1月30日
あれから数日が経ち、新たに手に入れた領地は新しく現れるようになったモンスターを求めて多少活気が出てきた。
新しい領地はヘイゼン沼地である。
よく考えれば、領地周辺から広げて行くつもりなので遅かれ早かれ手に入れることのなるのでさっさと手に入れてしまって開拓してしまえばいいんじゃね?っと言うことで非行カメたんたちを造った次の日に領地化した。
そこへ、非行カメたんと手乗りワイバーンを配置したところ、新しい素材を求めてプレイヤーが訪れるようになったのだ。
非行カメたんは、名前の割に凶悪な攻撃と高い耐久性を持っているため掲示板なんかでやんや言われているのを見つけたし、手乗りワイバーンから獲れる皮や翼などは火山フィールドのワイバーンの物には劣るがソコソコ良い値で取引されるようであった。
今の所素材があまり出回っていないので、一攫千金を狙いある程度の戦闘スキルの有るプレイヤーが乱獲しようとして返り討ちに有っているみたいで領地から得られる収入が増えた。
そうして、人気が出てきた領地に遂に領地争奪戦を申し込まれてしまった。
えーとなになに、相手の名前はクリストって言うのか。
聞いたことないな、ブラウザを開き魔王降臨イベントでの順位を調べてみると7位にその名前が有った。
と言うことは、一応各上か?
こんどは、地図を開き相手の領地の分布を確認すると飛び地ばかりで7つほど獲得しているようだ。
人気の出てきた領地を掠め取る方向でやっているのか、偶々飛び地ばかりを手に入れたのかは分からないが、この段階で此方に申し込んできたと言うことは前者なのではないだろうか?
しかも、7つとなるとかなりの勝率で獲得してきたのだろう争奪戦では、領地化アイテムが必要ない為勝ち続けることが出来れば≪魔王≫のレベルが低くても多数の領地を得ることが出来るのだ。
さてどうしたものか、受けるべきかどうするか。
試しに受けてみるのも悪くない、もし盗られてもモンスターによる人気だからある意味痛くはないと思うし、何よりこういうのは経験だ。
よし、受けるか。
それでは、相手に賭けさせる領地を選定するために一回りしてみるかな。
領地争奪戦では賭けている領地で戦う事になるので、そのためにも一度どういったフィールドなのかを知っている必要があるのだ。
やるからには、勝つ為の行動に手抜きがあってなならないのだ。
そうして、領地分布を地図で確認して7つの相手領地を巡り終えた。
どの領地にも、一定数のプレイヤーが強敵や素材を求めて居る様で深夜でも活気のあるフィールドだったが、その中でも一番目を引かれたのがフィールドの中心辺りで隆起したのか高い岩壁が幾つもそびえ、テーブルマウンテンのような場所だった。
岩壁には幾つもの採掘ポイントが有り、上まで登れば様々な薬草が採取出来る生産職プレイヤーには垂涎のフィールドなのだが、その分徘徊するモンスターも強力なものが揃っていて護衛の為のプレイヤーを連れて行く必要があるみたいだ。
さらに、岩壁には複数の洞窟型ダンジョンもあるようでそう言った場所には、さらに強力なモンスターが出ると言うこともあり高レベルプレイヤーが集まるそうだ。
この場所で集団戦をするのは難しそうだが、手に入れるには悪くなさそうだ。
早速返事として、相手に欲しい領地を提示した返事を送った。
しばらくして、運営から領地争奪戦の詳しい方法の描かれたメールが送られてきた。
争奪戦は、各領地戦が1日ずつあり決着が付かなかった場合に、魔王戦という本人同士が戦うという最大3日間にわたり行われるそうだ。
領地戦では、他のプレイヤーに迷惑が掛からないようにするために各領地を模した領地戦専用フィールドで行われ、防衛側はフィールド内に陣地となる場所を決めそこの防衛に当たり、攻撃側は相手陣地を攻め落としていき全ての陣地を攻め落とすか領地戦の制限時間が過ぎた時に半数以上の陣地を取得していた場合に勝利となる。
領地戦で召喚できるモンスターは、≪魔王≫のレベルに依存するのであまり魔力コストの高いモンスターばかりを召喚してしまうとモンスターの総数が少なくなってしまうので相手戦力を読みバランスよく配置する必要がある。
プレイヤーは直接戦闘に介入するのではなく、あくまでモンスターを指揮する立場になる為、ログインしていなくても領地戦の時間は進むので相手とログイン時間が合わなくても大丈夫とのことだった。
こうなると、戦闘を指揮する参謀役のモンスターを造り領地戦を任せる必要がありそうだ。
そもそも、こう言った戦術を駆使して戦う様なシミュレーションゲームが苦手なので直接指揮を執ると負けてしまいそうだ。
一度領地へ戻り、新たなモンスターを考える。
群れで行動するモンスターと言えば、ウルフ系だろうか?
