技・魔法のメカニズム
技についてもう少し詳しく解説してみよう。前述した通り技とは気力と体力を著しく消耗するものである。剣を用いて衝撃波を起こしたり、広範囲に向けての攻撃などが可能となるのだ。その技を低負荷で行うことを可能にしたのが、魔法制御指輪であり、技習得の敷居は一気に下がったのである。
職業勇者になれる実力さえあれば、どんな上級技も指輪なしで発揮できると考えられている。しかし、その負荷は人体のポテンシャルを超える可能性もあり、嘔吐や意識低下、最悪の場合は死に至る可能性まである。そのため、低負荷かつ安全に技を発動する効果のある魔法制御指輪の存在が必要不可欠なのだ。
では魔法とは一体どのようなものなのか。まず、ほとんどの人間には火を放ったり、他者を回復させる能力は根源的に備わっていると考えられている。わかりやすく言えば、人間の脳は2割程度しか普段は活用できておらず、残りの8割はそういった類の力だが、一般人は発揮するに至らない。その能力こそが「魔法」であると考えられている。したがって、魔法使いというのは人間の秘められた力を意図的に運用することができ、なおかつ、それを効率的に取り出せるもののことを指すのだ。いわゆる、潜在的な力=魔力とされ、それを用いるものを「魔法使い」という。
もちろん、人間以外にも万物にはそういう秘められた魔法というのは宿っており、魔力として認識されている。特に魔力の放出が確認されやすいものは「魔石」という名称がつき、広く工業的に利用されている。魔力の低いものであっても、コツさえ掴み、魔石さえあればそれを媒介として魔法の運用を行うことができる。すなわち、魔法制御指輪は魔力を効率的に物質に落とし込めた魔法技術の結晶であるのだ。
魔法による制御について詳しく解説しよう。勇者の用いる技も人間の普段は秘めている残りの8割の部分の一要素と言われている。(魔力の一分野とするか、別の能力とするかは議論の余地があるが、ここでは魔力とは別の要素であると扱う)急激な能力の開放は人体の負担も大きいし、効率的な運用は行われない。対して、魔法というのは魔石さえあれば、魔力が低くてもその運用は可能となるのだ。したがって、魔力を持つ指輪に頼ることにより、低負荷での能力開放へのアクセスを可能とし、あまり副作用なく技を繰り出すことが可能になるのである。
技と魔力の決定的な違いとして、前者は限界を超えて引き出すことができるのに対して、後者は引き出せる能力が決まっていることにある。引き出す手順を知らないと、全く発揮できない。もちろん、魔法は鍛錬を行えばさらに上級魔法を引き出すことができるが、基本的に才能に依存する部分が大きく、なおかつ、女性に特化して引き出せると考えられている。この点から、潜在的な能力といっても、技と魔力は区別されるのである。
もう少しわかりやすく例えるならば、技・魔法などの潜在能力は脳の奥深くにある引き出しに眠っている。技を使用する実力のあるものはその引き出しの場所を理解できているし、魔法を用いるものも同様である。技の運用は引き出しへのルートを理解していなくても、たどり着くことができる。しかし、遠回りしたりと効率的ではない。対して魔法は、引き出しの場所は分かっていても、最短ルートを理解していないと効果を得ることができないという差異がある。つまり、魔法制御指輪には技運用の最短ルートが刻まれており、勇者はその補助的魔力により、低負担で辿りつくことができるのである。




