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二十一話 報告・考察

 け、結局夏休み中に投稿できたのが座談会だけになってしまった……申し訳ない。久々の本編です。どうぞ。

 本部にて、四人から例の妖獣についての報告を受けた春樹は驚きを隠せないでいた。


「……青い火球、だと?」


「司令でもご存知ありませんか?」


「当たり前だ。ミチルも言ったとおり、記録室でもそんな資料は見たことがない。……明らかに異常だな」


 そう言って、春樹は椅子に沈み込んで小さく何かをつぶやきながら思案を始める。


「……人型……擬態……火球……どういうことだ……」


 しばらくそうしていた後、春樹は考えを纏めながらカナタたちに向き直った。


「正直なところ、最近の妖獣は異常だ。ここまで来ると……さすがにもう、自然進化によって起きた出来事だとは考えにくい」


 それを聞いて、カナタたちは大いに驚いた。


「……この一連の事件には、何か理由があるって言うんですか……!?」


「もはやそう考えないほうが不自然だろう。未知の力を使う妖獣が現れるにしても、自然発生にしては間隔が短すぎる。はっきり言えば、でき過ぎてる」


 と、そこで一旦言葉を切り、春樹はもう一度考え込む。それを見て、カナタはふとあることを思い出して春樹に言った。


「あの、今思い出したことがあるんですけど……」


「ん、なんだ?」


 春樹に促され、カナタは頭の中でその時のことを思い出しながら言った。


「今回僕たちが戦った、あの妖獣……僕が組み付いた時に、妙なことを言ってたんです。“やっと、出てきた。戦え”って……」


「……何だと……!?」


 それを聞いたのはタイガたちも始めてだったため、彼らも同時に驚愕していた。


「……じゃあ、あの妖獣は……カナタくんを狙って襲ってきたってこと……!?」


「……でも、そう考えれば納得できることもある」


 一瞬早くショックから立ち直ったタイガが呟くと、皆の視線が彼の方を向いた。


「ちょっと、カナタには悪い言い方になるけど……俺たちが変な妖獣と遭遇する確率が高くなったのは、“カナタ”と再会してからだ。だから、今回の変な妖獣の狙いがカナタだった、ってのは……まぁ、納得できないこともないかな、ってさ」


 それを聞いた一同は、一様に少し納得したような表情になる。やはりカナタの表情は明るくはない。が、分析は冷静に行う。


「そう、ですね……確かに今思えば、あの合成獣……妙に僕に突っかかって来てましたし……」


「確かに。あいつあの時、確かにカナタの記憶を喰った瞬間に明らかに安心して、気を抜いてた。その理由が、目的を果たした安心感から来ていたとしたら……」


「だが、もしこの仮定が全て真実であったとして……その理由は、何だ ?あの妖獣を送り込んできた、“敵”の目的は?」


 次々といろいろな意見が飛び交ったが、春樹がふと呟いた言葉でカナタ達は一様に押し黙った。そして、春樹は考えを区切るように一度頷き、カナタたちに向き直った。


「現時点では、判断材料が少なすぎるな。これ以上の推測は時間の無駄だ。とにかく、この件に関しては了解した。全体会でも話すが、その時にはお前たちの口から報告してもらうことになると思う。その時は頼むぞ」


「「「「はい」」」」




 報告は済んだものの、学校をズル休みしているため家に帰るわけにもいかず、時間潰しのためにカナタはタイガたちと共にトレーニングセンターに来ていた。今はバイクのマシンで、ペダルを漕いでいる。


「はぁ……はぁ……」


 全身から大量の汗をかきながらペダルを漕ぐカナタ。が、正直その間は暇なので、カナタはやはり考えてしまう。


(僕が……“カナタ”が殲士になってから、まだ少ししか経ってないけど、その間に僕が遭遇した妖獣は、僕以外の殲士にとって妙なやつらばかりだった……)




(加えて、あの時仕留め損ねた合成獣は、僕の記憶を狙って襲ってきた……)




(そして、今回の妖獣……なんとか倒せたは良いけど、強かったしやっぱり僕狙いだった……)




