二十五話 文化祭・三
はいこんにちは、月に一度の更新すら危うくなってきてしまっているDEMでございます。
さておき。どうぞ
いつも通りの面子となった四人は、シフトの都合で食事を摂っていなかった麗のためにじゃがバターの店にいる。ちなみに四人とも食べてはいるものの、カナタは朝にミケと一緒にたこ焼きを食べて以来ずっといろいろなものを食べているので、そろそろ腹具合が苦しいことになってきている。
「しかし、ミチルの写真って初めて見たけど……けっこうすごいんだな、写真って。ちょっと驚いたよ」
「そう思ってくれたなら、展示会をやった甲斐もあるってものだよ。……っと、そうだ。忘れないうちに言っとかなきゃ……この学校では“麗”って呼んでね、コードネームの”ミチル”じゃなくて」
「レイね、了解。後でどういう字なのか教えて。……でも、私も結構ビックリしたわ。たった一か所を写し出しただけで、いろんなものを伝えられるものなのね……」
「あぁ。なんか感情、というか……思いっていうのか? なんかそんな感じのが滲み出てる気がしたよ。少なくとも、ただ景色を写しただけ、っていうものには感じなかった。なんか理由とかコツってあるのか?」
なんて言ったらいいのかな、と麗は少し考えるように口に含んだジャガイモをもぐもぐし、呑み込んで考えを整理してから話し出した。
「私は、カメラっていうのは世界を傷つけずに切り取る優しいハサミだと思ってるの。大きすぎる絵画をトリミングする……とか、新聞の気に入った記事を切り抜く……って感じかな? だから私が写真を撮るときは、私が美しいと思った“景色”という名の絵画を、一番際立たせてくれるところを切り取るように、シャッターを切るんだ」
「なるほど……ハサミ、か……」
そういう風に考えたことはなかったものの、喩が分かりやすかったためになるほど、という思いを抱く三人。そして、それを聞いてカナタはさらに麗に聞いてみたくなって尋ねた。
「……じゃあ、麗さんが撮りたいと思う風景ってどんなの?」
「うーん、そうだね……特に何かに限定されてるわけじゃないけど……大抵は空とか鳥とかかな」
「そういやあの写真もそうだったな」
「うん。理由はわからないけど、なんだか好きで。……さて、そろそろ行こうか」
麗が話し終えたと同時にちょうど四人とも食べ終わり、麗がパンフレットを取り出した。
「……さて、最初な訳だけど、どこ行く?」
「そうね……麗、ちょっとパンフ見せて」
と、麗と叶はどこに行くのか相談を始める。パンフを見つつ、タイムテーブルがどうの場所がどうのと相談している。そして、それをただ見ていることしかできない男二人。
「……タイガくん、どっか行きたいところある?」
「ぶっちゃけパンフを見ても何があるのかよく分からん。ここは女子に任せることにするさ。……あ、妹から土産持ってこいって言われてたっけ。けど文化祭の土産って……どんなもんがいいと思う?」
「おみやげねぇ……小物売るようなクラスなんかあったかな……」
「じゃあここにしましょうよ、ちょうど良さそうなところが見つかったわ」
彰の言葉を聞いていた叶がパンフレットの一点を指さして見せ、カナタと彰はそれを覗き込む。そこには、“スーパー縁日へいらっしゃい! ポイントが高い方には景品も!”と書かれていた。
ということで四人がやってきたのは“スーパー縁日”なる場所。パンフレットの説明文によれば、たくさんのミニゲームを楽しむことができる出し物らしい。
「どこのどの辺がスーパーなんだろうな?」
「名前だけ聞くと、なんか銭湯みたいよね」
そんなことを言い合いつつ、受付までやってきた四人は、係員から手のひらくらいの大きさのカードを渡された。
「このスーパー縁日は得点制になっています。高得点であるほどゲーム終了時にお渡しする景品が豪華なものになりますので、頑張ってください」
ということらしい。
1種目目、輪投げ。全5回中、得点はカナタ2点、彰0点、麗4点、叶2点。
「ゼロって何よタイガ!? あんたってホントに投げる系ダメね……」
「ほっとけ……」
2種目目、ボーリング。2メートルほど先に、プラスチック製のピンが十本立っている。倒すのに用いるのは当然ながら本物のボーリングのボールではなく、バレーボールだ。
ここでの得点は、倒したピンの数につき1点。ここでの得点はそれぞれ、カナタ9点、彰5点、麗6点、叶9点。
「結構接戦だね」
「タイガくん、とりあえずポイント取れてよかったね……」
「転がすだけならまだマシで良かったぜ……さて、次はなんだろうな?」
「えーっと……あ、あっちみたいよ」
3種目目、カードめくり。全10枚のカードをめくっていき、合わせることができた枚数分の得点を獲得することができる。
ここで意外にも彰が抜群の勘を発揮し、10枚すべてを合わせて満点を獲得。カナタ6点、麗4点、叶4点。
次にチャレンジするのは、ラストにしてこのクラスの出し物のメインである射的。しかも射的と言いつつ、使用するのは通常のコルク弾を用いたライフルではなくなんと弓だ。もちろん本物の矢そのままではなく先端はマグネットになっていて、狙う的にも磁石が張られているようだ。まずは、カナタと彰が挑戦する。が、彰は沈んだ表情でため息を吐いた。
「……今までので分かったろうけど、俺……射ったり投げたりはどんなジャンルでもからっきしなんだよな……カナタは?」
「僕はまぁ……ライフルなら平均的かな? でも、弓は初挑戦だね……」
と言いつつ、弓に矢を番える二人。ルールは簡単。全4本の矢を、離れている的を狙って、放つ。矢が当たった場所に応じて、全体のポイントに加算されていく仕組みだ。
まぁともかくやってみよう、ということになり、とりあえず的に向かって、カナタが矢を放った!