そのボスの素材を用いて、獣人型のモンスターを造ろう。
早速、素材にするモンスターを決めるため情報を集めるとイデア付近にある森林系フィールドの主に条件に合いそうなモンスターを発見した。
早速、イデアに飛びススムくんを走らせること数十分、目的のフィールドに到着した。
鬱葱とした森のなかは、動物系モンスターで溢れていた。
木の上からは、リスが木の実を弾丸の様に吐き出して攻撃してきたりウルフ系が群れで襲い掛かって来た。
それらを何とか退けながら奥へと進んでいると森が大きく開けた場所へと出た。
どうやら、ココが主の現れる場所のようだ。
広場へと足を踏み入れると大きな銀色の主が数十体のウルフを連れて現れた。
相手の出方を見るために、近くのウルフに斬りかかる。
主がグルルゥと小さく吠えたと思ったら、ウルフたちは統率された動きを見せてこちらを囲む。
斬りかかったウルフも難なく攻撃を避けて戦列に加わる。
主がもう一度吠えた、するとウルフたちが一斉に襲い掛かってくる。
素早い動きで、かく乱し足に食らいつこうとするウルフを刀で斬り伏せる。
≪空間把握≫を最大限に発動して見えない相手に対処していくが、手数が足りない捌ききれない攻撃は確実にHPを削っていきポーションを使う暇すらない。
それでも、何とか全てのウルフを仕留め終わりHPを確認すると7割が削られてしまっていた。
忌々しそうに主が吠えると、森の奥からウルフの集団が現れる。
マジか。
慌ててポーションを飲み干して2回戦を始める。
先程より、一回り大きなウルフは動きも段違いだ。
5割増しと言った所だろうか?
その分数が、半分くらいであるのが唯一の救いだ。
飛びかかってくるウルフを避けて、刀で斬り付けるが倒すことが出来ない。
キャイン!と小さく鳴いて地面を数度弾んだ後、戦列に復帰する。
HPは2割程度しか削れていない。
このままでは、負けてしまうのは確実だろう。
意識を研ぎ澄まし、一撃威力と精度を高めて飛びかかってきたところにカウンター気味に斬りかかると上顎と下顎から真っ二つに切り割かれて落ちる。
何とか数を半分まで減らしとところで、遂に主が攻撃に参加してきた。
主を頂点に三角形の様な陣形、鶴翼とかいうんだっけ?を組んで突撃をかましてくる。
先頭の主を避けても、斜め後ろを走っている他の奴らを避けきれない。
しかも、先程よりもスピードが上がっている。
個々で動いていた時より、主が率いることで更なる統率が取れたその攻撃を端から崩すようにして何とか主のみにすることに成功した。
一度距離を取り大きな咆哮を上げる主。
今度も、援軍を呼ぶのかと思ったら主の周りに炎で出来たウルフが現れ、先程と同じような陣形を取り駆けてくる。
様子見を踏まえて、躱すと端に居た炎で出来たウルフが生物的にあり得ない角度で方向転換して此方に体当たりを仕掛けてきた。
予想外の攻撃に直撃を喰らって地面を転がる。
主が吠え、残りのウルフが迫ってくるが避けることは出来ない。
転がったまま体に力を入れて、攻撃に耐える。
今の攻撃だけで、HPが5割削られてしまった。
慌てて立ち上がり、ポーションを体に降り掛けながら刀を構えなおす。
主は、炎のウルフを展開しなおしてもう一度攻撃を仕掛けてきた。
如何やら、ウルフの形をしているが魔法の様で生物な動き以外にも普通に放つことが出来るため先ほどのように避けたところに追撃が放てるようだ。
と言うことは、避けるわけにはいかない。
迫りくる主に向かい刀を鞘に納めて構える。
飛びかかって来たところに口を目掛けて【一閃】を放つ。
キャイン!
