二十四話 文化祭・二
わーい、とうとう一定期間更新してませんよの文字が出ちまったぜチクショウ……反省しねぇと……
結局、考えた結果文化祭編は思い浮かんでる分までは投稿することにしました。では、どうぞ。
(し、渋い趣味してるなぁ……)
と、驚いているカナタ。彼が直子の最初のリクエストに応えてやってきたのは、まさかの茶道部。作法など毛ほども知らないカナタは冷や汗をかきつつ、直子のすることを必死で真似している。まぁもっとも、表面上は平静を装っているが、内心では直子も……
(し、しまった。勢いで選んでしまったけど、さすがにこの選択は逸まったか……!?)
と、テンパっていたりするのだが。
ちなみにミケとは校舎に入る前に別れた。……別れ際に惜しむような声でにゃーにゃー泣かれて(おそらく誤字ではない)しまったが。
そしてその部室を出た彼らを待っていたのは、当然……
「痛たたた……あ、足が……しっ……痺れた……!」
「めっ……面目ない……」
長時間の正座による足の痺れによる痛みだった。相当な痛みらしく、二人とも数歩歩んだだけで足が止まってしまっている。
「……ダメだ。あ、歩けない……」
「そこのベンチに座ろう……イタタタ……」
と悶絶しながら、二人はベンチに座って一旦落ち着く。
「ふぅ、やれやれ……すまなかったね、いきなりとんでもないのを選んじゃって……」
「いやまぁ、出された抹茶自体はおいしかったし。なかなかだったよ」
「そうかい? そう言ってもらえると安心だけど……」
「けど、随分と渋い趣味してるんだね」
「私の祖母の影響でね。昔から家に遊びに行く度にいろいろと教わっていたから、ハマってしまって。……けど、しばらく行ってなかったから鈍ったかな……この程度で痺れるなんて……」
う〜痛い、と足をさする直子を見て、カナタは小さく笑う。そして彼も、顔をしかめて足をさする。
「なるほど、そんな理由が……いてて……けど、確かに様になってたよね。かっこよかった」
「……そ、そう」
いきなり不意打ちで褒められて、若干顔を赤くして口ごもる直子。残念ながらカナタに、それに気づいた様子はなかったが。
「じゃ、今度は僕のリクエストに付き合ってもらおうかな」
ともかく。気を取り直して、カナタがそう切り出した。
「もちろんだよ。どこだい?」
「美術部」
(……これはまた、意外な……)
絵画、特に風景画を見て満足そうなカナタを見て、直子はこっそりとそう思った。
(やっぱいいなぁ、水彩画は……う〜ん、渋さに賭けちゃ、僕も直子さんのこと言えないかも……)
と、心中苦笑いするカナタ。しかしその後も直子とともに、絵画だけではなく陶器や小物なども一通り見て回るのであった。その様子を、セリフのみのダイジェストでお送りしよう。
「ビンの中に……船?」
「ほう、ボトルシップだね。しかもこの緻密さとは、すごい人もいたものだ……」
「へぇ、ボトルシップって言うんだ……どうやって作ったんだろう……」
「え〜っと確か、折り畳んでおいてビンの中で引き起こすとか、バラしておいた船体を中で結合するとか聞いたことがあるような……」
「さすが、物知りだね」
「この湯呑み、釉薬がすごくきれいに塗られてるね……」
「確かに。でも、私はこちらも好きかな。所々にある釉薬の偏ったところが、ベースの紺色の中で模様のようになっている。偶然だろうけれど、いやはや芸術とは興味深い……」
「確かにそう言われてみると……面白いね、いろんな見方ができる。……ところで、こっちの抹茶茶碗……色合いはいいんだけ、ど……」
「うん……この浅さでは……」
「「……灰皿……?」」
……と、こうしてなんだかんだで楽しい時間を過ごすのであった。
「……さて、そろそろ時間かな?」
美術部の後に直子と共にいくつかの教室を回ったカナタ。壁に掛けてある時計を見て彼が呟いたことに気付き、直子が尋ねた。
「そろそろ来るのかい? 友達」
「うん、そのはず……」
とカナタが答えた瞬間、カナタの携帯から着信を知らせるメロディーが流れた。確認すると、まさに今話題にあがっていた人物からだった。
“今校門の前。ノゾミも一緒だ”
「どうやら、その友達からみたいだね」
「うん。ちょうど着いたって」
「じゃ、私はここで失礼しようかな」
そう言って、直子はカナタから一歩分離れた。
