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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
勇者にまつわるエトセトラ
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沈没勇者とドラッグ

 この章では勇者社会にまつわる文化や業界での定説を幾つか紹介することとする。職業勇者制度が100年も続くと特徴的な風習が幾つか生まれるのだ。我々平民には見ることができない業界の実態に迫り、勇者への理解を深めることができたら幸いである。


 まずは沈没勇者の存在である。これは「給与」の章で述べた通り、国家から支払われる基本給のみを受け取り、実質的な活動を行わないものたちの総称である。いわば、特権としての給与が産み出した職業勇者の負の側面である。このような勇者は国内外問わず、物価の安い地域に集まって暮らしており、ある種の共同生活を送り、目的の持たない人生を送ることが多い。そのようなものたちが集まる場所は「沈没地」と呼ばれ、俗世に疲れた人々を呼び寄せている。


 沈没地の条件は、「物価が安い」、「治安が安定している」という点を挙げることができる。物価が安いと基本給のみで長期滞在が可能となり、年中、働く必要がない。また、モンスターに対する治安安定は絶対であり、戦闘を避ける環境に身を置くことが多い。もっとも、治安安定した地域は軍部の警察としての影響力が低いため、ある種のイリーガルな行為が可能になるという実態がある。


 ちなみに我が国の沈没地として著名なのは、国土南部の海に存在する群島の一部である。群島の中でもその島は、一部モンスターや地元島民しかおらず、リゾートとしてや冒険する場所としての価値は何もなかったが、某勇者たちにより数回に分け入植が行われ、見事条件に合致したため、国内有数の沈没地として君臨している。しかし、なぜ彼らは数多ある沈没候補地から、そのような辺鄙な場所を選んだのだろうか。実は、彼らを吸い寄せてならない魅力として、麻薬草の自生というのがあったのだ。


 我が国では多幸感を必要以上にもたらす薬草やドラッグの存在は一般的には法で禁じられている。かつては、息抜き、趣向品として一部の人々には愛されていたが、一度、軍部におけるドラッグの蔓延という事件ががあったため、それ以来、国家をあげて厳しく取り締まることになったのだ。したがって、そのような事件があってからは我々一般庶民にはドラッグの入手は困難になったと言われている。しかし、職業勇者身分にあるものは、ある種、合法ドラッグとしての補助アイテムの使用が認められている。それにより、ドラッグや麻薬草との関心や距離が近くなり、勇者の中にはそれらに溺れるものが多いとされているのだ。中には、それ目的で勇者を目指すものも存在し、特権という制度の歪さを表すエピソードとなっている。


 そんな中、沈没勇者たちは多幸感をもたらす薬草が多く自生する場所を某島に発見した。温暖な気候でのみ育つ麻薬草の王道・「チャゲ」や、塩分濃度の高い湖が干上がった時に、その塩の上に咲くとされる珍しい麻薬花・「ソルトティーチャー」などの自生が確認されている。それだけでなく、後発的にも、スライムは基本的には両生具有で自己分裂を繰り返すが、稀に男性機能のない雌スライムが存在し、そのスライムから取れる「スライム乳」、かつて軍部で一世を風靡したドラッグ・通称「マーシー」など、ドラッグ界の花形とも言えるものがすべて容易に手に入るのだ。


 勿論、警察権を持つ軍部や国家もそれらの存在を黙認しているわけではない。数年に一回、現地への立ち入り調査があり、幾人か逮捕者が出ているのが現状である。といっても、その時期や回数などパターンはある程度、決まっているため、多くのものはそのことを把握しており、知識の無いものがある種、人柱として取り締まられているのだ。したがって、国家も姿勢では撲滅を願っているが、ある意味、特別な地域として、イリーガルな行いがその場所に留まるよう根本的な壊滅をもたらそうとはしていないという実態がある。このような地を作ることは、結果的に治安の安定をもたらすのである。

ここまで読み進めてくれた読者の皆さんへ。

幾つか疑問点や矛盾点があればどしどし応募してください。

アレルギノフ先生がなんでもお答えし、必要に応じて加筆修正を行ってくれると思います。

(岩海苔書房編集 バイアグラ・リョーコ・マドモアゼル)

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