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魔王さまのおしごと…迂闊な魔王はどこへ行く  作者: 溶ける男
第三章 広がる世界

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25/56

11月2日

1:00

サービスインしてからは珍しく延長に次ぐ延長が発生し丸一日掛かってようやくアップデートが終了しログインしました。

と言っても今は深夜、アップデートが終了してから6時間ほどたっている既に新しい街に到着したプレイヤーも居るらしい。

追加された町は西の森林に【魔法都市イデア】、北の渓谷に【剣聖都市ソーディア】、南の草原に【生産都市マシリア】、東の砂漠に【自由都市ダリア】の4つだ。

一通り廻ろうと思うのだが、先ずは生産都市マシリアに行きたい。

領地からは遠いのでアイリスから向かうことにする。


ゲーム内時間が現実の2倍になったことで現実世界の12時間でゲーム内では24時間経つようになり、0時~12時までで1日と言う感じになっている。

今は1時、ゲーム内では2時と深夜に位置する時間で結局そこまで劇的なプレイ中の変化はないのかもしれない。

いつものように準備運動した後、ゴブリン四天王との稽古をしてアイリスへ飛ぶ。


ゴブリン達はタロウたちをリーダーに、5人一組でグラッジ平原を徘徊する様に言ってある。

掲示板などでもまだそう言ったゴブリンの話題は無い様なのでプレイヤーとの接触は無いのだろうと思うがソロソロ戦わせてみるのも悪くない。


アイリスへ到着し広場へ行くと各町へと向かうための臨時パーティー募集が盛んに行われているようだ。

四方に目的地が別れるので固定パーティー以外のプレイヤーは目的を同じくする人を探すのが大変のようだ。

一気に町が増えるのも考え物である。


そんなことを考えながら広場をから南に向けて進んでいると

「お!ヨウさん久しぶり~」

と声をかけられたので振り返るとトイ君が立っていた。

「どうも、この間はありがとね」

「いえいえ、此方こそあの素材で稼がせてもらいました」

「ところで、トイ君はまだほかの町にはいかないの?」

「いやぁそれが、フレンドに生産都市に行くやつが居ないんですよ」

「そうなんだ、よかったら一緒に行く?」

「いいんですか?」

「おう!ッてかそのつもりで声かけてきたんじゃなかったの?」

「あれ?ばれてました?

 ヨウさんがこっち方面に歩いてくるのが見えたんでもしかしたらって声かけました」

久しぶりのパーティープレイになりそうだ。

「それで、準備が終わってるならこのまま出発しようと思うんだけど」

「大丈夫っす。よろしくお願いします。」

そう言ってパーティー申請を送って来たのでYESを押す。


南門をくぐり町を出てマシリアを目指すのだが、詳細な地図は無い上に大体の位置しか分からない歩いていたらログイン時間内に着けるとは思えないと言うことで新兵器をアイテムボックスから取り出す。

