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十七話 降雨・断片

 ほぼ二ヶ月ぶりの投稿になってしまいました本当にごめんなさい!!! 


 十七話です。どうぞ。

「臨時検査の結果、どうだった?」


「やっぱり特に異常は見当たらないって。正直、お手上げだってさ」


 ミチルの質問に、カナタは肩をすくめて答えた。それを聞いて、ミチルは残念そうにする。


「そっか……どうしてなんだろうね……」


「もう受け入れるしかないよ。専門家が分からない事が、僕たちに分かるとも思えないし」


 カナタが落胆しているのではないかと心配していたミチルだったが、当の本人の表情に不安はなく、どこかサッパリとした顔をしていた。そこでミチルもこれ以上蒸し返すのも良くないかと思い、小さく笑って話題を変えるように言った。


「そっか。……ところで、中間テストどうだった?」


「まぁまぁ、だったかな。だいたいうまくできたんだけど、数学で難しい問題があってさ……」


「あ、分かった。あの関数の問題でしょ? 私もできなかったんだ〜……」


「あれ、ちょっと図が描きにくいよね? どっちかと言うと国語の問題みたいな……」


 などと、楽しげに話しながら。二人は、夜の道を歩いていく。




 一方。タイガとノゾミは。


「行ったぞ! 止められるか!?」


「一旦距離取らなきゃ無理よ! ちょうど良いわ。反対同士にいるし、次あいつが動いたら挟みましょう!」


「分かった!」


 ムカデのような外見の妖獣と交戦中だった。妖獣を一本道に誘い込み、前方からノゾミが、後方からタイガが襲いかかる。彼らの武具が一際輝きを増し、


「「滅光!!」」


 二人同時に叫び、妖獣を前後から切り裂いた。妖獣は数回抗うように蠢いたもののすぐに力尽き、倒れ、青い光の粒子に分解されて消えていった。


「……ふぅ。何とかなったか」


 タイガが呟いたのにノゾミも頷き、二人は同時に武具の魔洸を消し去った。




 現世に復帰し、タイガは安心したように息を吐いた。


「やれやれ。あの図体であのスピードとかマジで反則だろ……」


「まったくね。あれで手数が多かったら応援頼まなきゃいけないところだったわよ……」


「ま、生き残れて良かったな、お互いに」


「そうね」


言って、ノゾミが東の空を見上げると、少し明るくなってきていた。それを見て取り、タイガが言った。


「さてと。そろそろカナタ達と合流するか」


「そうね。もうすぐ夜が明けるし、今日はもう出ないでしょう」


 そして二人は、もはや待ち合わせ場所として固定されてしまっている、公園へと歩き出した。道中、タイガが袋に入れて肩に掛けている自身の武具を見ながら、ふと呟いた。


「そろそろメンテの頃合いかな……お前の方はどうだ?」


「……私の方は、まだ大丈夫そうね。今週末辺りメンテしてもらえば?」


 ノゾミは自分の武具を一瞥して、タイガに返した。それを聞いて、タイガは少し考える。


「そうだなぁ……でもなんか最近メンテスタッフが忙しそうなんだよな。確かソラさんもメンテ頼んだって言ってたし」


「あ~……じゃあまだ待った方がいいかもね。ソラさんの武具、メンテに時間かかるから……」


「だな。うし! じゃあ来週頼もう」


 そう決め、タイガが勢い良く言って空を見上げたとき、頬にポツリと来るものがあった。


「ん?……ヤベ、雨だ! 急ぐぞ、ノゾミ!」


「えぇ! 学校行く前にずぶ濡れはごめんだしね!」


 二人は雨に追い立てられるように走り出した。そしてそれは、カナタ達も例外ではなく……


「うは~~~~っ!?」


「きゃ~~~~っ!?」


 というかむしろ、二人の方が酷い目に遭っていた。


「なんでいきなりこんな土砂降りに見舞われるの!?」


「分かんないよ! もしかしてカナタくんって雨男!?」


「違うよ!」


 そんなことを言い合いつつ二人が走っていると、前方に駄菓子屋が見えてきた。といっても当然営業などしていないが、しかし幸いにもそこには屋根があった。


「助かった! あそこで雨宿りしよう!」


「うん!」


 二人頷き、並んで屋根の下に入る。一通り水気を払った後、少し待っても止まない雨を見て、ミチルが言った。


「すぐには止みそうもないね……学校行くまでには止むといいんだけど……」


「うん……あ、もう合流しないで直接学校行ったほうがいいだろうから、タイガ君たちに連絡しちゃおうか?」


「そうだね。お願い」


 頷き、カナタはスーツの襟に手をやった。


「タイガ君、聞こえる?」


『おう! すげぇ雨だな! ……っは! なんだ、解散の提案か!?』


 雨音の向こうから、タイガの声が聞こえてくる。どうやら時間差で、タイガたちのいる場所も土砂降りになったらしい。


