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異世界勇者召喚失敗しました!  作者: ゆっくり、会社員K、子猫 夏、unworld、月夜の闇猫
3/5

エルイの転生話(子猫夏)

――今、何が起きているんだかにゃ~……。

 僕は、くるくると回転しながら思った。


 みにゃさん(みなさんって誰だろう?)、おはよう。僕はエルイ。とっても素敵な毛皮と、愛らしい耳を持った、猫なのにゃ。

 僕は、普通に森の中で、仲間とのんびり暮らしていた。時々ヒトってのが来て、

「こいつら二本足で歩いていやがるー!?」

と叫んで、こっちに黒いテッポウっていうのを向けてきたけど、まあ普通な暮らしだった。……ヒトってやつは失礼にゃ。猫が二足歩行なんて、常識中の常識にゃのに!

 いつも、仲間と協力してヒトを撃退してきた。木の上から飛びかかれば、すぐに逃げていったから、いつも簡単に追い払えたんだけど……。

 ある日、僕はちょっとした失敗をしてしまった。木の上から飛びかかった時、ヒトが思わぬ方向に避けて。僕はヒトの真ん前で、無様に地べたにつぶれたのだ。

 目の前に落ちてきた「化け猫」を、ヒトは見逃さなかった。僕はそいつに……頭をズドンとやられてしまった。

 そこで僕の猫生は終わり……のはず。


 なんかね、僕、変にゃ所を飛んでいるよ。

 きっと、わあぷ(ワープ)っていうのをする時、こんにゃ感じじゃないかにゃあ?

 どうしようも無いし、大体僕は既に死んでいるはずなので、飛ばされるがままになっている。なんか楽しくなってきて、わざと何回転もしたり。

 そうしていると、前方から何かが見える。

――あれは、にゃに(なに)

 僕は視力もいい――だって猫だし――。目を凝らせば、そこにヒトが三人いるのが見えた。くっそう、ヒトか。殺された恨み、晴らさでおくものか……でも、僕を殺したヒトには、もう会わないなあ。

 近づくと、そのヒト達が、おじいさんと、男の子と、女の子なのが分かった。なんだ、あの組み合わせ? 男の子は、奴隷みたいだったし……。

 見る見る間に近づいて、――そこを通り過ぎた。なんか、おじいさんがビックリしたように見てくる。そんな顔されても……。

 とにかく、僕が連れてかれるのは、さっきの場所ではなさそうだ。

 また、流されてくるくる。

 くるくる。

 回転するのが楽しくて、「ひゃっはーーー!」とか叫び始めたころ。

 また見えてきた、何かの景色。

――あそこ、僕の目的地じゃにゃいといいなあ。

 そこは、とっても暗かった。でっかい椅子に、なんかおっそろしいバケモノが座っていた。あれだな、魔王ってのはああいうやつじゃないかな?

 また、その景色に近づいて……椅子に座っているバケモノが、こっちを見てにこやかに……にこやか!?

 なんか、飛ぶスピード緩んできた!

――嫌だにゃああああ!? あんにゃ所、ごめんだにゃあ!

 じたばた。必死に逃げようとしても、そっちに体が吸い込まれて。バケモノが視界いっぱいになったとき――。


 キュインッ!


 どこか遠い所から、鋭い音が聞こえた……気がした。直後、僕の体はまた引っ張られて、

「な……なんだと!? くっそう、牙も抜けた、たかが人間どもが……転生者を召喚しても、貴様らに勝ち目など無いのだぞ!?」

 そんな、バケモノ様の声をバックに、僕はまた飛ぶ。

――そろそろ、飛ぶのも飽きたにゃ……。

 もう、あのバケモノの声で、僕の精神は擦り減り、ぺらっぺらの紙の様だよ。


 今度こそ、近づいてきた景色に、僕は吸い込まれた。ヒトが好む、煌びやかな部屋だ。案の定、いっぱいいるのはヒトだった。

 でもね、そこに着いたのはいいけど。普通に着地したかった。

 僕は、天井近くでぱっと放されたのだ。猫だから、このくらいの高さは余裕なはずだけど……。弾丸を撃つような早さでぽいっと捨てられたら、床に真っ逆さまだよ!?

 ずべしゃ!

