野良勇者
勇者以外にも冒険者というのは存在する。その目的は様々であり、未知なる土地を追い求めるだとか、各地の人々と触れ合い、人間的な向上を旅を通して目指すなど物的な欲求以外であることが多い。しかし、中には勇者のように討伐を行ったり、財宝発掘を目指すものたちも存在する。それら無資格で勇者業務を行うものの総称を「野良勇者」という。無資格であるため、もちろん、国家の保護は受けることができない。認識としては、危険を顧みず危険地帯に向かう一般冒険者というものである。
したがって、モンスター討伐を行っても、国営の経験値交換所では勇者免許提示ができないため、受け付けてもらえないし、人々からの依頼案件も、大々的に掲示されているのは、勇者区分でないと受けれないし、報酬が発生しないため、おおっぴらな仕事は不可能である。また、それに伴う、技使用や仲間雇用も困難を極めるため、相当な実力者でなければ成り立たない稼業であるといえよう。
野良勇者は勇者を目指していたが挫折したものや、賎民身分のため職業勇者受験資格を持たないものが多いとされている。前者は実力不足またはコネ不足なため、勇者になれず、それでも諦めきれずしょうがなく勇者業務を続けるものが多く、後者は差別身分にもかかわらず、自由を追い求め、自分の力で自立を目指すものが多数である。特に後者は実力者が多いと考えられており、野良勇者は被差別層の人々が大半である。勿論、資金も不足するため職業魔法使いを雇用することもできず、格闘家の同行もない。勝手に自己責任で旅をしているので、非常に困難を極めるのだ。
経験値交換所では剥ぎ取り素材を経験値や金銭に変えることはできないが、元々、剥ぎ取り素材自体に工業製品としての価値がある。なので、一般的な流通以外の裏のルートにおいて買取を行う業者が存在するのだ。しかし、そのレートは勇者が扱う公式レートより分が悪く、足元を見られることが多い。そして、魔石発掘を行った場合も、ややレートが悪く買い取られることが多い。しかし、魔石を必要とする企業などは、安く魔石を仕入れることが可能になるため、ある程度、需要は存在している。といっても、魔石発掘までの道のりというのが野良勇者にはハードルが高く、その採掘率は低いとされている。
また、都市間の移動において都市の入り口では検問が行われるのが常であり、身分提示が求められることがある。街に入りたい商人などの一般冒険者は身分保障ハンコに基づく通行証を所有し、職業勇者は各種免許提出と同行軍人の存在が通行の証となっている。しかし、野良勇者はそのようなものを持たないため、街に入ることができないことが多い。したがって、冒険といっても大都市などには近づくことさえできず、裏のルートのみで生きていかなければならないのだ。
ちなみに、都市によっては検問の軍人に賄賂を渡せば入ることもできる。それだけでなく、野良勇者も馬鹿正直に賄賂を渡して正面突破するのではなく、商人などに身分偽装することが多い。自由に冒険を行うことができるが、自由に各種補償や施設を利用することができないという欠点があり、リスクの高い存在なのである。




