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吼える愚者 7
短い二色の髪を揺らして、彼女は兄の前に立つ。二つ年下なのを納得させる幼い顔を、冷たい決意の形にして。
神よ、と彼女は短い前置きを一つ。
「我らの戦いを、御覧あれ」
言った瞬間だった。
アルクノメと妹の姿が、綺麗さっぱり消えたのは。
「え」
「さあて、公開処刑の時間だぜ? ああいや、こういった方がいいか。――オリンポス闘技大会、予選の開始だ、ってなあ」
「っ……!」
結論に辿り着いた時、聞こえるのはオレステスの高笑いだけ。
闘技大会の予選は参加者のみで、誰の邪魔も入らない場所で行われる。神の力――魔術によって作られた、結界の中で。
干渉する方法はない。同じ参加者、あるいは代理人以外には。
「くく、じゃあな。女が死ぬのを黙って見てろよ!」
「――」
ナギトは何も言わない。そもそも耳にすら入っていない。
どうにかして、アルクノメを救わなければ。