「えーっと、何ですかそれ」

「魔力自動車「ススムくん一号」だ」

各生産スキルのレベル上げの際に創り上げた魔力自動車は車と呼ぶのもおこがましいデザインではあるが、足で走るよりは早く進むことが出来る夢の乗り物だ。

「えーっと馬車の荷台にしか見えないんですけど」

そう、見た目は荷馬車のようになっていて四つのタイヤが付いた荷台と運転用の席にはタイヤの角度が一応変えれる様にハンドルが付いている。

と言っても車の構造なんて詳細に分らないので急カーブ出来るほどの機動性はない。

エンジンの様なものも作れないのでギアに≪刻印魔法≫で回転を刻んで魔力で回して進むと言う荒業で作り上げたのだ。

「まあいいから乗って乗って」

「なんか不安なんですけど」

「乗り心地は改良中だけど速度は出るから安心して」

「えーっと、今のどこに安心するところが有ったんですか?」

「じゃ、しゅっぱーつ」

ツッコミを聞き流してキーワードの「前進」と呟くとススムくん一号がゆっくりと動き出す。

徐々に加速していき現在は時速30km位出ていると思うのだが、街道があんまりいいものではない様で全身がかなり揺れている。

「ヨウさん、気持ち悪くなってきました。」

「じゃ、一旦停止しようか」

そう言って「停まれ」っと呟くと緩やかに速度を落として停車する。

「うっぷ、状態異常に【酔い】ってあったんですね、あぁ気持ち悪い」

「へぇ、お酒以外でもその状態異常になるんだ。まぁこれでも飲んで、楽になるから」

そう言って酔い覚ましを渡す。

【酔い】と言うステータス異常は、集中力の低下・平衡感覚の麻痺・全身の軽いシビレなど複合的な効果が有り現実と同様な効果が確認されている。

お酒の場合は、酒量により軽度から重度までの段階があって最悪は死ぬことが確認されている。

ファンタジーライフスタイルオンラインで初めての街中でのプレイヤーの死因が飲み比べでの過剰摂取による急性アルコール中毒死と言うことで少し掲示板が賑わっていたとか。

「ありがとうございます。」

「さて、どのあたりまで来たかな?」

約1時間ススムくん一号を走らせて来た。

途中戦闘などもあったが距離としては20km位進んだと思うのだがまだ町にはついていない。

「それにしても乗り心地はともかく早いですね。」

「まぁ、それなりに魔力を食うからこれぐらいの速度は出してもらわないと」

≪刻印魔法≫でのMP消費は一秒間に最大MPの数%と言う形なのでMPの量が多いとか少ないとか関係なく一定時間走れるというのがメリットでありデメリットだ。

一応ススムくん一号は、MPが100%有れば2時間の連続運転が出来るようになっているので、現在約50%まで消費したことになる。

「刻印魔法でこんなもの作っちゃうなんて、てかこれ売ったらかなり稼げそうなんですが。」

「どうだろね、平坦ばっかりならいいけど乗り心地的にも改良の余地ありかな」

「それは…そうですね」

「次は、トイ君が運転してみてよ」

そう言って操作方法を教えて軽い練習の後に南へ向けて出発した。

「いやー、運転席の方が揺れが気にならないですね」

「そうみたいだね、荷台はやばいな」

今まで運転席にしか乗ったことが無く荷台がこんなに揺れるとは思わなかった。

幸い、酔い止めを飲んでいたので【酔い】になることはないのだがそれでも振動は容赦なく襲ってくる。

しばらく走っていると、前方で大きな爆発音と火柱が上がった。

「迂回します?」

「いや、言ってみよう。こっちに向かってるのは生産者が多いから助けが必要かもしれない」

「わかりました」

火柱の上がった方に近づいたところでススムくん一号をアイテムボックスにしまい戦闘の様子を伺う。

如何やらフィールドの主に見つかってしまったようで、大きなウシが3パーティーと戦闘を繰り広げている最中だ。

ウシは10mほどのバッファローの体に尻尾がヘビと言う見た目で頭の角を武器とした突進とヘビの毒ブレスと言った攻撃を軸に巨体に見合わぬ動きで翻弄していた。

パーティーの内訳は、生産職が10人と護衛役の5人で何とか攻撃を耐えているようだが、全滅するのは時間の問題かもしれない。

「あれやばそうっすね」

「だな、加勢に行きますか」

「えっと2人増えても変わらない気がするんですけど」

「良いから行くぞ、ドロップアイテムも美味しそうだし」

「わかりました、しかたないですね」

渋々付いてくるトイ君と一緒に駆け出して救援に向かう。

ウシは如何やら毒ブレスをするつもりらしくヘビが鎌首をもたげて溜めている。

あれを撃たれるとパーティーが瓦解しそうな気がするので一気に集中力を高めて尻尾を切るイメージをする。

気配を出来るだけ消して牛の後ろに回り込み今まさにブレスを吐こうとしたヘビの付け根に【一閃】を放つ。

硬い手ごたえを感じるが一気に刀を振りぬく。

何とか切断に成功してボトリと落ちたヘビがのたうち回っている。

ブモォォォォォォォォ!!!!!

