで、冷たい空気が駆け抜けた。冬はこの前終わったのに。
病室に相応しくないワインボトルを、イピネゲイアは本当に渡してくる。……困った。テストミアの法律じゃ、学生は酒を飲んじゃいけないのに。
それとなく目で訴えてみるが、彼女は知らぬ存ぜぬで椅子を出す。
すぐに座ると、イピネゲイアは自然と足を組んだ。スカートが短いお陰もあって、健康的な太股が嫌でも目立つ。
「――おっとボウズ、視線には気をつけるんだね。女はそういうのに敏感だよ?」
「す、済みません……」
「はは、何を謝る必要があんのさ。歳なんだし、女の身体に興味が出るのは普通だよ? それとなーく見りゃあ、アタシも文句は言わないさ」
「は、はあ?」
呵々大笑する彼女へ、ナギトは首を傾げつつ頷いた。




