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皇帝の遺言 10

「彼女はまだ若く、あまりにも人間を知らない。君だってそれを知っているから、単身で救出を試みたのだろう?」


「それは――」


 返す言葉が見当らなかった、クリティアスの指摘は事実であり、彼女の危機を知ったナギトが抱いた感情でもある。


「姫にも良い勉強になるだろう。加えて私は、裏切られた人間の表情を見るのが好きでね」


「あくどいですね、言い訳なしに」


「性格でね、どうしようもないんだ。――ともかく、頼んだよ。君だって初恋の女性に死なれたくないだろう? 必然として受け入れたまえ」


「……」


 頷きもせず、ナギトは無言を選んでいた。

 もともと返答に興味はないのか、クリティアスは森の向こうへと消えていく。

 擦れ違いで聞こえる追跡者たちの声。状況はまだまだ、予断を許さないらしい。彼らが原因になった火の手も、着実に勢力を伸ばしている。

 アルクノメの元へ急ごう。

 先のことを考えるのは、安全を確保した後だ。

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