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十四話 新種登場

 新年一発目です! 今年もどうぞよろしくお願いいたします!


 やっと更新できました……では、どうぞ。

 放課後。委員会の集まりに行くという裕人と別たカナタは、下駄箱で靴を履き替えているときに後ろから話しかけられた。


「カナタくん」


「うん? っと、ミチルさんか」


 そこにいたのは、昼休みに驚きの再会を果たしたミチルであった。


「今帰り?」


「うん。帰ろうとしたら、偶然カナタくんを見かけたから」


 ということであったので、せっかくなので途中まで一緒に帰ろうという事になり、連れ立って歩き始めた。


「そうそう、これは言っておかなくちゃ。私の本名は、霧生きりゅう れいって言うの。学校ではこっちで呼んでね」


 そう言われて、カナタは思い出す。殲士たちの名乗っている名前は、自分たちでつけたコードネームであったと。


「うん、了解。僕は……ハルカ カナタのままだけど。じゃあ改めて。よろしくね、霧生さん」


「麗で良いよ、学校の皆もそう呼ぶし。……って……なんか、前にも似たようなやりとりしたよね」


「……そういえば」


 確かに、ミチルがコードネームを名乗った時も同じようなやりとりをしている。それを思い出した二人はなんだかおかしくなって、揃ってクスクスと笑った。


 そんな事を話しているうちに意外と時間が経っていたようで、気が付けば分かれ道に来ていた。


「じゃあ、僕はここで。また後でね」


「うん、バイバイ」


 そう言葉を交わして二人は別れ、それぞれの家へと帰っていった。




「……だめだな」


 暗がりの研究室の中で呟いたのは、白衣の男。机の上のパソコンのモニターを一瞥し、男は溜め息を吐いた。


「データが足りん。これではこれ以上は進めんな」


 呟くと男は立ち上がり、研究室を出ていく。廊下をしばらく歩いて辿り着いたのは、1つの檻の前だった。中に何かいるようだが、周囲が暗くてその姿を見ることはできない。しかし男は構わずに白衣の懐から一枚の写真を出し、そこに写っている人物を檻の中に見せながら言った。


「こいつの記憶をコピーして持ち帰れ。いいな。喰うなよ、持ち帰るんだ」


「……ウルル……」


 檻の中にいる“何か”は返事かどうかも分かりにくい呻きを上げたが、それを聞いた男は満足げな表情で檻の前からどき、壁際のレバーを下ろした。


「よし、行け!!!」


 男の声を合図に、檻のロックが解除された音が鳴り、中にいた“何か”が外界へ向けて放たれた。




 夜になり、ミチルとカナタはあらかじめ決めておいた待ち合わせ場所で落ち合っていた。


「こんばんは、カナタくん」


「うん、こんばんは。……なんか、こんなに短い間に何度も会うと、変な感じだね」


「あはは……確かに」


 ミチルとそろって苦笑し、並んで歩き始める。しばらく、二人の間に会話はなかった。しかしカナタなんとなく頭上に浮かぶ月を見上げた、その直後。


「……っ!!」


 原因不明の悪寒に襲われ、カナタは体を震わせた。その様子に気付き、ミチルが心配そうに話しかけてくる。


「どうしたの? 大丈夫?」


「……うん、大丈夫。ちょっと寒気がしただけ……じゃないな」


 ミチルに笑顔で返事を返そうとした直後、カナタは視線を険しいものにして背後を振り返った。その反応に不思議そうなミチルだったが、すぐに何かを感じたのか自分も弓を袋から出した。


「……妖獣?」


「うん。でも、今まで感じたどの肉喰とも憶喰とも違う臭い……」


「……どんな感じ?」


「……はっきり言って、ヤバそう。……来るよ!」


 カナタが叫んだ瞬間、二人は間髪入れずに隔世に引きずり込まれた。



「くっ!?」


 突然襲われたカナタは、あまりの速さに一瞬後ずさったが、ギリギリ両手の武具の起動が間に合い、傍らのミチルを守ることはできた。カナタが守っている間にミチルがその場から距離をとり、弓に祓光の矢をつがえる。


「祓光射!」


 ミチルが叫びながら矢を放ったが、狙った妖獣には軽々と避けられた。妖獣が先ほどいた場所の後方に降り立つと同時に、カナタも飛び退いて距離をとった。その時雲に隠れていた月が妖獣のいる場所を照らし、二人は妖獣の全貌を見て取ることができるようになった。


「……人?」


 その妖獣を見て、ミチルは思わず呟いた。確かにその妖獣は、全体的なシルエットが人間に似ていた。二本足で立ち、腕も二本であり、頭も一つだった。違うところと言えば、全体的に手足が細長く鋭くなっているところと、頭部に目が一つしかない、というところくらいだろうか。その妖獣が、敵意丸出しで二人を睨み付けていた。


(……多分二人じゃ敵わない……)


 カナタがそう思ってミチルを振り向くと、ミチルはカナタの意図を理解したように頷き、首元の通信機に手をやった。


「ノゾミちゃん、聞こえる!?」


 ミチルが言うと、即座に通信機から反応があった。


『どうしたの?』


「妖獣を見つけたんだけど、二人だとキツそうなの! 応援をお願い!」


『場所は?』


「公園から住宅街を奥に行った辺り。目印は特に見当たらないけど、派手にやると思うからその気配を感じて!」


『わかった、すぐ行く!』


 そこで通信を切り、二人は揃って妖獣に改めて注意を向けた。妖獣は二人にいつでも飛び掛かれるように体勢を低くし、構えている。


「さて、じゃあノゾミちゃん達が来るまで持ちこたえよう」


「了解。僕が突っ込むから、援護お願い!」


「分かった!」


 ミチルの返事を聞き、カナタは即座に動いた。武具を構えて走るが、カナタと同時に妖獣も走り出していた。両者は激突し、カナタは武具で、妖獣は両腕の鋭い爪で切り結ぶ。


「くっ!」


(さっきも思ったけど、速い!)


