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魔王さまのおしごと…迂闊な魔王はどこへ行く  作者: 溶ける男
第四章 新しい力

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1月15日・前篇

あれから数日が立ち、第二の修行を攻略中だ。

内容は、コロシアムに登録したプレイヤーが行けるダンジョンの【修練の門】をBランクまで突破すると言うモノだった。

修練の門には、コロシアムランクと同じく難易度が設定されていて自分のランクまで入れるようになっている。

修練と言うだけあって、内部では戦闘系スキルの経験値に多少のボーナスが有るそうで、長時間ログイン出来ないプレイヤーなんかはここでスキル上げをしているそうだ。

また、このダンジョンはインスタンスダンジョンで、パーティー以外ののプレイヤーと出会うこともなく、内部はランダム生成となっていて毎回違うコースとなるので攻略難度は高めになっている。


そんなダンジョンに、ソロで魔法の使用の禁止と武器が破損したら失敗と言う条件の元、木刀一本で放り込まれた。

木刀の耐久値は、初めて作った刀と同じくらいだったと思う。

熊に攻撃してあっさり折れてしまったヤツだ、そんな強度の武器をこのダンジョンで使うとなると、確実に今までの様な力に頼った攻撃では破損してしまうのは目に見えていた。

注意深く相手を観察して急所に向かって振り抜く、関節を砕き無力化して止めは刺さずに奥へと進む。

あえて止めを刺さないのは、武器の耐久値を心配してのことだ。

ダンジョンをクリアする為には、ボスを倒す必要があるが道中のモンスターを倒す必要はないのだ。

しかし無視していくと、ボス戦の途中で増援として現れたりしてとても厄介だったので見つけ次第、無力化する方法をとるようになった。


そうしてボス部屋に足を踏み入れた。

Fランクは、豚の顔をした体長2m位のオークリーダーと言うモンスターだった。

一回り小さいオークを3体引き連れて登場したソイツは、大きな両手斧を持ち完全なパワーファイターだった。

当然のごとくそんな武器からの攻撃を木刀で受けることは出来ないと判断して、回避を中心に立ち回りつつ攻撃を放った後に出来るスキを狙って、喉元に渾身の突きをお見舞いすることにより取り巻きのオークは倒すことが出来たのだが、如何せんその行動を見ていたオークリーダーに警戒されて、スキの大きな攻撃を繰り出さなくなった為に部位の破壊を中心に意識を切り替えた。

先ずは、斧を持つ手に鋭い打ち込みを加えて親指の骨を砕くことに成功するが、これだけで木刀の耐久値は半分以下になってしまった。


武器の耐久値はアイテムの説明を確認しないと詳細ははからないのだが、これまで何十本と木刀を駄目にしてしまった為か、なんとなくではあるが木刀に関してのみ耐久値の残りが分かるようになるという、この修行以外ではどうでもいいかもしれないプレイヤースキルが身に着いた。


この分では、あと数発の打ち込みにしか耐えられないであろう木刀で如何に相手を倒すかを考えながら、相手の懐へと飛び込む。

大きな武器を振り回すには、それなりの距離が必要で両手斧の間合いは広いが内側は意外と死角になるのだ。

それでも、無駄打ちをする余裕もないので超至近距離で振るわれる斧を確実に避けていると、こちらの思惑通りに振り下ろしを放ってきた。

木刀を右手の身に持ち替えて左手で斧の刃の腹を殴りつけて軌道を逸らし地面を打たせると、その隙に斧の柄を駆けあがりオークリーダーの後頭部目掛けて木刀を斜め上から振り下ろす。


ボキッ!という感触が、木刀から手に伝わってくる。


何とか木刀は折れずに、オークリーダーの首の骨を折ることに成功したが、苦しそうに呻きながら前のめりに倒れるのを、斧を支えに持ちこたえている。

木刀の耐久値はもうギリギリで、次の一発で折れてしまうだろう。

どうしようかと考えていると、ゆっくりとオークリーダーが支えにしていた斧と共に倒れてダンジョンクリアとなった。

如何やら、首の骨を折ったことでスリップダメージが入り止めとなったようだ。


そんな感じで、木刀の耐久値管理が出来るようになってからは比較的に楽にダンジョンを進むことが出来るようになったが、ランクが進むにつれてボスはどんどん硬くなり木刀の攻撃力では進むのが難しくなってきたことをおじいさんに相談すると、「第一の修行で何を掴んだのじゃ」と怒られてしまった。


