11月12日
1:00
マシリアへ到着してから毎日2時間くらいの転移石採掘作業に従事してそのあとは、この町の工房に籠っている。
工房では、あのあとやって来た生産者プレイヤーも含めて数十人が色々な作業をしている。
如何やら、マシリアでの転移門設置クエストは各生産スキルに見合ったものを受けることが出来るようで掘り出した転移石の加工や門の装飾品作成など様々なものがあった。
鍛冶スキル用のモノもあったがそれは受けないで、今はススムくんの改良に勤しんでいる。
揺れを抑えるためにまずは、サスペンション部分?を作ることも考えたがどうにもうまくいかない、色々とバネを作って見るのだが余計に揺れがひどくなったり走行時安定性を失ったりとイマイチ成功する気がしないのだ。
こういうのはある程度専門的な知識が要るのだが、残念ながら持ち合わせて居ない上に、≪刻印魔法≫によって無理やり走らせているススムくんに現実世界の方法が確実に合うとも言い難いのだ。
何度目かの失敗ののちに、別のアプローチも試そうと言うことで座席を≪刻印魔法≫で走行時は1cm浮かせて本体との間に空間を作って走らせると言うのも考えてみた。
思った通り体は揺れないのだが、本体と接している足が貧乏ゆすりのように激しく揺れるうえ、MPの消費が2倍になっていしまい1時間しか走ることが出来なくなってしまった。
そもそも、この≪刻印魔法≫が曲者なのだ。
機能使用時の消費MPが最大値の数%と言うのは、誰が使っても同じ効果を発揮することが出来るのでMPの少ない場合には重宝するが多い場合は違うのだ。
何処かへ戦いに行く際の使う乗り物として考えた場合、着いた先でMP切れでは戦いにならないので、もう少し効率を上げて消費MPを減らさないと売り物には出来そうもない。
さらに、出来れば道中のモンスターに当たっても負けない、あるいは倒せてしまうくらいの攻撃力も持ち合わさせてみたいのだ。
バンパーに位置する部分に武器となる刃などを取り付けると重心が変わって安定性は無くなるし、思ったほどの効果が認められない等と残念な結果になってしまった。
そんな試行錯誤の末に生み出したススムくん弐号は今までは、様々なキーワードで速度などの挙動を制御していたものを、アクセルやブレーキ、ギアボックスなどを組み込むことで制御するより車に近いものになりました。
≪刻印魔法≫で制御する部分を減らしたことにより消費MPはかなり抑えられた上に速度は、ギアやアクセルの操作で時速50kmまでを出すことに成功。
更に、車に近い感覚で動かせると言うことで運転の方法のレクチャーが必要と言う煩わしい部分が丸々カット出来たのだ。
そして最大の課題であった乗り心地だが、町を散策している時に偶然見つけた素材がゴムのように使うことが出来た為それを加工してタイヤを作ることに成功したのだ。
今までの、木で作った車輪ではどうしても振動がダイレクトに伝わってきてしまい上手くいかなかったのだが、タイヤを作ったことにより時速50km出してもそこまでは揺れなくなったのだ。
結局、武装を付けることは出来なかったがそれは、次の機会までに考えておくとしよう。
そうして完成したススムくん弐号を現在アインさんが試乗中だ。
マシリアを出てすぐの草原を走り回る荷馬車に見える割に明らかにスピードがおかしい乗り物を乗り回す、筋肉質のスキンヘッドの男が奇声を上げている光景に若干引きながら見守る。
アインさんは、満足したのか土埃を上げながらこっちへ来たかと思うと直前でスピンの様なものをして目の前に急停車をかましてきた。
「ケホっ、テンション上げすぎですよ…で、どうでした?」
「ああ、一号とは比べ物にならんくらい挙動も乗り心地も良いな。」
「ソレはよかった」
「なにより、一々キーワードで制御しなくていいから運転をミスることが少ないな」
そうなのだ、キーワード操作と言うのはパニックになったりすると言葉が出なかったりして機能を発動することが出来ない事があるのだ。
そんな感じで、試乗後の意見交換を済ませた後に
「それで、いくらで売るつもりなんだ?」