主の牙が宙を舞う。
【一閃】の攻撃を避ることが出来ないと悟った主は軌道をずらしてすれ違う選択を取った。
その際に左の牙に【一閃】が当たり斬り飛ばすことに成功した。
大きくす火が出来た主に向かって此方から攻撃を加える。
「【ラッキーストライク】【バインド】【二閃】」
此方に向き直した主の頭上に、タライが現れゴーンと言う音が森に響く。
これ自体には大したダメージが無い、しかし隙を作り出すには十分だ。
タライの衝撃に頭を振っていたところを闇の触手で拘束して、殺意を込めた二連撃が主の首を切り割く。
両断することは出来なかったが、致命傷には十分だ。
力なく倒れる主の体をバインドが支えるが、それでもHPは残り二割もある。
半分光をなくした主の瞳が、此方を睨む。
僕は、止めの為に刀を上段に構えて振り下ろした。
その場で少し休憩をして、ソロ討伐のアイテムと称号を手に入れたことを確認して領地へ戻ると工房へ一直線に向かった。
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タクティカルウェアウルフ:デコーズ
HP:C MP:B
ATK:A DEF:C INT:C SPD:A DEX:B
≪爪A≫≪眷属召喚B≫≪鼓舞B≫≪戦術B≫≪統率B≫≪言語B≫≪千里眼B≫≪変身≫
魔力コストA
主の素材をメインに使い作り上げたウルフタイプの獣人型モンスター。
グラッジイーグルの瞳を使ったことにより千里眼のスキルを付けることが出来た。
これで、戦場の隅から隅まで見通すことが出来るだろう。
これからさらに、お世話になっていくことになると思いネームド化を行ったので、更なる経験を積んで言って貰いたい。
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「ふぅ、完成っと」
「こいつはどうするニャ?」
「ああ、言ってなかったっけ?」
「何をニャ?」
「今度、領地争奪戦をすることになったからその時の指揮担当に作ったんだ」
「そんニャ事なら、僕に言ってくれればのかったのニャ」
「…?お前そんな事も出来るのか?」
「ご主人は、僕を甘く見すぎだニャ。こう見えても魔神だニャ」
「魔神ってそう言う事も出来るのか」
「そうだニャ」
「マスター、そろそろ挨拶をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
デケとそんな会話をしていると、デコーズが話しかけてきた。
「この度は、私をお作り頂きありがとうございます。
デケさま、デコーズと申します。以後お見知りおきを」
「うむニャ、一応よろしく頼むニャ」
「それじゃ、デコーズには領地争奪戦に参加することになるモンスター達に戦術指南なんかも任せるからそのつもりで励んでくれ」
「かしこまりました。マスター」
そう言って、工房を出て行くデコーズを見送る。
「デケもあれくらい素直ならなぁ」
「む、あんな奴より僕の方が可愛いニャ」
「そうだな、可愛い可愛い」
「心がこもってニャいニャ~」
そうして取りあえずの争奪戦準備を済ませてログアウトしたのだった。
初の争奪戦が勃発しました。