「久しぶりに会うんだろう? 前の学校の友達と。なら、一緒に行くなんて野暮な真似はできないさ」
笑って言う直子に、カナタはなんだか申し訳なくなって謝った。
「……なんか、ごめんね。気を使わせちゃって……」
「構わないさ、気にしないで。じゃあね」
小さく手を振った後去っていく直子に、カナタはさらに気まずい思いを抱く。それは、これから訪ねてくる友人が、転校前の友達ではないことによるものだった。
(転校前、か……実は全然覚えてないんだけどな……っと、いけないいけない。早く校門行かなきゃ)
一瞬脇道に逸れかけた思考を軌道修正し、カナタは彰たちの待つ校門へと急いだ。
「……お、来た来た。おう、カナタ! こっちだ!」
自分を呼ぶ声の方に顔を向けると、手を振っている彰と、微笑している叶がいた。
「やぁ。時間ジャストだね」
「まぁな。夜の仕事からそんなに時間が経ってるわけでもねぇし」
「まぁ、来る途中でタイガと合流することになるとは予想外だったけどね」
肩をすくめる叶に、カナタは少々驚いた表情を浮かべた。
「あれ、校門で会った訳じゃなかったんだ?」
「うん。歩いてたら、なんかキョロキョロしてる不審人物がいたんだけど、それがタイガでさ。なんとこの分かりやすい道で迷ったらしいのよ」
「しょうがねぇだろ!? 場所は昨日調べただけだし、全然来たことない方面だったんだから……」
「タイガくん……さすがの僕も、バス通りのすぐ脇で迷うのはどうかと思うよ……」
ちくしょう、とヘコむ彰に二人は苦笑。が、すぐに彰もつられて笑い、まずは食事にしようと出店の間を歩き始めた。
「あぁ、そう言えばさ」
三人で出店の唐揚げを摘んでいるとき、カナタがそう切り出してきた。
「ん? どした?」
「この学校に、ミチルさんもいるって知ってる?」
「え!?」
「嘘!?」
仰天している二人を見て、やっぱりそうか、と頷くカナタ。
「僕も最初ミチルさんを見たときはそりゃ驚いてさ。まぁ当然ミチルさんもビックリしてたけど」
「そりゃそうだ……俺らがビックリするくらいだもんな」
「偶然というにはでき過ぎてるレベルね……あ、でも確かに注意すれば微かにミチルの魔洸の気配が……」
ひとしきり驚いた後、叶がいたずらを思いついたような表情でカナタに話しかけた。
「ねぇ、ミチルって今どこにいるの?」
「え? 自分の部活にいるはずだけど……」
「あぁ、写真部だっけ? ……だったらさ、これから行っておどかさない?」
「お、面白そうだな。どんなリアクション返してくれるやら」
叶の提案に彰ものっかり、カナタもちょっと面白そうだ、と同意した。そして三人は、そうとは知らない麗のもとへ向かうのであった。
カナタの案内で写真部に辿り着き、入る。
「あ、こんにちは……」
「やほー」
入り口で、ちょうどよく受付で笑顔で出迎えてくれた麗だったが、叶の顔を見た瞬間フリーズした。が、すぐに持ち直し、慌てて叶に向き直った。
「あっ、あれ!? ノゾミちゃん!? ……え、タイガくんも!?」
「ういっす」
が、タイガがいたことによって、さらに麗の驚きが大きくなる。
「なっ、なんで!?」
「「遊びに来た」」
「ハモられた!?」
元々慌てんぼうな性格な上に状況が状況なので、麗は混乱を極めてあわあわしていき、面白いリアクションを見られて満足した顔の三人。数秒間その状態だったが、隣にいた後輩の「霧生先輩、落ち着いてください! お友達が困られてますから!」という声でようやく落ち着きを取り戻し、大きく深呼吸した。
「なんかビックリさせちゃって、ゴメンね……」
「いや、カナタから同じ学校だって聞いたもんだからさ。俺たちがせっかくだから会いたいって言ったんだ。悪い」
想像以上のリアクションを返してくれたことに満足したら、今度は罪悪感が沸いてきて二人は麗に謝った。が、麗は一度大きく息を吐いて気を落ち着けた後、笑って首を振った。
「あぁ、そういうことか……うん。ビックリしたけど、もう大丈夫だよ」
そう言って、麗は三枚のそれぞれ違う色の色紙を、三人に手渡した。
「では、これから部屋を回ってもらいます。それぞれの写真の前に封筒がありますので、三番目に気に入った写真には黄色、二番目には青、そして一番には赤の色紙を入れてください」
「人気投票、ってことか?」
「そんなところ。……ではごゆっくりお楽しみください」