びみょ~ん
……という間抜けな音をさせて、カナタの放った矢は的の大幅に手前の床に落下した。
「ははは! いや、それはねぇだろ……」
みょ~ん
「「……ムズッ!!!」」
二人の放った矢は、双方とも的に届くことなく、情けない音をさせながら失速して床に落下した。それを見て、叶は爆笑し、麗は苦笑する。
「あはははは! 2人してへったくそ~!」
「いや、お前やってみろって! ぜってぇ難しいから!」
「2人とも、力みすぎ。もう少し力を抜いて……」
などと会話している間にも2人はみるみる矢の残数を減らし、とうとう。
「「……一発も当てられなかった……」」
的に命中させる事すらできず、とぼとぼと帰ってきた。次に、女性陣2人が挑戦する。
「……とはいえ、私も自信なくなってきたわ……ミ、じゃなかった。麗、お手本見せてくれない?」
「うん、いいよ」
叶の希望を快諾し、麗がさすがの動きでなめらかに弓に矢を番え、構える。そして構え終えた瞬間、間髪入れずに、
ズバァン!!
「「「……さすが……」」」
凄まじい音を響かせ、的の中心に矢を命中させた麗に、三人は同時にボソッと呟いた。が、驚きはこれでは終わらず。
パンッ! パンッ!
スッパァン!!
「……うそ……」
横にいた得点係の男子が思わず呟き、三人は唖然としていた。麗がほとんど間を空けずに4本すべての矢を放ち、そしてそのすべてを正確に中心に当てたからだ。
そして、一般人からすれば(どころか弓道部の人間にとってさえ)凄まじい離れ業をやってのけた張本人はと言えば。
「……やった♪」
……と、のんき小さくにガッツポーズしていたのだった……。
「こんな感じ。分かった?」
「分かるわけないでしょ!? 速すぎてサッパリ見えなかったわよ!!」
そしてのんびりした麗の言葉に、叶の盛大なツッコミが炸裂したのだった……
当然、叶は麗ほどうまく射ることができなかった。が、少なくとも1本は命中させることができたので、男二人がさらに落ち込んだのはまた別の話。
この射的の結果でも分かる通り、四人の中で……どころか今までプレーした人たちに麗が大差をつけて最高得点。最上の景品である巨大なおかし袋詰めをゲットした。
彰はなんとかカードめくりで巻き返したおかげでそこそこの点数であり、カナタ、叶と同じく学校のマークが入った缶バッジをゲット。土産ものとしては微妙だが……
「……ま、いーだろ」
ということで彰は納得し、妹への土産を手にできてホッと胸を撫で下ろしたのであった。
この後も彼らはいくつかの出し物を共に回って楽しい時間を過ごしたのだが……それを詳しく描写するのは、次の機会に譲るとしよう。
なんで次に譲るかって? 正直に言おう。
……思いつかないからだよ!!!
はいほんとすいませんゴメンナサイ。ぶっちゃければネタ切れです。まぁ遊び回ですし、文化祭編はこれで終わりとさせていただきます。もし思いついたら割り込み投稿するかもしれませんが。
次からも引き続いて連続ものです。次回、修学旅行! ……ってあれ!? 今気づいたけど既に漢字四文字だ!? じ、次回以降のサブタイトルどうしよ……
……まぁいいや。どうにかします。では、次でもお会いできることを願いまして。