そうです。木刀になって多少ではあるが攻撃力と耐久値が有ることですっかりと忘れてしまっていたのでした。

さっきまで、防御力に苦戦していたモンスターに対してどのように木刀を振るえば切断できるのかと思考していくが、中々イメージ通りの攻撃を繰り出せないでいた。

そう、丸太は動かないけどモンスターは動くのだ。

いくら完璧に振るってもソレは、動いてない場合のことで当然ながらモンスターも攻撃に対して対処してくるのでそう簡単に理想の攻撃を振るうことは出来ない。

そうなってくると、如何にして相手の行動を限定してそこに攻撃を当てて行くかと言う方法を見付けて行かなくてはならなくなるのだ。


まず試したのは、あえて隙を見せて相手の攻撃を誘い、カウンターで決めて行くと言うものだ。

これは、確かに相手の攻撃を限定しやすいのだが、リスクが高い。

此方の攻撃が当たり損ねると、木刀の耐久値の減りは2倍以上になるし避け損ねてダメージを喰らう事が多々あった。

それでも、この方法をメインにCランクまではクリアすることが出来た、後はBランククリアで第二の修行も終わりとなるだろう。


そう思っていたのですが、Bランクダンジョンは今まで以上に強敵でした。

まず、隙を見せるスキなんて相手にないのだ。明らかにCランクまでのダンジョンが緩かったと思えるくらいの超強化が掛かったかのようなモンスター群に大苦戦を強いられてしまった。

いまだ相手の行動を限定しないと思った通りの攻撃が出来ないので、より素早く相手を見切りこちらの意図した場所へ確実に移動させたところを斬ると言う事を念頭に置いて立ち回る。

牽制で蹴りなどを繰り出し、それを避けたところに本命の攻撃を当てる。

一対一ではそれで何とかなるのだが、複数を相手となると話が変わってくる。

全てのモンスターの動きを把握しながら意図した場所への誘導と攻撃、≪空間把握≫により周囲のモンスターを見ずとも把握できるがそれを捌ききれるほどの実力は未だにない。


今まで魔法や武器の性能に頼って戦ってきていたことを実感するとともに、もう一段上を目指す良い機会と捉えて試行錯誤を繰り返す。

そんな中で始まった、お爺さんとの乱取りが始まった。

何となくわかっていたけど、このおじいさんは化け物だな。

たがいに木刀を持ち、相対しているのだがどうやっても一撃入れられる気がしない。

その上此方に飛ばしてくる殺気?がヤバい。ちびりそうな位怖いのだ。もしかしたらヘッドギアを外したら粗相してしまっている可能性すらある。


「どうした、来んのか?」

「いえ、どう攻めようか迷ってまして」

「ご主人さま、ビビってるのかにゃ、かっこ悪いにゃ~」


ようやく僕のことを、ご主人さまと認めたのかそう呼ぶようになったデケから、そんな事を言われては行かぬ訳にはいくまい。

取りあえず今持てる最大の攻撃を繰り出すことで、相手との力量の差をはっきりさせることからだ。

木刀を腰だめに構えて【一閃】を放つ。

おじいさんの体が、一瞬ぶれたと思ったら木刀は空を切った。そこを木刀でコンと頭を叩かれて初めての乱取りは終了となった。


「ふむ、その攻撃はなかなか良いが、何度も見せた相手にするもんではないな」

「そうですか…。」

「そうじゃの、同じ型から別の攻撃も繰り出すようになるとまた違ってくるかもしれんがの」

「なるほど、ちょっと試してみます」


そうして考えたのは、上中下段に刀の軌道を修正した【一閃】だ。

今までは、腰より少し上の高さを真横に両断する軌道を取っていたモノを中段として、くるぶし辺りを切り払うような軌道を描く下段、腰から肩にかけて斜めに切り上げる上段と三つを使い分けるようにした。

そして、上段を練習していたところゲーム初日から練習していた、切り上げからの切り下しを【二閃】となずけて上手く繰り出せるよう練習することにした。

今まで、【一閃】を意識していた為振り切った後に大きなスキが出来ていたのは自分でも分かっていたので、この機会に技の方のブラッシュアップもしてしまおうと思うのだ。


このゲームを始めてから、よく考えれば武器の扱いを教えてもらう機会は今までなかった。

通常、ライフスタイルクエストで教えてもらえるところを「魔王さまが?」の一言でスルーされて以来、独学でやって来た為偏った扱い方をしている自覚はある。

そういう意味では、この流派は緩い気がするが自分には合っていると思いたい。

型や細かい指導はないが、実際に強い人から何かしら学び取る機会は得難いモノだ。


新しい技を思いついては、おじいさんに乱取りを申し込んでボコられる日々が続き合間合間でダンジョン攻略にも繰り出しようやくBランクダンジョンのボスの部屋へと辿り着いたのだった。


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YouTubeにて主題歌配信中「魔王様はじめました」
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