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傷痕
そこに今も残る記憶は
今生きている証でもある。
感触ものの無い体に
煩わしさという手間を
赤い雫と共に教えてくれた。
生きるということや、育つということと
生かされるということや、育てられるということは
大きく違う。
増大、増強、増産、蓄積、成長、生育、成育・・・
その対象が利潤か負債かの差。
愛は憎しみに裏返る。
疑心は信頼に転化する。
真逆故の裏表。
好きな分だけ苦しいのだ。
愛した分だけ痛いのだ。
痛みが薄れる事を怖れるのは
ただ忘れる事への恐怖なのだ。
痛みが薄れる事を怖れるのは
確かなものだと信じたからこそなのだ。
確かに
愛しているからこそ・・・
愛したからこそ・・・
愛していたからこそ・・・