と言って、麗は隣にいる後輩と一緒に頭を下げた。
三人一緒だとじっくり鑑賞しにくいので、別々に回ることにして三人は一旦分かれた。カナタは写真の展示を見るのは初めてだったが、それぞれに良さがあってかなり楽しんでいた。
(すごいな……当たり前だけど、同じ空でも撮る人によってどれも雰囲気が微妙に違う……)
例えば同じ夕暮れを撮っていたとしても、太陽の角度や雲の量、形などがそれぞれの個性を醸し出している。それに感心しつつ、ふと一つの写真が目に留まり、カナタは足を止めた。
(これは……また、不思議な……)
どこかの神社の写真だろうか。いくつもの鳥居が並び、先が見えないほどになっている。その道には、和装の人物。後ろ姿のために性別は分かりにくいが、髪の長さと体格からして女のように見える。
(“不安”、か……陰影がついて、たしかにちょっと怖いな……)
タイトルに納得し、雰囲気が気に入ったので後で色紙を入れに来ようと思うカナタ。そして、続きを見ていく。歩いていくと、動物が被写体になっているコーナーにやってきた。その中の一つにカナタは興味を示し、眺めた。猫が人間の足の上で丸まり、気持ちよさそうに眠っている写真だ。
(この猫……もしかして、ミケ? ……え、ちょ。てことはこの足って、もしかして僕!? い、いつの間に……)
知らないうちに被写体になっていたことに顔を引きつらせるカナタだったが、しかしその写真の雰囲気は好きだったので、黄色の色紙を入れた。ちなみにタイトルはそのまま、“日向ぼっこ”であった。
さて、とカナタは手の中にある色紙を入れる最後の写真を決めるべく、再び歩き始めた。既に神社の写真に入れることは決定しているものの、もう一つがどうしても見つからない。その後もいくつか写真を見たものの、ピンとくるものがない。
と、そこでふとカナタは気付く。
(……あれ、そういえば麗さんの写真ってどれ……?)
と思い角を曲がった瞬間、一枚の写真が目に飛び込んできてカナタは思わず足を止めた。
「わぁ……」
思わず呟いてしまうほど、その写真は美しかった。夕暮れの空に飛ぶカモメ。端的に表現してしまえばそれだけだが、そのそれぞれがどちらも素晴らしかった。
まず空は、ほとんど雲のない快晴と言っていい空模様。そしてその色はただ夕焼けの橙色ではなく、太陽がほとんど沈んでいるせいで上部が青く、下に行くにつれて下に行くにつれて赤くなっている。その色の移り変わりが、まるで虹が出ているかのような色彩を放っていた。
そしてその中を飛ぶカモメ。太陽に向かって飛ぶその姿は、シルエットになっていてカモメそのものは黒く写っている。が、太陽に向かって真っ直ぐに飛んでいるので、カモメの周囲に皆既日食のように太陽の光が輝いていた。
(すごい……本当に美しい……)
タイトルは何だろう、と思ってカナタは写真の下のプレートを見た。
「光の翼」霧生 麗
「これが……麗さんの……」
すごいな麗さん、と思いつつ、カナタはプレート下の封筒に赤の色紙を入れた。一つ頷き、そしてカナタは先ほどの神社の写真に最後の色紙を入れに行った。
周り終わって三人そろって出口まで行くと、麗が出口で待っていた。
「ありがとうございました。……どうだった?」
「なかなか楽しめたよ。来てよかった」
「なら良かった。ねぇ、この後一緒に行ってもいい? ちょうどシフト時間終わりなの」
「おぉ、そりゃいいな。んじゃ、行こうぜ」
麗は頷き、いつも通りの面子となった四人はそろって歩き出した。
申し訳ありません……定期試験が終わっても忙しくてなかなか更新できませんでした……長期休暇に入った今でも忙しいんですが。
早く過去編書きてぇ! なんでこんなに書きたいんだろ……理由はわからないですけど、頑張るぜ! ……やばい、最近がんばるさぎになってきてる……マジで反省しよ……
ちなみに、陶器の話は実話です。私が小学校の頃に作ったものなんですが……ホント、湯呑みはうまくいったのに抹茶茶碗が灰皿にしか見えなくて。もうちょっと深く掘るべきだった……試しに引っ張り出してみて思い出したんですが、実際に抹茶を点てて(漢字あってるかな)みたら、縁スレスレでした。今はホコリ被ってます。
申し訳ありません、時間がないもので今回はここで。では、次でもお会いできることを願いまして。