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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
勇者の特権
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給与

 春秋二回の試験を経て、年間に400〜600人の勇者が誕生する。勇者の総数は約5万人であり、年齢の上限はない。7年ごとの免許更新さえこなせば、死ぬまで勇者で居られる。しかし、勇者の平均寿命は47歳と低い。これは冒険に出るというリスクが影響しており、ほとんどの死因が冒険中の事故死である。ちなみに年間死亡者数も平均して500人ほどであるため、それによって翌年の採用者数も連動して増減がある。


 しかし、この高リスクを負ってまでも勇者志望者は後を絶たない。なぜなら、多くの特権を勇者は受けることができるからである。この章では、勇者の特権の幾つかを紹介しよう。


 まず勇者になると国から毎月基本給が与えられる。一年目は月に30万タラバが固定である。大卒社会人の初任給が20万タラバ程度と言われているので、その1,5倍というのは破格である。それに加えて、継続給や賞与が多数ある。継続給は年を追うごとに上昇していき、減ることはない。その上昇額は前年の勇者全体の利益率や社会貢献の具合を考慮し、国会で決められるため、一元には定められていない。しかし、継続給のマイナスや無発生というのはあり得ず、最低月3万タラバは保証されている。

 

 そして各種賞与であるが、これは賞金首や相談案件を解決するごとに支給される臨時ボーナスである。勇者といえどもただモンスターを倒すのみならず、相談案件は多岐にわたる。いわば何でも屋としての扱いもあり、それで生計をたてるものも多い。


 いずれにしろ、国税で賄われた給与であり、一般的な職業と比べると高給取りに思われるが、実はそうではない。勇者というのはあくまで個人事業主である。仲間を雇ったり、道具を整備するのも全て自分の財布から賄わなければいけないため、出費は多額にのぼる。そのため、基本給のみでは生計が成り立たないものが多いという現状がある。なので、個人で大口スポンサーを見つけるか、賞与を目指すためにリスクをかけて冒険に出るものが多い。その中でも手軽に資金を稼ぎ、安く人材雇用にありつけるのが予備校講師業務であり、多くのものはそれに頼っているのだ。


 それだけでなく、派遣勇者の存在も勇者の財布にやはり優しいのだ。派遣以外で仲間を正規雇用する場合は、実力は折り紙つきだが、いろいろと出費もかさむし、基本的にはエージェントを立てて雇用交渉を行うため、さらに金銭がかさむ。なので手軽に使い捨てできる派遣勇者は派遣会社に手数料を収めれば一律の料金で雇用契約が可能になるため、若手の資金不足勇者にとっては重宝する存在となるのだ。


 ちなみに給与のみを得て、全く活動を行わない沈没勇者も数多く存在している。最近ではそういった者が増加し、国税で賄われているという観点からも、職業勇者批判の槍玉に挙げられることも多く、現状制度では対策を講じられないという現状もあるため、職業勇者界の課題として重くのしかかっているのだ。噂によると某諸島は沈没勇者の楽園として繁栄を極めており、そこの入島するのを目標とする勇者志願者も少なくないということである。

 

 しかし、職業勇者という職業は家族や地域のバックアップを受けてこそ、目指せる職業であり、沈没勇者の家族の多くは批判されるという事実もあるのだ。このように莫大な補助を必要とする環境なしでは突破できない難関試験を設けても、落伍者が生まれるのだから、人間とは面白いものである。

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