魔法使い②
さて、もう一度、魔法の原理についておさらいしてみよう。魔法とは万物に秘められた未知なる力の総称であり、我々人間にも根源的に備わっていると考えられている。しかし、多くのものは魔力を認識できず、それを効率的に取り出すことができないのだ。魔法は脳科学分野からの発展であり、未だに解明されていない部分も多い。しかし、オカルトや超能力と考えられていた魔法が認知されたことにより、広く利用され、今では魔法無しの生活は考えられないものとなっているのだ。魔法科学省の名前の通り、科学の一種であり、様々な技術応用が認められる。特に最近では通信分野における実用が現実的になっており、魔力利用により、遠隔地同士で情報の転送が行われるなど、さらなる情報伝達の高速化が認められる。
98%の魔法使いが女性と言われているが残りの2%は男性である。男性で魔力があるものは本当に稀であり、その因果関係はあまり明らかになっていない。しかし、ある調査では男性魔法使いのほとんどがトランスジェンダーであり、女装していたり、性的に男性を好むという結果が出ている。これは、脳のつくりが根本的に女性に似ているということからの派生の可能性が高いと考えられている。ちなみに、魔力認識する前からトランスジェンダーの者と、認識後に女性だらけの魔法科学院でその性質に目覚める者の二種類いると考えられている。しかし、後天的なケースは元々、潜在的にそういう趣向があったと自覚する者が多い。
男性魔法使いは「マギボーイ」(magic boyの意)という俗称がつけられており、広く認知されている。女性中心となる魔法使いはどうしても攻撃魔法における攻撃力やその連続性は十分でなく、攻撃の分野における戦闘貢献度では男性である勇者に劣ると考えられている。しかし、男性の肉体を持ちながら、女性特有の魔法を使用できるマギボーイの存在は大きく、その実力は折り紙つきであり、魔法界では重宝されるべき存在なのである。ちなみに、魔法使いの家庭では男の子が生まれた場合、願かけで女性的な格好をさせる場合が多い。このように、マギボーイとは魔法能力の向上において必要不可欠な存在であり、わが国での性的マイノリティの発言力や扱いはかなり良いものとなっている。しかし、マギボーイの多くは男性を好むため、どうしても後継者が存在せず、「一代のみの才能」として儚いものとされている。
魔法使いの職業病として慢性的な偏頭痛が挙げられる。魔力使用というのは脳の負荷が大きく、多くのものは偏頭痛と一生付き合っていかなければならない。それに派生して、若年性アルツハイマーや若年性認知症の発症割合も高いというデータが出ており、平均引退年齢も36歳(結婚や出産を契機とするものも含む)と早いものとなっている。「魔法使いは一生に取り出せる魔力の量が決まっており、それを上回ると脳が壊れる」という言い伝えなどもあり、多くの者は酷使的に魔法を用いようとはしない。
また、職業魔法使いには派遣制度は存在せず、実践経験不足ではないかという意見があるが、魔法科学院、付属院におけるカリキュラムの中で、実践学習が絶対となっているため、特に問題はない。学校の指導方針にもよるが、最低3ヶ月の現地実習が必要不可欠となっているため、理論学習のみで経験が足りないという実例はあまり見られないのだ。
もっとも、若年層からの現場経験が多いことからも、若手勇者と組むときはある程度、指導できる立場にもあり、補助という役割もながらも中心的に先導し、立場が逆転している魔法使いも多い。ちなみに冒険者界隈では年齢よりも、現場経験年数が重要視され上下関係を決定する指標となっているため、同年代でも、勇者は比較的早くから実践経験を行う魔法使いに敬語を使うケースが多いとされている。