(今までずっと……普通の殲士にとってはおかしな奴ばかりと戦ってきて……もしもその狙いが、全て僕だったとするなら……)




「自分は一体なんなんだ、とか考えてんのか?」


「え?」


 突然声が聞こえてきてカナタがそちらに顔を向けると、タイガがカナタのマシンの表示を覗き込んでいた。


「心拍数、もの凄いことになってんぞ。ペダル漕ぐの速すぎ」


「あ……」


 タイガに言われてカナタがモニターを見ると、心拍数が160を越えていた。どうやら考え事をしていて、無意識に足の回転速度が上がっていたらしい。それを自覚した瞬間、カナタは猛烈な息切れに襲われた。


「はぁっ……はぁっ……はっ……!」


「はいはい、急に止まらないでクールダウンしような~」


 いきなり苦しみ出したカナタを見て、しかしタイガは落ち着いてパネルの中にある“クールダウン”のボタンを押した。途端に、カナタの漕いでいたペダルが軽くなる。


「う、うわわ!? っとっと……」


 いきなり重さが減ったペダルにカナタは驚いてつんのめる。が、すぐに持ち直し、体勢を立て直す。


「タ、タイガくん! ボタン押す前になんか言ってよ! こけるかと思ったじゃん!」


「サドルに座ってるし、ハンドル握ってるんだからこける訳ねぇじゃん」


 カナタの文句を軽く聞き流し、タイガはバイクの近くにあるバタフライマシンと呼ばれるマシンに腰掛け、腕を前後運動させ始めた。


「ま、考えちまうのも無理ないがな……というか、当然だけどな……」


 でもな、と前おいて、タイガは続けた。


「何度だって言うが、お前は俺たちの仲間だ。お前が何者かなんてサッパリ分かりゃしねぇが、それでもお前は“カナタ”だ。心配すんな」


「うん……そりゃ、分かってるつもりなんだけどさ……やっぱり、ね……考えるのを止めることはできないよ……」


「考えるな、って言ってるんじゃないの。気にするなって言いたいのよ、タイガは」


 そこに、一汗かいたらしいノゾミがやってきた。その後ろには、同じく首にかけたタオルで汗を拭うミチルの姿がある。


「自分が何者か、どうして、何のために生きるのかっていうのは、みんな必ず考えることだから。別におかしなことじゃないよ。その形が、カナタくんはちょっと特殊だけど……」


「実際、私も考えたことあるわ。なんで、生きるのか。何のために、存在するのか、って。……自分の傷を自分で抉るような、辛い作業だったけどね……」


 ノゾミが、そう言いながら少し暗い表情を見せる。が、それを振り払うように顔を上げ、カナタを見つめて言った。


「一応の区切りはつけたけど、まだ明確な答えは出せてない。ううん、出せるようなものじゃないのかもしれない。あなたの場合、他の人にはない問題だけど……でもだからこそ、あなたにしか出せない答えがあるはずよ」


「……僕にしか出せない答え、か……」


 カナタは俯いて、小さく呟いた。その頭の中では、もう既に考察が始まっているのかもしれない。その様子を見ながら、ミチルが先を続けた。


「うん。だからこそ、自分だけで抱え込まないで欲しいんだ。答えがないということは、逆に言えば答えはいくつもあるかもしれない。だから、もし考えに詰まったなら……私たちにも一緒に考えさせて欲しい」


「……そっか。……うん、そうかもね……」


カナタはしばし目を伏せ、そしてタイガたち全員の顔を見回しながら、微笑んで言った。


「ありがとう。……みんなが言ってくれたみたいに、僕は考え続けるよ。だから、もし僕が迷ってしまったら……助けて、ね」


 カナタの言葉を聞いた三人は、笑って、大きく頷いた。




「エー、エー……equipment」


「テ、テ、talent」


「うわ、またt!? ……えーっと、trunk」


「know」


「だから名詞縛りだって言ってんでしょうが、タイガ」


「あ、悪い。んじゃ……knight」


「teacher」


 マシンによるトレーニングを終えたカナタたちは、整理運動がてら二人一組で柔軟体操をしていた。その間黙っているのもなんなので、英語でしりとりをしていたのだ。名詞縛りで。


