専属二番手勇者
勇者は新人の頃は二番手として活動し、ある程度のレベルと資金が貯まったら独立するという流れが一般的である。前述したように、一度、独立を果たせば、二番手勇者として再び活動することは基本的には無い。独立勇者とはある程度の覚悟を持たなければ成り立たない存在なのである。
しかし、何かの縁で二番手として所属していたパーティが冒険の大成功を収めることもある。そのようなパーティは次回の冒険時も同じ面々で集まることが多いため、新人の適齢期を超えても、常にその勇者のパーティの二番手として専属で所属するものも多い。自己資金を必要としないし、所属パーティも莫大な資金を抱えていることが多いため、専属二番手勇者は非常に運がいい存在と言えるだろう。
専属二番手をつけるパーティの存在はかなり少なく、一般的なパーティは冒険毎に二番手を変更することが常である。というより、基本的に勇者は独立志向が強く、二番手というのはある種、修行期間で通過点に過ぎないと捉えるものが多いため、適齢期を過ぎると、二番手雇用に応じないものが多い。したがって、専属二番手がいるパーティはもう独立する気も起きないような高待遇で迎えられていると考えられている。しかし、冒険というのは一旦成功したからといって、次も成功するとは限らない。パーティが冒険に失敗し、主催勇者が死亡したりすると、すぐに解散となってしまう。なので、運がいい存在と言っても、引退するまでそのような環境が続くものは稀である。
二番手勇者はこのように毎回同じパーティに所属するというケースはほとんどないが、魔法使いと格闘家は、相性が合う限り、同じパーティに毎回雇用されるケースが多い。これは、主催勇者は気心知れた同じメンツを集めた方が楽に冒険が行えるというメリットがあるからである。また、雇われる彼女たちも、自身で独立して冒険を行うのは無理なので、そのような繋がりに頼ることが多いのだ。
しかし、魔法使いも格闘家も何年も冒険を続けていると必然的に自身の雇用待遇の向上を求めてくる。魔法使いはエージェントを通した自己交渉であるが、格闘家は著名なものとなると、軍部が同行の費用の値上げを指定してきて、さらには、勇者側の負担割合も要求するようになるのだ。そのため、金満勇者以外は資金面で泣く泣くそれまで一緒に活動してきた魔法使いや格闘家と離れ離れになることが多い。勇者と言えども、ビジネスの世界であり、その人材の流動性はある程度活発であると言える。
ちなみに、二番手勇者も待遇向上を段々と求めることが多く、同様に資金面の兼ね合いで解散するというケースもある。自己負担なしで手軽にそこそこの金銭を貰うか、自己責任で独立し、リターンを全て頂くかはその勇者次第であるといえよう。また、二番手は戦闘においても、補助的な役割を担うことが多く、満足に自分の思い描く戦闘を行えないというデメリットもある。雇われている側なので当然なのだが、やはりプライドが高い二番手勇者はそれに我慢できず、さっさと独立を目指すものが多いのだ。したがって、専属で二番手勇者を行なっているものは、プライドを捨て、全体の動きに合わせて物事を行える、ある意味、勇者らしからぬ大人な存在であると言えるだろう。




