魔竜咆哮 3
「さて」
魔性の矢を弓に番える。
しかし直後に聞こえたのは、何かが割れるような音だった。
リオにとっても意外な音だったらしい。二人は揃って眉を潜め、戦場に起きた変化を見る。
ヒビ、だった。
何もない空白に割れたような線が走っている。それも一つや二つではない。闘技大会の戦場という殻を、砕こうとするようにいくつも走っていた。
「……まったく、兄様は情け容赦がないな」
「な、ナギトが何かしてるって言うの?」
「ああ、大方――」
弛緩していた空気が、一瞬にして戦場の緊張感を取り戻す。
アルクノメは両手に意識を集中。魔術の発動を用意した。
「皇子の腕でも、切り落としたんだろう」
―――――――
醜い悲鳴を聞くナギトの手には、赤く染まった腕が握られていた。
目の前で当然のように起こった凶行へ、誰もが口を開けずにいる。実行犯の性格を知っているメルキュリクが、溜め息を零しているぐらいだ。
「が、があああぁぁぁぁああ……! 腕が、俺の腕があああ!」
「――」
地面を転げまわる皇子を見つめる、冷徹な双眸が一つ。
オレステスは躱す暇も、守ってもらう時間もなかった。学校を去ろうとして背を向けた途端、問答無用の一撃を受けたのである