「そこで相談なんですが、ぶっちゃけ素材代は7万Lほどなんですが、ギアボックスとかを作るのにソコソコ時間がかかって一台組み上げるのに1日かかるんですよ。色々込々で30万Lくらいで売ろうかと思ってるんですけど売れると思います?」
「いや、この機能で30万は安すぎるだろう。」
「そうですか?」
「ああ、倍くらいでも売れると思うぞ。
それにあんまり安いと、生産が追い付かんだろうしこればっかりを作るつもりもないんだろ?」
「それもそうですね、それでは60万Lにしますか」
「ああ、それがいいと思う」
「それで、アインさんはこのまま買うと言うことでいいんですか?」
「おう」
そう言って、懐からお金を取り出すアインさん。
「確かに、お買い上げありがとうございます。」
「おう、こっちも助かった。素材彫りに行く時間が大幅に短縮できそうだ」
「あれ?プレーヤーメイドのダンジョンに入ってないんですか?」
「ああ、あそこで手に入る素材は規格品?と言うか決まった成分や大きさのモノしか出ないようになってるからな、実際に鉱脈やダンジョンに掘りに行った方が上質な素材が手に入る。」
「へぇ~そんな違いが有ったんですね」
「ん?知らなかったのか。鍛冶師なら教えてもら…おっとそうだったな、ライフスタイルが違ったんだったな。お前と会った時は大体生産ばっかしてるから生産者のつもりで話してたわ」
「そう言うことも教えてもらえたりするんですね」
「ああ、この世界での基本は教えてもらった。後は自分次第だそうだ。」
「それじゃ、マシリアへ来てもあんまり意味なかったんじゃないですか?」
「そうでもないぞ、ここでは生産系のライフスタイルをランクアップ出来るクエストがあるみたいなんだ。
転移門が完成したらそっちを探そうと思ってる」
「ライフスタイルのランクアップかぁ、≪魔王≫もあったりするんですかねぇ」
「どうだろな、有ったとしてもまだまだ先だろう今でもステータスが一回り以上違うんだからそれ以上差が付いたら手が付けられん」
「そうですかね、でもステータスが全てではないのがVRゲームの良いところではあるんですけどね」
「リアルスキルってやつか?」
「はい、前回の【魔王の降臨】で1位だったヘイヴさんなんか手も足も出ないくらいに負けちゃいましたし、ガロンさんにはステータスが同じでも勝てる気がしないです。」
「ははっ違ぇねぇ、でこの後お前はどうすんだ?」
「そうですね、取りあえずは転移門のクエストが終わるまでは此処に居るつもりですよ。出来れば転移門の技術を盗みたいんですよね、ゲームシステムだからクエストクリアすれば転移が出来るっていうのなら無理かもしれないですけど、このゲームのことだからもしかしたら自分の領地なんかにも設置できるんじゃないかって思ってるんですよ。」
「面白い事考えるな」
今までやって来てこのゲームが、ただのプログラムの結果だけを実行しているのではないのではないかと思っている。生産にしても自由度が高すぎるし行動範囲についても見えない壁と言うものが最初の領地以外では、感じたことが無い。
ただのオブジェクトとしての家ではなく仲まで作られていてそこではNPCが生活をしている、もうこれは一つの世界と言っても過言ではないような気もする。
そんな中で、転移門だけが結果として使えると言うのは考えにくい。
転移石もクエストを受けなくても掘ることは出来るし、各加工も再現は出来ることは調べた。
後は、完成時の設定?のやり方さえ解ればどうにかなる気がするのだ
アインさんとは情報交換をして別れた後、ススムくんを新たに1台完成させたところで今日の所はログアウトすることにした。
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ヨウ
ライフスタイル コスト7
≪魔王15≫
装備スキル 3/3
≪孤軍奮闘43≫≪武運15≫≪属性付加55≫
控えスキル
≪刻印魔法27≫≪上級採掘5≫≪上級鍛冶7≫≪上級革加工4≫≪福運48≫≪上級錬金術3≫
商業ランク F
称号
【グラッジ草原の覇者】
【ヘイゼン沼地の覇者】
ちょっとステータス部分をいじってみました。
アップデート後にライフスタイルとスキルを別のモノとして表示する仕様に変わったと言うことにしておいてください。




