格闘家②
軍部においても、要人警護は花形とされており、ステレオタイプな軍人イメージを形成するに至っている。その要因として、勇者業務同行以外にもう一つ挙げることができる。防衛省主催の公営ギャンブル格闘技興行「レッキング・マニア」の存在である。十角形のリングが特徴的で、軍人同士が一対一で戦う総合格闘技イベントなのだ。各種格闘技経験者が集まるということでそのファイトスタイルは多岐に渡り、シンプルな殴り合いからテクニック重視の寝技など様々な戦い方を持つものがあいまみれるのが人気の理由である。もちろん、我々はこれにお金を賭けることができ、その熱狂ぶりは格闘技興行としての最高峰を誇っている。そして、著名な冒険者に同行するのはここで活躍するものが多く、スポンサーを引っ張って来やすかったり、注目度が高くなるなど恩恵は多い。
公営競技という形をとっているため、その収益は防衛省費用として利用されており、広報的な役割もあることから、非常に重要視されているのだ。軍部を目指す若者はこのリングに上がることを目標にすることが多い。また、一般からの参加は原則として認められていないため、腕っ節に自信のある若者は軍隊を志すことが増えてきており、軍人気の上昇に一役買っている。
冒険業に従事する五万人のうち、半数あまりがこの競技に参加経験があり、我が国の格闘技人気を後押しするものとなっている。魔法の発達や剣を用いて戦う勇者の存在をもってしても、純粋な拳と拳のぶつかり合いというのは人々を熱狂してやまず、その競技人口の多さもあって、ほぼ毎日、全国各地でなんらかの興行が行われているという実態がある。勿論、この軍部の暴力至上主義的な風潮に異を唱えるものも多く、各地会場での抗議活動というのはもはや風物詩と化している。
格闘家という存在は冒険においては武器を使用する勇者と魔法を使用する魔法使いに幾分か劣ると考えられがちであるが、パーティーにおける格闘家の有無が生存率を大きく左右するという行動冒険学の調査で上がっており、重宝されているのだ。もっとも、魔法や武器に頼らないため、技や魔法使用時における精神的困憊に陥る必要がなく、精神的支柱としてうまく作用しやすいという考察もある。時には仲間を守る壁としての役割もあり、パーティーの土台として縁の下を支えているのだ。
ちなみに、格闘家にはホモセクシャルとバイセクシャルの比率が多いと考えられており、勇者はパーティー編成の際に、マギボーイと重複しないように徹底するのが基本である。これを怠ると寝不足からの全滅という結果を招いてしまうため、注意する必要が有る。しかし、性的趣向によって雇用契約を破棄するのは性差別だという声も挙がっており、本人同士の自粛という形が最近では要請されつつある。




