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職業勇者制度が成立して100年経ったので識者の俺が解説してみる。  作者: コムギ・ダイスキーノ・アレルギノフ
周辺制度
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経験値制度

 この章では勇者にまつわる様々な制度を解説していくことにする。勇者社会には我々平民の世界とは違うルールが多数存在する。


 まず経験値制度である。経験値というのは一般的に、モンスターを倒すと自動で取得することができ、ある種、鍛錬の成長具合を可視化したものであると考えられている。そして、一定数たまるとレベルアップという形で能力の上昇が行われるというのが我々の中での共通理解かと思う。すなわち、経験値というのは実態などなく、あくまで冒険譚や魔導ゲーム内における読者あるいは、プレイヤーの想像を補完する要素だとされているのだ。しかし、職業勇者に置いて、経験値は実際の指標として存在し、レベルアップも技の限定解除という形で行われるのだ。


 ここでいうレベルアップとは、自己の身体的能力の上昇を指すものではない。それらは日頃の鍛錬や年齢の積み重ねによって、培われるものであり、経験値を獲得したからといって、一律で増減するものではない。ではレベルアップとはどういうものなのか。実はレベルとは技の使用許可が下りる段階を表している。勇者の世界では、主に剣を用いて戦闘することになるのだが、それに派生して莫大なダメージを与えることができる技が存在する。その使用の限定解除の指標となるのがレベルなのだ。


 ではレベルアップするためにどうやって経験値を具体的な指標として表しているのかというと、この世界にはいたるところに国営の経験値交換所が存在する。勇者はモンスターを倒したら、指定部位を剥ぎ取り、いくつか集めて交換所へ持っていくのだ。それが「モンスターを倒した証」、すなわち経験値としての役割があり、交換所が指定する量を超えると免許書き換え、いわゆるレベルアップが行われ、上級技の使用が認められる。


 ちなみに、レベルアップに必要な経験値量というのはレベルごとに一定ではなく、モンスターの剥ぎ取り素材の需要と供給により変動する。例えば、ある一定種のモンスターの剥ぎ取りを大量に行い経験値交換を行えば、供給過多ということでその剥ぎ取り素材の価値は大幅に下落し、その間はそのモンスターの剥ぎ取りでの経験値比率が悪くなるのだ。したがって、誰も倒していなかったり、交換所にとって需要が高そうなモンスターを倒せば、容易に経験値取得を行うことができるのだ。


 モンスターの剥ぎ取る部位というのは、基本的に素材としての価値が有り、金銭にも変えることができる。そのため、交換所において売却を選択すれば、レベルアップはしないが、懐の足しにもなるのだ。しかし、技の解除を行わなければ、さらなる上級素材にありつける確率は低くなるため、低レベル段階ではとにかくレベルを上げ、技を取得することを目指す。


 では限定解除とは具体的にどう行われるのか解説しよう。レベルといっても、「技を使用するに価する段階である」という国家のお墨付きでしかなく、実力あるものは経験値そっちのけで勝手に使用できる思いがちだろう。確かに、実力さえあれば使用は可能である。しかし、技というのは国家から支給された魔力制御の指輪をはめることにより、効率的に使用することができるのだ。この指輪こそが、現在レベルの証であり、これを取得することに勇者は腐心するのである。


 指輪なしでも身体能力さえ達していれば技を繰り出すことが可能であるが、その負担は大きいので、推奨はされないし、肉体的にも無理がある。あくまでも魔力で制御された指輪をはめないと、負担をかけずに技を繰り出すことができない。この指輪は魔力により人体の能力を効率良く引き出す作りになっており、低負荷で技を繰り出せいるというものである。これは国家によって一律、厳重に管理され、勇者区分以外の濫用を防いでいる。


 特に指輪は勇者にとってのステータスであり、勇者同士が対峙する時はまず実力を探るために、お互いの指元を確認すると言われているほどである。また、最近ではこの指輪に非接触式の魔力認証効果も用いられており、将来的には手続きの際に免許提示する必要がなくなり、指輪を用いた効率的な本人証明が可能になり、各種手続きの高速化が望めると言われている。


 ちなみ職業勇者制度成立以前の勇者たちは、このような魔法制御の技術が未発達であったため、素の状態で技を繰り出していたと考えられている。もっとも、指輪に魔力を落とし込むという技術の成立も60年前に発見され、それまでは制御のために数キロある魔石を担いでいたという逸話もある。魔法制御技術の小型化かつ効率化は技の精度の向上化に一役買っており、識者の中でも、非効率的な素の状態で技を出していた昔の方が強いと主張するものと、効率化を測ったものの、前時代では再現不可能な上級技を繰り出せるため現代の方が優れていると主張するものとの意見対立はしばしばである。

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