赤い獣牙 3
正体の視認すら許さず、彼女はドラゴンの腕を一閃した。重力に引かれて落下するナギト。叩きつけられれば十分痛い高さだが、寸前で妹が救出する。
乱入者の猛攻は止まらない。
真紅の外套を靡かせ、次々に最強の怪物を撃破する。的確な攻撃予測と反撃は、美しい軌跡となって戦場に咲いた。
「ほほう、まさか貴女が来るとは」
手駒が倒されているというのに、クリティアスは少しも焦らない。彼女の動きに魅せられているわけでもなさそうだった。
駒は、駒に過ぎないのだと。
ナギトとの戦闘でさえ、本気じゃなかったと彼の顔には書いてある。表情としては一つの笑みであり、子供のように無垢な精神を現していた。
「第一皇女・イピネゲイア。……オレステス皇子の姉であれば、弟を救うのが道理ではないかね?」
「はっ、アタシは馬鹿な弟の尻拭いをする気なんて、コレっぽっちもありゃしないよ。むしろ叱りに来てやったんだ」
まったく、と呟きながら、皇女は倒したドラゴンの上に乗る。
女性であることを忘れさせるほど、鋭い眼光の持ち主だった。短く切った髪も、彼女をたくましい生き物に見せている。
服は帝国の色である赤一色。
余計な装飾は一つもなく、本人の雰囲気もあって質素な鎧に思えてくる。




