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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
この世界について
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モンスター・魔王の存在

 ここまで読み進めてくれた読者諸兄なら職業勇者を中心とする勇者産業については、おおよそ理解していただけただろう。しかし、同時に討伐対象であるモンスターや魔王について幾つかの疑問を抱いたことであろう。彼らの目的は何なのか。そしてその存在意義や討伐することへの恩恵などの不明瞭な点が浮かんだと思う。この章では、そのような世界の謎や、この国の構造について解説を行うこととする。これにより、ぼやけた世界の輪郭をくっきりとさせ、更なる職業勇者への理解を深めるための補助となれば幸いである。


 まず、モンスターと呼ばれる存在についてである。モンスターの発生は人類誕生以前と言われているが、その有害性を持つに至ったのは、人類が魔法を認識し、体系化した頃からと言われている。


 魔法を使用すると、廃残留魔力というものが発生する。これは魔法使用時に排出されるカスのようなものであり、可視性もなく、その採取も、現時点の技術力では至っていない。魔法使用以外に、魔石からエネルギーを取り出す際にも発生し、魔法産業社会に依存する我々にはその廃残留魔力の排出は避けては通れないものとなっている。廃残留魔力は大気中を漂い、やがて、法則性はわかっていないが一定の場所に堆積し、数十年かけて高濃度のものになっていくとされている。そして、その高濃度の廃残留魔力の影響でそこに住むモンスターたちは凶暴性を引き出され、人間を襲うようになったと現時点では考えられているのだ。そのように、高濃度の廃残留魔力が堆積し、有害なモンスターを発生させるような場所のことをダンジョンと呼んでいる。また、高濃度の廃残留魔力は、物質を変容させ魔石を生成する要因ともなっており、ダンジョンにはモンスター発生と同時に、金銭的価値の高い魔石が眠っている可能性が高い。


 従って、人類の過剰な魔力使用が、大量の廃残留魔力の排出を行い、それにより、モンスターの凶悪化、更なる魔石の発掘につながっていると考えられている。その討伐や発掘業務を行うのが勇者の役割の一つであるのだ。ちなみに、魔石の生成は人工で未だ再現できておらず、いずれも自然現象を基とした天然物しか存在しない。また、モンスターの剥ぎ取り素材は廃残留魔力由来であるため、魔石的な性質を持つことが多く、高値で取引されるのである。


 そして、魔王という存在であるが、人間や、それに準ずる知能指数の高いモンスターが廃残留魔力により変容したことにより発生すると考えられている。莫大な魔力を持ち、統率に至る知能を持つものが便宜上、我々の敵を統べる者として「魔王」と呼ばれているのだ。そして、モンスターと同様に、人間に対する有害性を持つと考えられ、その強力な魔力により、凶暴性を増したモンスターをある程度、統率でき、人類へ対する有害性を増長している原因と考えられ、諸悪の根源とされているのだ。


 つまり、そのような人間に危害を加えてくる、「廃残留魔力の統率者」という存在が、「魔王」と呼ばれ、我々の脅威として君臨しているのだ。勿論、特定の魔王を倒せば、統率が崩れ、ある程度の平和は訪れる。しかし、その間に再び廃残留魔力の堆積があれば、第二、第三の次なる魔王が誕生すると言われている。ある種、自然からの人類に対する警告的な側面もあり、現象としての研究は未だ発展途上である。


 勿論、我々が魔法の使用を抑えれば、廃残留魔力は発生せず、魔王やモンスターの存在もいなくなり、平和な世の中が訪れるであろう。皆、そのような事は自覚済みである。しかし、現代社会は魔法によって急速に発達を遂げているため、もう一個人の意思では止める事すらできないのである。魔法文明を中心としつつ、勇者産業も肥大化を魅せているため、それにより恩恵を受けている人間は多数存在すると考えられている。したがって、自分の首を絞めてまで、平和を願い、旧文明に戻る事を願うものなど誰一人といないのである。


 また、国家も魔王やモンスターという共通敵を作る事により、国として統率が取りやすくなると考えているため、そのような魔法使用の抑制などは推奨していない。従って、いわば必要悪として、モンスター達はこの世に存在し続けると考えられている。人類の発展が作り出した膿により、危険を孕みながらも更なる発展を目指すとは、我々は罪深き生き物であると言えるだろう。


 読者の中にはこんな魔法社会ならば魔法こそが重要であり、物理攻撃に頼る勇者の有用性は低いのでは、と考えるものも多数いることであろう。確かに魔法は多岐にわたり効果を持ち、攻撃手段としても非常に優れていると考えられている。しかし、モンスターに対する魔法使用はあくまで、戦闘不能までしか効果を得ず、根本的な死に至らすことは不可能となっているのだ。そのため、モンスターを殺すためには、物理的な攻撃を用いらなければならず、その中でも一番の強さを誇るのが、剣術を用いる勇者であると言われている。


 勿論、勇者のみでのモンスター討伐は困難を極め、魔法使いの補助が必要不可欠であるため、両者ともに討伐には必要な特性を持っている。従って、いつもトドメを刺すのは勇者の役割であり、その点で有用性を持ちながら、手柄を挙げたとして英雄視されるのである。

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