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歴史の中へ 5
追い返そうとするナギトだが、彼女はそのまま奥へ行ってしまう。反対されることを見越した行動だった。
仕方ない。彼女には純潔狩猟もあるし、そこまで身の危険はないだろう。神殿内にいる同族を武力で鎮圧する、という選択肢も取りやすくなる。
駆け足で彼女の隣りに並び、あとは歩幅を揃えて中へ。
神殿の中は、人の気配が欠落していた。
普段からいる筈の神官も、巫女もまったく見当らない。メルキュリクの言った人質に含まれているんだろうか? 彼らはヘレネス族だろうし、材料としては悪くない。
警戒しつつ、二人は神殿の奥へと進んでいく。
「……なあ兄様、今さら何だが」
「うん?」
「町がこんな状態で、闘技大会の予選は正確に行えるのか?」
「無理じゃない?」
曲がり曲がりにも参加者でありながら、無責任な口調でナギトは言った。
しかし現実なのは否定しがたい。このまま状況が悪化すれば、参加者の暗殺とかも起こるんじゃなかろうか? 現在確認できる参加者はほぼ知人なので、ご遠慮願いたいところではある。