「うん。僕とミチルさんは雨宿りしてるんだけど……タイガくん達、してないの?」


『周りに住宅しかなかったんだよ! まぁなんでもいいや、とりあえずミチルも生きてんだよな?』


「もちろん。……ノゾミさんも、大丈夫だよね?」


『とーぜん! んじゃ俺らも帰るわ! また夜にな!』


「うん、お疲れ様」


 慌ただしいタイガの言葉にそう返して、カナタは通信を切った。どうやら通信が聞こえていたようで、ミチルが心配そうな表情でカナタに話しかけてくる。


「タイガくんとノゾミちゃん、風邪引かないといいけど……」


「そうだね……まぁあの調子ならタイガくんは大丈夫だろうけど……」


 カナタがボソッと付け足すと、ミチルはクスリと笑った。




「ちょっとは弱くなってきた……かな?」


「そうだね。もうちょっと待てばだいぶ落ち着きそう……」


 他愛もないことを話しながら、カナタはふと空を見上げる。少しの間降り続く雨の滴を見ていると、何か記憶に引っかかるものを感じた。


「ん……?」


「? どうしたの?」


 その時、カナタの脳裏に浮かんだビジョンがあった。雨の中俯く黒髪の少女と、それを見下ろす自分。曖昧過ぎて、それ以上は分からなかったが……


「いや、何かこんな雨模様を前にも見たような気がして……」


 その呟きを聞いて、ミチルが不思議そうな顔をして首を傾げた。言った当人のカナタも不思議そうな顔をしていたからだ。


「それがいつかは思い出せないの?」


「うん……どこで見た景色かも……」


 そう言って、カナタは少し寂しそうな顔をする。ミチルもそれを察し、押し黙る。今カナタが思い出しているのが、今のカナタ自身の記憶なのかどうか……それすらも分からないのだと、分かっているからだ。なのでカナタを邪魔しないようにと、ミチルはしばらく静かに黙っていた。




「……あ! 雨、弱くなってきたよ!」


 カナタが諦めたようにため息を吐いたのを見計らって再び空を見上げ、ミチルは雰囲気を変えようとわざと明るく言った。


「……そうだね。そろそろ行こうか」


「というか、これ以上雨宿りしてたら遅刻しちゃうよ」


「……ははっ。確かに」


 ミチルの冗談を聞いて、カナタはようやく小さくミチルに笑いかけた。


「じゃあ、行こう」


「うん!」


 ミチルは満面の笑みを浮かべ、カナタと並んで歩き出した。




「雨、か……」


 学校の窓から空を見上げ、一人呟いたのはノゾミだった。寂しげな瞳で次から次へと落ちてくる雨を見つめていると、後ろから呼びかける声がした。


「どうしたの? 叶」


「……樹理じゅり


 ノゾミは話しかけてきた女生徒に向き直る。その樹理と呼ばれた女生徒はノゾミに歩み寄り、さらに続けた。


「まぁ、こんなふうな雨の日に叶がおとなしくなるのはいつものことだけどさ。今日は特に静かだよ?」


「……何よ、その私がいつもうるさくしてるみたいな言い草は」


「まあまあ。……で、何考えてたの?」


「……考えてたんじゃないの。思い出してたのよ、懐かしい昔を」


「昔って……そんな年寄り臭いことを」


「うっさい」


 苦笑する樹理から視線を逸らしてノゾミが再び窓の外に目を向けると、樹理も同じく空を見上げた。少し後、樹理が空を見つめたままポツリと言った。


「……雨、何日か降り続くってさ」


「そう……」


 小さく返したものの、まだ空を見つめ続けるノゾミ。が、数秒間に始業のチャイムが鳴った。


「授業、始まるよ。次は市原だから、早く座らないと」


「……そうね、分かった」


 まだ心ここにあらずといったような様子のノゾミだったが、急かすような樹理の言葉に押され踵を返し、自分の席に戻っていった。

 今回は……なんでしょうね、端的に言うと“ある雨の日の物語”ですかね? まぁ告白すると、今回のお話は次話の前置きになっています。この後書きを見てからもう一度読んで頂くとニュアンスが分かりやすいかもしれませんね。


 遅れた理由は、すごく忙しかったこともあるんですが……別の理由もありまして。活動報告にも書いたゲームデータの保存もさることながら、別の一時創作を書いていたんです。一話完結でまとめようとしたらものすごく長くなりそうだったので、一旦停止してこちらに集中したんですが。いつかこのサイトでお届けできると思います。


 PVが2400越えて、ユニークが700越えましたありがとうございます!!! メッチャうれしいです! てか温泉回投稿してからPVがメチャクチャ増えました! ……なぜでしょう? やっぱ定番は外しちゃいけないってことなんでしょうかね。


 今回はこの辺りで。次は今回よりも早く投稿したいと思います。実行できるかどうかは、正直なところ……頑張ります!! では、次でもお会いできることを願いまして。

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