村雨咲の転生話(ゆっくり)
私は昔から勘が異常な程に発達していた。
例えば百円玉が落ちていて拾ったら100km程のスピードの野球ボールが頭上を通り過ぎたりするのは当たり前、嫌な予感がして、横断歩道の前で止まったら居眠り運転の大型トラックが通りすぎたり、嫌な予感がしたから後ろに飛び退いたら地面に魔法陣が出てきて近くに居た猫が吸い込まれていってしまったり。家のドアを開けると別世界だったり。
勿論テンプレは避けましたよ。トラックは被害者が出る前に通報しましたし、魔法陣から猫を救いだし、異世界への扉は無視して窓から移動したりしました。そんなことをしてたからでしょうか。
だけれど、流石に。
トラックに突っ込まれるのと魔法陣と異世界への扉の同時は流石に強引じゃないですかね。
嫌な予感がすると思って魔法陣を避けたら目の前にトラックが、そして足元には魔法陣が、すがるように目の前に出現した扉を開けたらそこには綺麗な草原がっ!って盛りだくさんですね!お腹いっぱいですよ!ちきしょうめっ!
こほん。ちょっと取り乱しました。自己紹介ぐらいしませんと。
私の名前は村雨咲。16歳の花の高校生です。勉強は中間、運動もそれなり、好きな物、嫌いな物、得意な事、苦手な事、何一つありません。いわゆる器用貧乏です。
ただ一つ誇れる物が有るとしたら、やっぱりこの勘、です。これがなかったら私は五回くらい死んでしまっていたかも知れません。
閉話休題。
「お主、名はなんと言う!」
「へ?あ、私?私は…サキです」
「ほう。サキとやら!では冒険の旅に出発するのだっ!」
「慎んで、お断り申し上げます」
「丁寧に断られたっ!?」
転生していきなり王様っぽい人に命令されましたが即座に拒否ります。
だってなんの説明もないのにいきなり冒険の旅って。自分のステータスもしらないのに。それに私丸腰ですよ?せめて『どうのつるぎ』位は出してくれませんかね。というか宝物庫とかあるんでしょう?伝説の剣とか貯蔵しててクリアしてから渡されるんでしょう?正直苦笑を禁じ得ませんね。本編の後に最強武器貰っても嬉しくないのですよ。
と王様に言ってみると、言ってみるものですね。色々教えてくれました。この人界が魔族に侵略されかかっていること、そのためにこの世界を救って欲しいこと、召喚があんなに強引だったのは一度避けられてムキになってやったこと、これからあと数人の勇者が来ること、装備に関しては城の宝物庫にあるものを渡すこと。
装備の話になると王様が「なんで気づいたのだ……」と言っていますが気にしないでおきましょう。これも一種のツンデレ、嬉しすぎて涙も浮かべておられます。
なんですか。私は悪者じゃないですよ?妙に近衛兵が睨んでくるのですが。
あとはとりあえずステータス載せときますか。ステータスは何か(ステータス)と念じるとホログラム的な物が出てきて驚きました。
名前:サキ(村雨 咲)«♀»
HP:100
MP:100
攻撃:24
防御:21
速度:26
スキル
○邪魔だ! MP3
(敵の攻撃が味方の攻撃より低い場合、脅して逃がす事が可能。)
○指銃
(魔力を込める程威力が上がる銃。指から発射する。)
装備
武器:無し
体:無し
足:無し
はい。ステータスについてはこのくらいです。
装備については何か金色に光る装備を貰い、ステータス画面の装備欄に追加された物を見て一言。
サキは、『銅の剣(金箔付き)』『皮
の鎧(金箔付き)』『ブーツ(金箔付き)』を手に入れた!
「…………」
「あぁっ!なんで無言で金箔を落とすのだっ!?」
うーん…毛皮のブーツのせいか金箔が中々取れない……!
訳がわかりません。ただの銅の剣と皮の鎧とブーツじゃないですか。
冗談もほどほどにしないと……って怖いです近衛兵さんリアル殺気慣れてないです。
しょうがないですね。この落とした金箔を必死に集めている大臣さんを椅子とすることで許してあげましょう。
よし、やっと金箔も落ちましたし、着て鏡を見ると、結構サマになってるじゃないですか。
ちょっと気分が良くなったので大臣を解放してあげます。腕がプルプルしてたので。
はいちょっと調子乗りました謝るので槍向けないで下さい。
じゃあとりあえず他の転生者を待つことにしましょうか。
あ、王様?椅子譲らなくていいですよ?まぁどうしてもと言うならやぶさかではありませんが。
あ、いい?やっぱり座らせてくれ?はぁ……注文が多い方ですね。
では部屋の端にもたれかかって待つとしましょうか。面白い方だといいのですが。
なんかサキがメタい