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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
冒険の流れ
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船舶・飛空挺

 独立後、実績を重ね、更なる野望を追い求めるようになると必然的に冒険は大規模なものとなる。そうなると、徒歩での移動以外に、海を越え、別の大陸を目指すことも多いだろう。そのような時の移動手段として、船舶や飛空挺の存在がある。


 これらの乗り物に共通する動力として魔石を挙げることができる。魔石とは魔力を強く含んだ物質の総称であり、我々の文明を支えるエネルギー資源として多岐にわたって利用されることが多い。魔石から放たれる魔力を圧縮し、それを燃焼することにより運動エネルギーとして変換しているのが魔力エンジンの一般的な仕組みである。また、そのような莫大な運動エネルギーを引き出す魔石というのは巨大な岩石のような物質が基本である。


 ちなみに、魔石は砕くとその効力を失ってしまうため、魔力により陸上を車輪で移動する馬車に変わる比較的小型な乗り物などの実用には未だ至っていない。もっとも、馬車程度の乗り物を魔力で動かそうと思うと、その馬車と同程度の重量の魔石を用いらないといけないと考えられている。従って、その危険性や効率化の悪さから未だ実用には至っておらず、今後は、魔石分割を行っても魔力を確保する技術や高濃度の魔力を持つ魔石を小型生成する技術の発達がそのような乗り物の実現の鍵であると言われている。


 魔石は馬車程度のものを満足に動かそうとする時、馬車程度の重量を必要とするが、船舶や飛空挺など、巨大なものを動かす時には、同程度の重さではなく、比較的、軽くても動かすことができる。すなわち、重いものを動かそうとすればするほど、その魔石の大きさからすると、ある程度効率化していくのだ。この性質は未だ研究段階であり、根本的な原理はわかっていない。しかし、飛空挺以上の物体を動かすに価するような巨大魔石は未だ発見されておらず、巨大と言ってもその程度にとどまるのが現状である。


 動力の解説を終えたところで、船舶や飛空挺を入手するにはどうすればいいのだろうか。まず、船舶は基本的には貿易船として利用されることが多い。一般的な冒険者は海を渡る時にそのような船に同乗するのが基本であり、貿易船もその存在を歓迎することが多い。これは冒険者を乗せたという実績は将来的に冒険が成功した際に、自慢となるため、基本的には無料で利用させてくれるのだ。しかし、外的襲来時における戦闘義務が発生するなど、気を抜けないことが多い。また、無料の条件として、船内での講演会を行うというのが慣例であり、ここでトークスキルを磨き、オフは各メディアや講演活動の分野で活躍するものも多いのだ。勿論、無料といってもある程度の心づけを払うのが勇者の義務である。


 そのような船舶を個人所有するのは相当の財力が必要となると言われている。冒険業務以外でも利用しないと採算が取れないため、基本的には船舶会社をスポンサーに持つものか、個人で貿易船業に従事するのが常である。一説では高所得者や貴族向けに、10億タラバ程度から個人向け船舶を販売するルートが存在するらしく、維持費も合わせると凄まじい出費になるため、ある種、成功者しか手に入れることはできないであろう。


 また、飛空挺も同様であり、これを持つことこそが勇者の最大の栄誉であると考えるものが多い。船舶に比べると移動の高速化に加え、外敵の襲来可能性の低さなどがメリットに挙げられる。こちらも物資運搬目的や、一部のセレブリティに向けた観光艇という業務形態が一般的であり、その入手ハードルは船舶の比ではない。また、離陸や着陸において莫大な手間もかかるため、気軽に利用できないのが玉に瑕である。ちなみに、某飛空艇は開発に500億タラバ程度費やしたとも言われており、国家や大企業レベルでないとその所有には至らないというのが実情である。


 魔力認知者の数が限られることや、魔石の希少性からしてもこれらは我々一般市民には到底利用できる代物ではない。あくまで勇者という社会的意義のある職業だからこそ、金銭的要因以外にも利用するに至ることができることを肝に銘じてほしい。

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