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歴史の中へ 3
「えっとさ、その前に事のあらましを聞いていいかな? さっき到着したばっかりで」
「それでしたら、単純なことです。市民の一人が、二耀族の方に差別的な発言を行ったんですよ」
「ああ」
バルバロイ。
二耀族にとっては禁句中の禁句だ。神殿に立て籠っている連中の気持ちも少し分かる。
騒動を納めたければ、まずは謝罪からだろう。が、辺りのヘレネス族に後ろめたさを匂わせる者はいない。反感一色で塗りつぶされている。
「ナギト様には、立て籠っている彼らへの説得をお願いしたい。人質も奪われているんです」
「……って言っても、彼らが怒るのは仕方ないんじゃない? まずは謝罪が先でしょ」
「仰るとおりです。――ですが私たちの言葉では、彼らが聞く耳を持つかどうか。同族であるナギト様が直におもむけば、彼らも少しは落ち着くのではないかと」
「それは後にしようよ、メルキュリク。僕は謝罪が先だ、って言ったんだ」
「っ――」
珍しく焦りに満ちた瞳は、それが無理なことを訴えていた。




