歴史の中へ 6
――ふと、クリティアスのことが脳裏を過った。
彼はテストミアの現状をどう思っているんだろう? 聡明な男だ、まったくの無視、なんて判断は起こすまい。
いや。そもそも、狙っていたんじゃないか?
クリティアスは、帝国内でも屈指の権力者だ。オレステスの行動を止めることは容易だったはず。
彼が何の問題も起こさないと思っていた――は、さすがに有り得ないだろう。あって欲しくない。そんな男に負けたなんて、ショックで立ち直れなくなる。
「――兄様、前を見ろ」
「へ?」
純潔狩猟を手に、リオは立ちはだかる無数の敵に向かい合う。
背丈が二メートルを超える巨漢だった。――しかし全員、牛の顔。両手には斧を持ち、殺意に満ちた眼光で二人を睨んでいる。
ミノタウロス。
人と神牛の間に生まれた、半神の結晶生命……!
「行くよ、リオ!」
「任せろ!」
前衛と後衛に分かれ、兄妹の戦端が開けていく。
神の魔術兵器が二つも揃っているだけあり、ミノタウロスは一方的に撃破されていく。もはや蹂躙。振り下ろされる斧は、ナギトを掠めることすらしない。
神殿への影響を鑑みると、雷帝真槍の使用は厳禁だ。が、それでも勢いは止まらない。
「せっ!」
最後の一頭が、ついに断末魔の叫びを上げる。




