魔竜咆哮 5
「く、くそっ、仕事をしろ無能どもが! 誰のお陰で今の役職についたと思ってる!?」
「し、しかし皇子」
憤懣やるかたないオレステスに答えたのは、護衛の代表らしき中年男だった。
「この町で我々の私闘は禁止されております。そもそも帝国兵が会場都市に入ること自体、過去に前例がありません。急ぎこの場を――」
「貴様の意見を誰が聞いた!? そもそも手を出してきたのは奴らだろうが! 俺が何をした!? 言ってみろ!」
「……」
色々と言いたそうな帝国兵。こうなると同情してやるしかない。
しかし彼も大人なのだろう。グッと激情を堪えて、抵抗する力のないオレステスを担ぎ上げる。肩の上で暴れる皇子だが、下にいるのは軍人だ。彼の腕力では何の強要にもならない。
オレステスに見られない範囲で、中年の帝国兵は小さく会釈する。ナギトも応じて頭を下げた。
「……あの、帝国兵さん。一ついいですか?」
「? 何か?」
「奴らって、誰のことです?」
「それは――」
直後に響く、ガラスの粉砕されたような音。
見えていることをそのまま言うなら、空間が裂けている。成人男性の上半身と同じぐらいの大きさで。
「――」
途端、全員の視線が釘付けになった。
穴から現れたのは、巨大なトカゲらしき生物の頭。ナギトと話していた帝国兵に、深々とその牙を突き立てている。




