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五話 困惑・激情

 はい、何とかペースを乱さずに投稿できました。良かった……。


 さておき。では、どうぞ。

 ノゾミに連れられてやってきた、謎の廃墟。その地下に存在した廊下を、カナタは入り口で自分を出迎えた男と歩いている。ノゾミは、カナタの後ろからついてきている。


「悪かったな、こんな遅い時間に」


 男が唐突に話しかけてきたので、カナタは少々あたりの雰囲気に気圧されながらも言葉を返した。


「いえ、構いませんけど……ここって、一体?」


「さっき言わなかったか? ここはアジトだって」


 答えになっているようでなっていない男の言葉に、カナタは少し不満そうに返事をする。


「それは確かに聞きましたけど……状況が全く把握できてないんですが。あなたの名前すら聞いていませんし……」


 しかし男は、そのカナタの言葉を気にした様子もなく、言葉を返した。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。忘れてたよ、悪い。俺は、園田そのだ 春樹はるき。皆からは“司令”って呼ばれてる」


「皆?皆って……」


「着いたぞ。ここだ」


 質問しかけたカナタの言葉を遮って、春樹はひとつのドアの前で立ち止まった。ノブを回して中に入っていく春樹を追って、カナタとノゾミも中に入っていった。中に広がっていた部屋は、ドアの大きさからは想像できないほどに大きかった。しかも、部屋の奥にはさらにドアがあり、その先にも部屋、もしくは廊下が続いているようだ。しかし、その部屋には統一感というものがまったくなかった。


 部屋の中はブースで仕切られている。ガラス製かそうでないかの違いはあるようだが、かなりの数だ。ある所にはコンピューターが立ち並び、ある場所には理科室の備品にあるようなものがギッシリと詰められている。そしてその中のひとつに壁がガラス製ではない大きめの部屋があり、そこに向かっていく春樹にカナタとノゾミはついていった。多くの人々が行き交っていて、春樹を見た瞬間にすべての人間が頭を下げていく。司令と呼ばれているのは本当なんだな、と思ったのだが、それよりも自分に目を向けた人間が悉く驚いたような表情をするのが気になった。




「ここでちょっと待っててくれ。ノゾミ、来い」


「はい。ごめんね、ちょっと待ってて」


「う、うん、分かった……」


 カナタを入り口で待たせて、春樹とノゾミは中に入っていった。手持ち無沙汰になったカナタは、壁に寄りかかって周囲を見回した。といっても、自分がどのような目的で作られた部屋にいるのかも分からないので、正直なところ何がなんだかサッパリだ。


(訳が分からないなぁ……ん?)


 ざっと全体を見回していたとき、ふと気になるものがあって目を向けた。それが置いてあるガラス張りのブースに近づき、眺めてみる。


(これってあの時アスノさんが使ってたのと似てる……)


 ブース内にあってカナタの気を引いたのは、何かの台座。そこにマウントされていたのは、刀剣の柄や、槍の柄。そして弓矢などだった。しかし、そこには共通して無いものがあった。


(……刃とか鏃とか……相手を傷つけるためのものが何にもない……?)


 これじゃ武器の意味ないじゃん、と思った瞬間思い出した。妖獣に襲われてノゾミが柄を取り出したとき、血色の輝きが体から迸り、刃を形成したということを。


(……ってことは……)


 そう。これらの武器があるということは、それを扱える人間がいるということ。


(……アスノさんみたいな能力者が……他にもいる……?)


「……いや、さすがにそれは無いか……」


「なにぶつぶつ呟いてるの?」


「うわぁ!?」


 耳元で突然話しかけられて、カナタは驚いて飛び上がった。急いで後ろを振り返ると、ノゾミが若干仰け反っていた。カナタの飛び上がった勢いに圧倒されたようだ。


「あ……ご、ごめん!」


「ううん。私こそ、脅かしちゃってごめんね」


「うん……あれ? そういえば、園田さんと一緒にブースに入ってたよね。用事終わったの?」


「ううん。終わってはいないけど、君を呼びに来たの。さっきのブースまで、ついてきてくれる?」


「うん、分かった」


 カナタは踵を返し、ノゾミについて先ほどのブースに入っていった。




「どうぞ、入ってきて」


「し、失礼しま~す……」


 中でどんな人物が待っているか分からないので、緊張しながらブースの中に入っていくカナタ。中で待っていたのは、数人の少年少女たちと、司令である園田。その少年少女達はカナタの顔を見た瞬間、驚愕に目を見開いた。その内、気性の荒そうな顔立ちと雰囲気の少年が、突然カナタに詰め寄った。