ウシが痛みからか大きな咆哮を上げると、全身にビリビリとしたシビレが走る。

無理やり体を動かしつつ

「加勢します!」

「おう!助かる」

さっと加勢の意思を告げて戦闘に加わる。

尻尾を失ったとは言え巨大なウシが高速で突進してきたら受け止めるなんて無理だ。

そこで、【バインド】で後ろ左足を固定する。

余りに大きくて全身を固定することは出来なかったが何とか曲がる際の急制動に合わせて固定に成功したのだ。

ウシは、盛大に転げまわり背中を地面につけた。後ろ左足は急激な負荷により折れてしまったようであらぬ方向を向いていた。

チャンスとばかりに駆け出してウシにダメージを与えて行くほかのプレイヤー。

気付くと残りの足が鎖でぐるぐるに一まとめに縛られて身動きが取れなくなっていた、如何やらトイ君がヨーヨーを使って固定したようだ。

「トイ君、グッジョブ!」

トイ君へ向けてサムズアップすると照れながら

「そんなの良いから、あとやっちゃってください」

「おう、任せとけ」

ウシ目掛けて駆けだす、頭を潰せば倒せるだろう。

ドリルハンマーを取り出して高速回転させながらアゴ目掛けて振り下ろす。

肉を削る感覚を感じながら更に掘削しドリルの刃が完全に埋まるころにはウシのHPは無くなっていた。

ウシが光になって消えたところで地面に腰を下ろして助けたパーティーの面々に挨拶のため振り向く。

「お疲れ様でした。怪我人はいないですか?」

「おう、助かったぜ……ん?お前は!」

「え?どうかしました?」

「久しぶりだな」

よく見るとイベントで2度戦ったあの5人組だった。

「どうも、イベントぶりですね」

「ああ、お前には2度も敗けちまって結局上位入賞は出来なかったぜ」

少し険悪な空気が流れだした頃、生産職パーティーから1人こちらに歩いてきた。

「ん、ガルムどうしたどうした?助けてもらったのにその態度は?」

そう言ったプレイヤーを見ると

「あれ?アインさんじゃないですか」

「おう、ヨウ 久しぶりだな」

「あれ?アインさんもお知合いですか?」

「ああ」

「アインさんもマシリア目指してたんですか」

「ああ、生産やってるなら一度は行っとかないとな。新しい素材もありそうだし技術にも興味がある」

「それで、ガルムさんは護衛ですか?」

「ああ、そんなとこだ。

 それにしても助かったぜ、あれに遭った時は死に戻りを覚悟したぜ」

「そうですね、いきなりフィールドの主とか準備なしだと厳しいですね」

「そう言いながら、アッサリ片付けてくれちゃっって、てか何だあの武器は?」

「これですか?もちろんドリルハンマーですよ」

「何が勿論か知らないが、ファンタジーぶち壊しだな」

「いやいや、ちゃんとMP消費で動いてますんでギリギリファンタジーですよ」

「あの、そろそろ」

そう言って声をかけてきたのは5人組のヒーラーだ。

見ると他の生産者も話に興味があるのか周りを取り囲んで聞いていたようだがソロソロ出発もしたいと言うことのようだ。

ススムくん一号は5人乗りを想定して作っているので予備の3台を取り出して彼方に貸し出す。

最初は驚いた生産者組も裏の構造なんかを確認した後は少し白い目で見られた気がする。

10分ほど運転の仕方と練習をして出発した。

並走しながら、5人組と自己紹介を済ませる。

イベントでは戦った仲だが、名前を聞いていなかったので今更ながら聞いてみたのだ。

リーダーの大剣使いがガルム、両手斧使いのダン、大楯装備のタンク役のガスとん、ヒーラーのチャイム、斥候エセ外国人のピエールと言う組み合わせだ。

彼らとイベントの話をしたり、各々が使う武器はアインさん製だったりと話をつづけながら1時間ほどかけて空が白み始めたころようやくマシリアへとたどり着いた。

「本当に助かったぜ、因みにソレは売ったりしないのか?」

町へ着き、ススムくんをアイテムボックスへしまっているとそんなことを聞かれた。

「どうですかね、売れると思います?」

「どうだろな、俺は欲しいが出来ればもう少し乗り心地がいい方が良いな」

アインさんはススムくんが気になっているようだがやはり乗り心地については改善した方が良いとのことだ。

「それに値段とか考えてなかったんで相場が分からないです」

「そうだな、今までこんなものを作ろうってやつが居なかったのもあるし相場なんて無い様なもんだな」

「ですよね、≪刻印魔法≫ってそんなに取得者少ないんですか?」

「あぁ、あのクエストは生産者連中に一斉に取得方法が広まってな、そのせいでクエストのクリア条件を満たせなかったプレイヤーが続出して生産メインの中では10%くらいしか持ってるやつが居ないんじゃなかったか」

なんでも、クリア条件となるレアモンスター素材が条件として一斉に広まった為ただでさえ少ないのに需要ばかりが増えた結果、狩場では利益狙いのプレイヤーと生産者の争いが有ったり露店などでも高騰して買えない人が続出したりと言う結果を招いたらしい。

「そんなことが有ったんですね」

「ああ、それで今では≪刻印魔法≫=邪道みたいな風潮が嫉妬とかを含めて生産者プレイヤーに蔓延したせいで、こういった面白技術は表にあんまり出てこない」

あぁ、さっき白い目で見られた理由がなんとなくわかりました、嫉妬ってなんでこんなに人を醜くしてしまうのだろう。

アインさんとの情報交換や近況の話を終えて広場得向かう。

広場の真ん中には作成途中のモニュメントが有り、その前には作業服を着た人が立っていた。

如何やらこの人が、転移門のクエストを発行しているようだ。

話しかけると転移石の採掘をお願いされた。

コレは近くの採石場で取れる石のようですべての町で必要なためかなりの量が必要とのことだ。

転移石を掘り出す役と運ぶ役がありそれぞれに自給のような形で報酬がある様だ。

クエストは後回しにして、まずは町の散策をするため大通を歩く。

色々な店がある様だが、これと言って特に欲しいものはないが各店を見て回ったところでいい時間んとなったので、今日の所はログアウトすることにした。

_____________________________________

ヨウ

ライフスタイル コスト7

 ≪魔王14≫

装備スキル 3/3

 ≪孤軍奮闘43≫≪武運15≫≪属性付加55≫

控えスキル

 ≪刻印魔法24≫≪上級採掘3≫≪上級鍛冶4≫≪上級革加工2≫≪福運45≫≪上級錬金術1≫

商業ランク F

称号

 【グラッジ草原の覇者】

 【ヘイゼン沼地の覇者】

どうも、気が付くとユニークVPが4000人まであと少しとなっていました。

其れだけの人が一度は読んだことがあると思うと色々と考えるところもありますが、今後も思いつく限り書いていきますのでよろしくお願いします。

ゲーム内時間が長くなってしまって一話にかかる文字数が少し増えてしまいました。

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YouTubeにて主題歌配信中「魔王様はじめました」
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