赤い獣牙 5
そこにいるのは武装した兵隊だった。右胸には議会所属を示す紋章が。……表情にどことなく安堵があるのは、入れ違いで敵が撤退したからだろう。
しかし彼らの目には、ナギトを糾弾する気配がある。
奥からは市長も姿を現し、眉根を曇らせながら一行を見つめていた。
「ボウズを連れて行こうってのかい? 市長さん」
一応の外野であるイピネゲイアは、彼らの前に立ち塞がりながら言う。
市長の首振りはもちろん縦。後ろに控えている形の兵士たちは、敵の動きに備えて身を屈めている。
どうするつもりなのか――第一皇女の前後から、数人分の視線が注がれた。
彼女はまず、握っていた剣を鞘にしまう。
「ボウズの代わりにアタシが行くよ。いくらか手土産もあるし、構わないだろう?」
「い、いや、だがねえ……」
「そもそも市長さん、こんなボロ雑巾みたいなやつを大衆の前に引きずり出すのかい? 市長ならもっと、でかい器の持ち主だと思ってたんだが」
「……はいはい、分かった分かった」
「よし」
市長の態度には誠意の欠片もないが、イピネゲイアは満足らしかった。身の危険をまったく省みず、大股で彼の元へ急いでいく。
助けられてしまった。
情けない思いの中、ナギトは安心して意識を手放す。




