受験者現状
勇者試験の概要がわかったところで、受験者の現状を確認してみよう。18歳以上の男女ならば何歳でも受けることができるが、基本的に受験生は28歳以下が多い。国家も多重浪人勇者の存在を快く思っておらず、かつ30を超え勇者志望者というのは世間での風当たりも厳しいものとなっていく。
そして、男女比であるが男・九割八分、女・二分というのが現状である。武力、知力、コネクションを必要とし、男社会である勇者界は女性の存在はあまり歓迎されていない。それでもかつての時代に比べ、女性勇者の存在は近年増加傾向にあり、ある種女性の社会進出を反映したものであると考えられている。
もっとも、女性は魔法使いとしての適正があるため、そちらを目指すことが多く、その制度の方が確立されており、ある程度の住み分けができているのである。ちなみに、魔法使い志望者にも近年、男性が増加傾向にある。そのことについては後述する。
18歳になるまでに勇者を志すものの多くは、基礎予備校や私塾に通う。これは義務教育である国民学校と並行して行うものであり、ストレートでの免許取得は困難を極める。また、地方の農村部では国民学校に通わず、勇者のみ目指して幼少から奮闘するという家庭が続出し、一種の社会問題となっており、勇者制度の確立は就学率の低さという問題を誘発しているという声もある。
基本的には、国民学校卒業後も勇者を志すならば上位予備校に通うのが一般的である。四年制度のものが多く、四年間をかけて勇者の基礎をみっちり学ぶことができる。勇者予備校というのは社会としてもある種のステータスとなっており、例え勇者になれなかったとしても就職には有利となるため、そういう目的で通うものも近年では増えてきている。
勇者予備校は基本的には私立のものが多く、そこで教える講師の多くは免許を取得した職業勇者である。現状では勇者の冒険稼業だけでは生活に困るものが多く、ここである程度稼ぎを得てから、冒険の準備を行うというものが多い。後進を育てるものも勇者の義務の一つであり、半年間、講師として金銭を稼ぎ、もう半年は冒険に出るというサイクルが職業勇者の一般的な暮らしである。
勿論、私立校だけでなく国立の勇者予備校も存在する。表向きには勇者養成機関ではなく、軍幹部を育成する機関であるが、これは軍内部の事情によるものであるため詳細は後述させていただく。
国立予備校は幼年期からの一環教育を行っており、エリートを育成するのが目的である。先述したように軍の幹部養成が表向きであるが、近年では実質的に勇者養成の目的で入学することが多い。生徒の多くは富裕層が多く、職業勇者の子供や大手企業の子供などさながらエリート揃いであり、多くのコネクションを持ち、勇者界のみならず、卒業後は多岐に渡った分野で活躍するものが多い。
現在、登録されている勇者の数は五万人あまりだとされている。これは我が国の人口1200万からすると0.4%という少なさである。そんな中、勇者志望者数は年間30万人いると考えられている。これは我が国の0〜30歳の人口が400万人であり、勇者適齢年齢にあるもの(18〜28歳)の人口は210万人いるとされ、その中での男子は約103万と考えられてているため、その年代の三人に一人が勇者を目指していると考えられている。
年間採用総数は春秋通して600〜400人に限定されており、その倍率は約600倍となっている。最も記念受験も多く、勇者試験というのは男としての腕ためし的な意味合いが強く、他業種への就職にもある程度は有効な指標とされるため、本気の受験者層としてはその上位5万人に絞られるであろう。それでも倍率100倍なのだから、いかに勇者が難関で名誉にあふれた職業であるかがわかるだろう。