歴史の中へ 8
「う、後ろにいるのは……」
「ああ、この神殿に忍び込むため、協力してもらった二耀族の人たちだよ。いやあ、噂の地下通路から入ったはいいが、神官連中に見つかって焦った焦った」
「ち、地下通路?」
確認を込めた問いに、イピネゲイアは勢いよく肯んじる。
なんだ、おかしい。彼らは口論の末、人質を取ったんじゃなかったのか?
どれだけ疑いの目を向けても、両者に疑念の類はない。以前から協力関係にあるような空気感。むしろ、こっちの方が部外者に思えてくる。
「よし、付いてきな。面白いモン見せてやるよ」
「は、はあ?」
様々な疑問が解消できないまま、ナギトは神殿の奥へと進む。
途中にいくつか部屋を見掛けるが、やはり人質はいない。……イピネゲイアが彼らの共犯者、という筋もなさそうだ。
外で聞いた話はすべて嘘なのでは。有り得ないはずの解答が、徐々にナギトの中で固まっていく。
しかし。
一つの異常な光景が、謎に更なる深みを与えた。
人がいる。
神官や巫子、といった出で立ちではない、普通の市民。髪を見ればヘレネス族であることも分かってくる。
彼らが人質なのか。
確信に近い意見を抱くナギトだったが、直後にそれは訂正される。――いや、別の疑問が上回ってしまった。
動かない。
彼らは少し俯いた姿勢で、じっと床を眺めている。まるで、部屋に飾られてる人形みたいに。