「ring」


「glove……は、もう言ったか。じゃあ、green」


「n、nだろ……novイタタタタッ!! カナタ! 痛ぇよ!!」


「タイガくん、体かった! もうちょっと柔軟真剣にやった方が良いんじゃない?」


「放っとけ! イテテテテ! だから痛いって! ちったぁ加減してくれよ!?」


 タイガが抗議するが、カナタは耳を貸さずにグイグイとタイガの背中を遠慮なく押す。タイガは痛みで悶絶しているが、カナタは楽しそうに笑いながら無視している。その様子を見ていたミチルとノゾミは、男性陣とは正反対にバレリーナ顔負けの柔軟性を見せつつストレッチしながら笑っていた。


「……カナタくん、少しは気晴らしになったみたいだね」


「えぇ。目の前で人が死んだ後って、普通そう簡単には平常心に戻れないけど……特にカナタの場合、それを見たのが殲士になった後だったし……」


「……しかも、それを見てショックを受けてしまったとしても……殲士であることを選んだなら、それから逃れることはできない。だからこそ、私たちはそれを受け流す術を知らなければならない」


「そして決して忘れてはならないことは、“受け流す”だけであって、絶対に”慣れて“はならない、ということ。人が死ぬということは、決して当たり前な事なんかじゃない、って……」


「…………」


 お互いに思うところがあるのか、二人とも黙り込んで上の空でトレーニングをする。が、タイガの“ギャアアアア!!”という苦悶の悲鳴を聞き、我に返る二人。


「まったく、なんでこんな暗い話になってるのよ。論点ずれそうだし、止めましょ」


「あはは。そうだね。……それにしても、カナタ君意外と強引だね~」


「ま、あの程度で悲鳴上げてるようじゃ、硬いタイガが悪いでしょうけどね」


「確かに。長い鎌振り回してるんだから、ある程度の柔軟性は必要なのにね」


「……良く考えたら、私たちの中で戦い方的に一番柔軟性関係ないのってあなたよね」


「一応、接近されたときのために肉弾戦の練習はしてるじゃない、一緒に」


「そうだけど。この後久しぶりにやる? ……トレーニングの後はよしといた方がいっか」


「そだね。結構筋力トレーニングもしたし、筋肉痛にでもなったら困るよ」


 彼らは毎晩、必ず出動しなければならない。そのため、無理なトレーニングは控えるようにしている。訓練中の怪我が原因で任務に支障をきたすなど、愚行以外の何物でもないからだ。


「……で、そろそろカナタくん止める?」


「……もうちょっと放っておかない? カナタの気晴らしになってるみたいだし」


「……いいのかな……」


「見てる私も面白いし」


「やっぱりそういう理由もあるんだ!?」


 ミチルの視線の先では、タイガがカナタに関節技じみた柔軟体操を強いられ、“ギブ! ギブだってば! オイ!”と、叫びまくっていた。


「……タイガくん、大丈夫かな……」


「大丈夫でしょ、タイガだし」


 心配そうなミチルとは対照的に、その様子をサラッと流したノゾミは、首をコキコキと鳴らして息を吐いた。

 今回はここまでです。……えーっと、言い訳させて下さい。座談会投稿した後、バイトで八月いっぱい忙しかったんです。その後、なんで九月中に投稿できなかったかというと……




 風邪引いて体調崩してました!! 一週間ずっと!


 自分でも信じられませんよ、ずっと熱は下がんねぇわ、鼻水ズルズルだわ、頭痛てぇわ……。


 まぁ、その後は普通に勉強したり遊んでたり(座談会の宣言通りカナタくんにしばかれましたが)してたんですけどね。


 あ、まったく関係ない話ですけど、その期間にウルトラマンギンガの映画を見に行ってきました。ギネスの認定式を直に見てこられましたよ! 本当に行って良かったです!


 ……関係ない話しちゃいましたが、今回はここで。では、次でもお会いできることを願いまして。

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