104/192
歴史の中へ 7
辺りは生々しい惨劇の後――というわけでもなかった。結晶生物の特性上、彼らはマナへと還っていく。お陰で神殿の廊下は一面、霧が立ち込めるような光景となっていた。
「よし、先を急ごうか。立て籠ってる人たちが、ミノタウロスに襲われないとは限らないしね」
「無論だ。……しかし兄様、意外とやる気になってるな。アルクノメ皇女が関わっていないもんだから、嫌々やってるのかと思ってたんだが」
「同族が相手じゃ、ちょっとね。放ってはおけないさ」
同時に。
関わろうとする自分を、否定したくもなってしまう。手を差し伸べるということは、彼らを見下していることに繋がるのでは、と。
良心の呵責、と例えてしまえば楽ではあるかもしれない。
でもそんなもの――
「お、二人ともよく来たねえ」
「い、イピネゲイアさん!?」
よ、と手を掲げるのは、紛れもなく第一皇女。
人質とは彼女のこと――なんだろうか? しかし目立った外傷はない。精神的にも落ち着いているようで、逆に彼らの仲間なんじゃないかと錯覚する。
いや、それどころか。
仲間だったらしい。