 痛い。すんごく痛い……骨、折れたかも。

 一歩間違えたら、一人の女の子にぶち当たるところだったけど、その子はぎりぎりで避けたみたい。

「勘はまだ鈍ってない、っと……。良かったですよ。こんな毛玉にぶつかるとか、嫌ですし」

 うーん、僕、酷い事言われてる気が……。しかし、その子に一つ文句を言う前に、偉そうなヒトが話しかけてきた。

「お主、名は何と言う?」

「エルイにゃ」

「……エルイよ。この世界は今、危機に瀕しているのだ。この世界を救う旅に出よ!」

「いきなりだにゃ~……。一人で行くのは嫌だにゃ」

「そ、そうだ、仲間もいるぞ!」

 僕の仲間(ネコたち)とは、ついさっきお別れしたけど。王様――たぶん、偉そうだから王様――が指さした先には、不機嫌そうな女の子。……あれ、この子は。

「……まさか猫も召喚されるのですか」

 はい、声で確定! 僕に対して「毛玉」とか言いやがったあの女の子じゃん!

「ずぇえええええええったい、嫌だにゃ!」

「な、なんだと!? 転生者同士、仲良くしてくれ!」

 深ーく、お断りを入れると、王様が涙目で言ってきた。が、あの女の子が一言、

「丁重にお断りさせて頂きます」

「また丁寧にお断り!?」

「いーやーだーにゃー、どうせなら綺麗な雄猫でも連れてくるのにゃ~」

 床でじたばた。僕だって、毛玉とか呼んでくる、ヒトとは仲良くなりたくない!

「分かった、分かったから! 仲良くしなくてもいいから、話を続けさせてくれ!」

 王様が懇願してくるものだから、しぶしぶ大人しくなって立ちあがった。……周りの兵隊さんが怖い。


「ステータス、と念じれば、お主にも見れるはずだ」

――ステータス

 そう念じると、ぴょっと目の前に飛びだしてきた。なんだこれ、ヒトが使ってるぱそこん(、、、、)画面みたいだ。

 そこに載っているのは……。


名前:エルイ«♀»

HP:100

MP:100

攻撃:∞

防御:1

速度:∞

スキル

○トゥリリライケ MP20

残像が残るほど速く駆け、鎌で敵を斬る。

○テレケ MP0

飛ぶしか能の無いやつに与えられるスキル。

装備

武器:無し

体:時計、毛皮(自前)

足:無し


「にゃにこれええええええ!?」

 僕、防御が「1」しかないの!? だから、床に落ちた時死にそうだったの!?

 もう、骨は回復してるけどね! 回復の早さ、半端ないね!

 っていうかひっど! 「飛ぶしか能が無い」ってひっど!?

 毛皮は装備じゃねーし!

 ツッコミどころが満載な僕のステータス。それを見て、あの女の子――サキは、

「ぷっ……」

 口を押さえて、大爆笑してるし!?

「これは……防御が史上最弱」

「うっさいのにゃ王様のくせに!」

 腹いせに王様を軽くはたいたら、王様がまっすぐ(、、、、)壁に向かって飛んでった。……あ、僕、攻撃は∞だったね。

「きっさまあああ!」

 兵隊さん達が鬼の形相でこっちに向かってくる! 槍をこっちに向けてくる!

 僕の足に、槍がちょっとだけぶつかった。

 ばたり。


エルイ:HP0/100


「それで死ぬの!?」

「ぷっ」

 兵隊さん達が一斉に叫び、またサキが笑っていた。


エルイ:HP50/100


「ちっ……もう回復したんですね、早すぎます」

 僕は飛び起きてサキに詰め寄った。

「今の舌打ち、にゃに!? さっきから、毛玉とか、毛玉とか、失礼にゃ!」

「合ってますよね、毛玉」

「にゃあああ!」

 僕とサキは、不毛な言い争いをしながら、他の転生者達を待った。

 途中で、言葉だけでなく攻撃も飛び出してきたので、僕は王城を勝手に散策し――サキから逃げながら――、武器庫で鎌を発見したのでこっそり拝借。

「トゥリリライケえええ!」

「指銃!」

 王城が壊れかけたのは、まあ気にしなくていっか。

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