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十二話 疑問多数

 お待たせしました、十二話です。


 では、どうぞ。

「んじゃ、今回はこれで解散! つっても今日は報告会だし、また昼過ぎに会おうぜ」


 そう言ったタイガに頷き、カナタは家に帰った。今日は報告会の日のため、午後に例のアジトに行くことになっている。


(少しは、慣れた……かな?)


 と、カナタは自分の手を見下ろしながら思った。殲士になってから一週間。まだまだ分からないことは多いが、既に祓光も滅光もマスターし、ほぼ戦闘に支障はなくなっていた。しかし今日はアジトに行ったら、念のため精密検査を受けることになっている。


(いろいろ聞きたいこともあるし、ちょうどいいかな。さて、帰ったらとりあえず宿題終わらせてから少し寝て、それから……)


 帰ったら何をするか、頭の中で組み立てながら歩くカナタ。その視線の先には、家が既に見え始めていた。




 報告会の場となった巨大な会議室には、タイガやノゾミといった馴染みの顔ぶれから、見たことすらないような人まで大勢いた。人数の多さに目を白黒させながらも、カナタはその内の数人と言葉を交わし、そして時は流れて今は報告会の終盤である。


「よし、報告は以上だな? 他に何かあるか?」


 司会を勤めている春樹が全体に確認するが特に発言する者はいなかった。


「何か思い出したことがあったら、いつでも俺に報告に来い。では、解散!」


 春樹の号令に全員が立ち上がって一礼し、思い思いに部屋を出ていく。カナタは精密検査の詳細について聞くために、春樹の方に歩いていった。


「あの、司令。僕、今日精密検査を受けるって話でしたよね? これからどうすれば?」


「おぉ、そうだな。話はもう通してあるから、今から直接医務室に向かってくれ。まだここは良く分からないだろうから、タイガも一緒にな」


「分かりました」


 そう言って、タイガと共に歩き始めるカナタ。医務室に到着すると、早速検査が始まった。以前と同じく、一般的な身体のチェックを行った後、魔洸のチェックを行う。一度やって勝手が分かっていたので前回よりもスムーズに終わり、今は医師が出した診断結果をタイガと一緒に見ている。


「特に問題はなさそうだな」


 タイガが呟くと、医師は頷いて机の上にあったクリップボードを見ながら返事をした。


「はい。健康面の異常は一切なし。体内の魔洸も安定しています。何か気になる事はありますか?」


 医師に問いかけられ、カナタはおずおずと切り出した。


「その、気になるって言うより不思議に思ってることなんですけど……僕の魔洸って、なんか他の皆のより薄い気がして……」


「薄い、ですか?」


 カナタの言葉を聞いて、医師は不思議そうな表情で首を傾げ、クリップボードを手に取った。


「検査での測定値に異常は見られませんでしたが……」


「でも、言われてみりゃ確かにそうだな」


 と、タイガが思い当たる節があったのか呟く。


「祓光も滅光もできるようになったし威力もあるんだが、なんか魔洸が全体的に薄いんだよな。かといって、カナタが自発的に手を抜いてる、って感じでもないから……う〜ん……」


