格闘家①
次に冒険に欠かせないのが格闘家の存在である。欠かせないというより、正確には欠かしてはいけないという表現が正しい。格闘家というのは俗称であって、正確には軍部から派遣されるボディーガードの事を言う。冒険者の安全を確保する用心棒的な役割以外に、勇者の不正行為を監視する役割もあり、少し息苦しい存在でもある。しかし、現状では不正監視というのは過去の制度の建前であり、戦力として十分作用しているため、現代まで存続してきているのである。
我が軍は防衛省の管轄であり、敵国に対する侵略や防衛を遂行する権限を持つ。また、警察権も掌握しており、治安維持としての役割もある。基本的に人外による外部からの脅威の討伐、侵略は勇者によって行われる事が多く、軍部は主に国内の治安維持に努めるのが特徴的である。なので、軍隊という名称がついているものの、警察としての役割の方が大きいのだ。
勇者が冒険に出る際には必ず軍人が一人同行する義務がある。これは元々、職業勇者制度が成立した当初、軍部の影響力が強かったことが要因に挙げられる。職業勇者成立によって、軍部の存在意義が薄れるのを危惧した防衛省関係者により、「探索者の護衛・監督」が義務づけられ、それを職業勇者成立の条件としたのだ。それにより、冒険を監視する役割であったが、戦闘参加は必然であり、その中でも有用な戦力と認められたため、現在でも格闘家という形で残っているのである。したがって、現代でも格闘家が冒険に同行し続けるのは、広報的な意味合いが強く、軍部の存在をアピールするのが目的であると考えられている。
それでは、格闘家のなり方を詳しく解説していこう。まず、防衛省管轄の軍部学校に入学し、無事卒業できれば晴れて軍人として世に出る事ができる。国民学校卒業後の18歳から入学でき、一年間、軍人としての基礎を学ぶのだ。その中でも主に警備や要人警護の分野に進むことを選んだものが、冒険に派遣されるとされている。要人警護には各種格闘技経験が必須であり、腕っ節に自信をあるものはこの分野に進むことが多いのだ。
我が軍に所属する軍人は十五万人あまり存在するとされており、人口比率的には比較的多いと調査結果が挙がっている。これは前述したように侵略・防衛以外にも、警察権も掌握しているためであり、我が国の治安の若干の不安定さを証明するものとなっている。この中でも冒険業に同行するものは三分の一の五万人あまりいるとされ、勇者の人数と連動していくと考えられている。冒険業に従事するものの中でも比較的、長年に渡り活躍する事が多く、年長者として冒険の精神的な柱ともなっている。
また、軍部学校とは別に軍幹部を育成する国立の幼年期からの一環教育を行う機関が存在する。幹部校は卒業と同時にキャリア組として、軍の中枢での活動を行うことができるが、現状、軍部学校からのたたき上げ組が実権を握っているため、あまり機能していない。これは、幹部育成という制度が近年発足したことに起因しており、実践経験のないものが軍を統率するのはいかがなものかという意見が多発したからである。そのため、実態は名称とは違って、軍以外の各種にわたるエリート養成の場となっており、その一分野として、優秀な職業勇者はここから排出されることが多いのである。




