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皇帝の遺言 2
「地位を失った皇女を連れ出して、どうするつもり? 貴方にメリットなんて無いと思うけど」
「そんなことはないよ。僕は君を助けたくて助けたんだ。メリットならそれで十分さ」
「……」
呆れさせたらしく、少女の溜め息が足音に混じる。
反論する暇もなく、ナギトはひたすら前に進んだ。いま考えないといけないのは、ここから生きて脱出すること。多勢に無勢だ、包囲されれば突破は難しい。
なので敵にすれば、成立させるべき状況でもあって。
「いたぞ!」
その一報。静まっていた木々の間から、一斉に足音が蘇る。
二人が走り出すまで時間は必要なかった。彼女の方も身の危険には敏感らしく、反射的にナギトと動きを合わせている。
目的地まではまだ遠い。生い茂った緑の向こうに見えるのは暗闇だけだ。町の光は欠片ほども見えず、行き先への不安感を膨らませる。
と、正面。
「うお!?」
何の脈絡もなく、炎の壁が立ち塞がった。