「カナタ!? てめぇ、今までどこで何してやがった!?」


「う、うわわわわ!?」


 突然見ず知らずの少年に猛烈な勢いで迫られ、カナタは後ずさった。しかし少年は、それに構わずさらに詰め寄る。


「何とか言いやがれこの野郎! いきなりいなくなって連絡も取れなくなったと思ったらそ知らぬ顔して戻って来やがって! 何考えてんだテメエ、この……」


「落ち着きなさい、タイガ」


 少年に迫られて萎縮してしまったカナタを可哀想に思い、ノゾミがヒートアップしていた少年・タイガを止めた。


「落ち着けるかよ! お前だって……」


 そこまで言ってから、タイガはようやくカナタの様子に気づいた。少し自分を怖がっていて、弱々しい瞳で自分を見つめるカナタに。それを見て、タイガはようやく落ち着き、同時に困惑してノゾミに視線を向けた。


「……どういうことだ?」


「それはこれから説明するわ。とりあえず、座って」


 ノゾミに諭されるように言われたタイガは、渋々といった感じながらも自分が元々座っていた場所まで戻った。


「ごめんね、大丈夫?」


「う、うん……」


 タイガが座ったのを確認してから、ノゾミはカナタを気遣うように声をかけた。カナタは内心まだタイガのことが怖かったのだが、とりあえず大丈夫だと言っておいた。


「じゃあ、悪いんだけど、自己紹介してくれる?」


「うん、分かった」


 ノゾミに頼まれたので、とりあえず前に出るカナタ。自分をじっと見つめてくる数人の視線に若干怯えながらも、カナタは話し始めた。


「えっと……はじめまして。僕はハルカ カナタ。17歳の高校二年生です。よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げる。しかし一向に反応がないので不思議に思ってカナタが顔を上げると、信じられないものを見たような少年少女達の視線に気がついた。しかしカナタにはその理由が分からず、首を傾げる。すると、ようやくタイガが口を開いた。


「……誰、コイツ?」


 タイガが呆然としたような口調で言う。それを聞いて、


「僕、今自己紹介したよね……?」


 と、カナタは思わず呟いてしまった。そんなカナタの声が聞こえたのかどうなのか、ノゾミが助け舟を出した。


「今彼が自己紹介してくれたでしょう? 彼は、ハルカ カナタくん」


「そういうことを聞いてるんじゃねぇんだよ!」


 ノゾミに言われたタイガは、再び食って掛かるように怒鳴った。


「訳わかんねぇよ、こいつ本当に俺たちの知ってるカナタかよ!?」


 タイガの質問にノゾミはすぐには答えず、タイガ以上に混乱しているカナタに目を向け、話しかけた。


「ごめんね。訳が分からないと思うから、司令に説明してもらって。……司令、お願いします」


「おう、任せとけ。……カナタくん、ついて来てくれ」


「はい、分かりました……」


 自分に向けられている視線を気にしながらも、カナタは春樹について部屋を出て行った。




「ここだ、入ってくれ」


 カナタが春樹に連れられてきたのは、先ほどのブースのたくさんある部屋の奥にあった扉を入り、少し進んだ休憩室のような部屋だ。そこにあったインスタントのコーヒーメーカーからコーヒーを二つ入れ、片方をカナタに渡す。


「さっきは悪かったな。驚いたろ」


 春樹から渡されたコーヒーを受け取りながら、カナタは答える。


「いえ……そりゃ驚きはしましたけど、気にしてませんから」


「そりゃ助かる。ま、あいつも悪いやつじゃないからな。もし良ければ、仲良くしてやってくれ」


「えぇ、それは構いませんが」


 そう言って、カナタはコーヒーを一口飲む。その苦味を味わったカナタは、本題に入ろうと思い、気持ちを入れ替えた。


「それで、ここは一体、なんなんですか?」


 その言葉を聞いた瞬間、春樹の雰囲気が真面目なものに変わった。


「……そうだな。話すとしようか」


 そう言って、春樹は椅子に座り、カナタに向き直った。


「さて、いろいろと話さなきゃならないことは多いが、まずは君とノゾミが遭遇したモノについて、話すとしようか」


 そして、春樹は話し始めた。

 今回は少し短めです。本当はもっと先まで書こうかと思ったのですが、長くなり過ぎそうな気がしたので分けることに決めました。


 一時創作はやっぱり難しいですね。展開が全然進みません。ですが頑張りたいと思います。


 では、次でもお会いできることを願いまして。

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