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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
勇者にまつわるエトセトラ
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勇者のオフシーズン

 勇者は一年中、活動し続けるわけではない。活動期は基本的に三月から十一月とされ、寒気が訪れる12月から2月まではオフシーズンとされる。オフシーズンは寒さのため、モンスターの活動も比較的、穏やかとなり討伐の依頼なども減少するという事実もあり、勇者側もわざわざそのような過酷な環境下で冒険を行うのはリスクが高すぎるので、皆活動を行わないのだ。しかし、冬季のみ自生する植物や活動を行うモンスターの存在もあるため、その時期に活動するものも多少は存在する。また、魔石などの財宝発掘はこの時期に行えば、外敵も少ないし、競争相手も存在しない。したがって、オフシーズンに先行して、冒険を行うものもいるのだ。しかし、厳しい環境における探索は困難を極め、その成功率は低いと言われいる。おまけに冬季はそういう要因からスポンサーが集まりづらく、リスクを負ってまで冒険を行う必要はないと考えるものが多い。


 また、シーズン中といっても、三月から十一月までずっと冒険をし続けているわけではない。勇者は平均的に一年にのべ3ヶ月程度冒険していると考えられており、それ以外は冒険のための準備の時間となっているのだ。仲間や資金を調達するのには計画した冒険の長さと同程度かかると考えられている。したがって、3ヶ月の工程を計画するならば、出発の3ヶ月前から、色々と手配を行わないといけない。もし、半年程度の長期にわたる冒険を志すならば、シーズンオフも手配に追われ、1年間以上をかけた壮大なプロジェクトになることが多いのである。


 ちなみに、勇者の一般的なオフの過ごし方は、まず、冒険から帰ってきたものは検査入院が第一である。ここで骨折など各種治療を行い、ゆっくりと過ごすものが多い。また、企業スポンサーがついているものは、それの活動に追われ、講演会やイベント参加、はたまたメディア出演までこなすものが多い。したがって、十分な休息と治療を行えないことも多く、その点で批判も少なからず上がっている。しかし、企業スポンサー付きの勇者は一部に限られ、大半は家や南の温暖な地域でゆっくりとバカンスを楽しむことが多い。勇者は勤労機会や収入は不安定であるものの、自分の好きな時に大型の休暇がとることができるため、そこはある意味、特権である。


 また、財政面で不安を抱えるものは、予備校講師として教鞭を振るうこともある。予備校講師は腕にもよるが、著名な上位層は冒険稼業の収入を超えるものも存在し、専業になるほど儲かるとされている。実際、志願者に対して、職業勇者の割合は少ないため、そのような講師業は各地で需要があり、金銭を稼ぐ手段として、ポピュラーな職業である。


 勇者以外のオフの過ごし方も紹介しよう。魔法使いは資格免許は必要なものの、国家から一律に支払われる基本給というのは存在しない。そのため、冒険に出ない時は何かしらの仕事についている兼業が一般的である。もっとも、冒険業だけでも食べていけるという風潮があるのだが、魔法が使えるという能力を生かし、様々な職種に就くことが多い。最も多いのが、病院勤務であり、補助魔法を患者に使うことで、精神的なケアを施すというものである。補助魔法はⅡ種免許者でも使用可能になるため、冒険に必須とされるⅠ種免許を持たないものは、病院勤務が専業になるものも存在する。また、それ以外にも、企業における魔力製品開発に携わったり、魔法科学省での研究活動など多岐にわたる分野で活躍することが多い。ちなみに、最近では女性高所得者向けに、魔法セラピーのジムを開くものが多く、美容・健康分野での魔法産業の拡大が著しくなってきている。


 そして、魔法使いオンリーの風俗も存在すると言われており、魔法を利用した数々の性技は我々男性を虜にしてやまないと言われている。しかし、実態は我々庶民には把握できておらず、一部貴族やスポンサー企業の重役向け接待に利用されているという噂もある。


 また、格闘家は軍隊所属なので勇者のオフシーズンは平常勤務に就くことが多い。しかし、冒険が終わると、特別休暇がもらえるため、基本的には休んでいるものが多数存在する。休暇中は体を休めたり、自己の鍛錬に勤しむことが多く、休みのたびに羽を伸ばす勇者と違い、幾分ストイックな姿が見られる。これは、休みと言っても、軍部の命令があればすぐさま出動する必要あるため、なかなか気が抜けないという要因があるのだ。


 ちなみに、オフシーズンのダンジョン街は需要が低いため、休村状態になることが多く、人もまばらである。また、来シーズンに向けたモンスターの供給調整や財宝保護を目的として、ダンジョンへの立ち入りを禁ずる地域も存在する。我々を悩ますはずのモンスターは、お金を生み出す装置としてある種、保護されているという矛盾を抱えているのだ。

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