 医師も含めて三人で知恵を絞ってみたが確実と思えるようなアイディアも思い浮かばず、結局。


「ま、とりあえず健康面での心配はないようですし、こちらでも調べてみます」


 ということで、一旦決着となった。




 春樹の所に報告に行く途中、カナタはタイガに躊躇いがちに切り出した。


「ねぇ、タイガくん。変なこと聞いていい?」


「ん? 何だ?」


 言われてもカナタはすぐには答えなかったが、やがて意を決したように問いかけた。


「あのさ……妖獣の声、聞いたことある?」


「……え〜と……“ウガー”とか“ギャオー”とかのことなら、日常的に聞いてるが……」


「ううん、そういうのじゃなくて……普通に、声」


「……残念ながら、一度もないな。そんなもん聞こえんのか?」


 タイガが疑わしげに問いかけるが、カナタは一泊置いてキッパリと頷いた。


「うん。始めの頃は気のせいだと思ってたんだけど、何回も聞いて幻聴じゃないって確信したんだ」


「……何て、言ってたんだ?」


 その言葉を聞いて、カナタは悲しげに目を伏せ、答えた。


「……“イタイ”、とか“シニタクナイ”、とか……」


「……そうか」


 それを聞いたタイガは驚愕すると共に思い出していた。見回りをしていた時、何度かカナタが“変な匂いがする”と言った場所に行くと、必ず妖獣がいたことを。


「……俺の知る限りの殲士の中には、妖獣の言葉が分かる奴も、妖獣の匂いが嗅ぎ分けられるやつもいない。少なくとも、以前のカナタにはできなかった」


 タイガの言葉を聞いて、カナタは戸惑いに顔を俯かせた。


「じゃあ……本当に、この“僕”にしかできないってこと……?」


 そして、カナタはポツリと言った。


「本当に……僕って何なんだろう……」




「……それは、本当に謎としか言い様がないな」


 カナタは試しに春樹にも話してみたが、彼でもお手上げらしい。


「司令でも、ご存知ありませんか?」


「あぁ。そんなことができる殲士なんざ、文献ですら読んだことがない」


「……そうですか……」


 カナタは残念そうにするが、春樹は呟きつつ考え続ける。


「……失踪の前後で変わった人格……突然開花した謎の能力……総量は変わらないにも関わらず変化した魔洸の濃度……どういうことだ……?」


 しばらくブツブツと呟いていた春樹だったが、出した結論は、


「お手上げだな」


 その言葉に、カナタが軽くずっこける。


「……あの、そんな簡単に……」


 しかし春樹は、カナタの言葉に肩をすくめた。


「だってどうしようもないだろ? まぁ、とりあえず了解した。こちらでもどうにか調べてみよう」


「……はい、お願いします」


 納得はいかなかったがとりあえずこれ以上は手詰まりだと判断し、カナタは部屋の外で待っていたタイガと共に、タイガの先導でどこかに歩き出した。




 たどり着いたのは、談話室のような場所。以前春樹と話した場所とは別の場所で、さらにくつろぎ易く作られている。


「で、ここで何するの? 僕にしたい頼みって何?」


 するとカナタの言葉を聞いたタイガは真剣な表情で彼にに向き直り、カナタの両肩に手を置いて言った。


「宿題手伝ってくれ」


「……え?」




 カナタは思い出していた。自分以外の殲士は、いつ学校の宿題を片付けているのかと。その答えがこれだった。


「……ここは?」


「確か、ここは摩擦が……」


「ミチル、ここの文法ってこうであってる?」


「えっと……うん、大丈夫だよ」


 と、いうわけで。たまたまいたノゾミとミチルも巻き込んで、現在仲良く勉強中である。


「だあぁぁぁ〜っ!!! 分かんねぇぇぇ!!!」


「だっ、大丈夫だから! 難しく考え過ぎなだけだから! 落ち着いて!」


 分からなくてパニックを起こしたタイガを必死に宥めるカナタ。


「まったく……大変ね、カナタも」


 ノゾミがため息を吐くと、ミチルが苦笑した。


「あはは……タイガくん、ああなると長いからね。でもよくやってると思うよ?」


「まぁ、ね……確かに手綱握ってる方だとは思うけど……あ、落ち着いた」


 そう言った二人の目線の先には、落ち着いて問題を解いているタイガと、安心して息を吐いているカナタの姿が。


「……なんか、前より落ち着くの早くない?」


「まぁ、前のカナタだったら上手くいかないことにキレちゃって、喧嘩になってたからね」


「カナタくん、けっこう勉強できたもんね」


「見かけによらずね」




 それから続けること約二時間。ようやく全ての課題が終了した。


「ふぅ、やれやれ。助かったぜ、カナタ」


「うん、どういたしまして」


 二人が話していると、その様子を見ていたノゾミとミチルがやってきた。


「本当にお疲れ様、カナタ。でも流石よね、今までで最短記録よ? タイガがパニックから回復するの」


「るせ~な」


 ノゾミがからかうように言い、タイガが睨む。それを見て、カナタとミチルは苦笑していた。


「友達に似たようなのがいるからね。どうすれば落ち着くかは知ってるんだ」


「なるほど。なら扱い方を知ってるのも納得ね」


 そんなことを話しながら二人も席に座ると、ミチルがカナタに話しかけた。


「ところで、今日の精密検査の結果、どうだった?」


「うん、特に異常は見られないって。でも、魔洸が薄い理由は分からずじまいだったよ。司令も知らないって言ってたし」


「そっか。専門家でも分からないか……」


 ミチルが残念そうにするが、そこでタイガがこんなことを言い出した。


「あぁ、そういやあん時は言い忘れたけど、もう一個あったな、分からないこと」


「え? 何?」


 カナタが聞くと、タイガは彼に向き直り、言った。


「お前、魔洸を使うとき、眼が赤くならないよな?」


「いや、「な?」って言われても……」


「そりゃ自分じゃ見えないわよ。……でも、言われてみれば確かにそうね」


  タイガに返答しつつ、ノゾミも思い当たることがあったように呟いた。


「そうなの?」


「いやまあ、正確に言うと多少は赤くなるんだけど……注意してないと気付かないくらい薄いんだよ」


「全体的に魔洸が薄いんでしょ? ならその関係じゃないの?」


 ああだこうだと言い合う三人を眺めながら、ノゾミはふと思った。


(……でも、あの時は確か……)


 あの時とは、初めて“この”カナタに会い、妖獣に襲われた時に隼人が出てきた時のことだ。何となく機会を逃してあの時の事はカナタに話していないのだが、その戦闘の時は確かに瞳を赤く輝かせていた。


(……まったく、カナタに関しては分からない事だらけね……)


 そんな事を思いながら、ノゾミも議論に加わる事にしたのだった。

 少々遅くなっての投稿になりました。今回は色々と疑問点が出てきましたね。サブタイトルを見て、「なんじゃこりゃ」と思われた方も多いだろうと思います。地味に難しいですよね、サブタイトルって。


 実は、先日パソコンを新しいものに買い替えました。これまで使っていたオンボロもまだ現役で頑張ってくれているのですが、さすがに8年も使うと寿命のようでモニターがブレるブレる。新しい方は処理もメチャ速いし、HDD2テラもあるし、やったぜ〜!


 という、ただそれだけの話でした。


 ともかく。次もなるべく間を開けずに投稿したいと思います。


 では、次でもお会いできることを願いまして。

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