 カナタは妖獣の攻撃をいなしながら思う。体型が人に似ているからまだ対抗できているが、これが腕がたくさんあったりしたら危なかった。手数が多すぎて、対応できなかったかもしれない。


 妖獣が首を狙って払った腕をカナタは屈んでかわし、その体勢を利用して足払いをかけるが妖獣は上に飛んで避けた。しかし妖獣が上空で滞空している隙を見逃さずにミチルが祓光の矢を放ち、直撃した。


「グルァ!?」


 が、大したダメージがあるようには見えず、すぐに着地して二人に向かって構えた。それを見て二人も油断無く構え、互いに向かって走り出した。




「やっぱり、強い……」


 ミチルが呟き、カナタがそれに頷く。あれからしばらく戦っているが、どちらにも決定打はなく、膠着状態に陥っていた。カナタが両手の武具を握り直したその時、隔世に飛び込んでくる人影があった。もちろん、タイガとノゾミである。


「悪い、遅くなった!」


 タイガが叫んで手にした鎌を起動させ、魔洸の刃を展開する。同時にノゾミも武具を起動させ、構えた。


「こいつ、どんな妖獣なの!?」


「とにかく速い! 今のところ攻撃手段は腕だけだけど、たぶん両足も使える!」


 ノゾミの質問にカナタが答えた瞬間、妖獣がカナタに襲い掛かってきた。


「おわ!? ……っと!」


 カナタは慌てるも対処し、互いに切り結ぶ。その背後でタイガが手にした鎌を振りかぶった。


「おらよっと!!!」


 しかし妖獣は寸前で体を捻ってかわし、足でタイガを蹴り飛ばす。タイガは見事に吹き飛ばされたが、空中で体勢を立て直して無事に着地した。しかしそのタイガの様子に気を取られていたのか油断していたカナタに妖獣が襲い掛かり、カナタが気づいたときには妖獣は大きな口を開けたところだった。


「なっ!?」


『カナタ(くん)!!!』


 全員がカナタの名を呼んだ瞬間、予想外のことが起こった。妖獣が開けた口が半透明の膜のようなものになって広がり、そのままカナタの全身を包み込んだのだ。中はどういった原理なのか何らかの液体で満たされているようで、カナタは溺れるように苦しんでいる。その様子は、殲士である彼らにとっても予想外のものだった。有り得ない光景だったのだ。


「っぐ……あ……」


「あの喰い方……! あいつ、あのナリで憶喰なのかよ!?」


 一瞬硬直した彼らだったが、さすが殲士と言うべきだろう、すぐに持ち直してカナタ救出に動……こうと、した。




 しかし、できなかった。




 さらに予想外のできごとが、起こったのだ。




「……に……んじゃ……ぇ……」


 妖獣の口内にいるカナタが突然暴れるのを止め、何かを呟き始めたのだ。その声色はだんだん強くなり、その体から赤い何かが漏れ出す。それにつれて、妖獣が苦しみだした。カナタの体内から押さえきれない魔洸が溢れ出し、その魔洸が天敵である妖獣を傷つけているのだ。


「……いったい、何が……?」


 タイガが思わず呟くが、それには誰も答えることはできない。完全にイレギュラーだからだ。そうしている間にもカナタから溢れ出す魔洸は多くなり、妖獣はさらに苦しんでいく。そして…………






「人の、頭ん中に……勝手に入って来んじゃねえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」






 カナタが咆哮した瞬間、溢れ出す魔洸が妖獣の膜を弾き飛ばした。全体の三分の一程しか破壊できなかったが、それでも妖獣は傷つき、もがいている。その様子を見て、カナタは自分以外の人間の呆然とした視線にも気付かずに言い放った。


「ったく、好き放題に“俺”の頭ん中引っ掻き回しやがって……覚悟はできてんだろうな?」


 低い声でそう言い、性格が豹変したカナタは自身の怒りをぶつけるかのように魔洸の右翼を出現させ、羽ばたかせた。


 そして、その両目は…………強く、紅く輝いていた。


「さぁ、行くぜ!!!」


 カナタ……“隼人”は叫び、周囲を置き去りにしたまま妖獣に襲い掛かった。

 はい、今回はここまでです。


 まず最初に。前回の後書きで更新ペースを速められるかも、見たいな事をほざいていましたが……ごめんなさい、大嘘つきました! 速めるどころか大幅に遅れるという……年末年始、加えて速攻で始まった学校がメチャ忙しくて……うぅ。


 ま、さておき。久々の登場でしたね、隼人くん。登場しただけで今話は終わってしまいましたが、次回は隼人くんを交えての戦闘回です。お楽しみに!


 PVが1300超えました! ありがとうございます! お気に入り登録は未だに二件ですが! 読んで下さればそれで構いませんので!


 それから、今まで書いたものをふと読み返したのですが、若干文脈の乱れや描写不足、設定の食い違いなどがありましたので、今後少しずつ修正していきます。書いているうちに新しい設定が増えたり減ったりしているので、前のほうの話が追いついていないようです。大筋は変わっていませんが。


 次はいつになるやら分かりませんが、投稿した時には読んで頂ければ幸いです。


 では、次でもお会いできることを願いまして。

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