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十一話 日常・増援

 どうにか一週間ほどで更新できました。では、どうぞ。

 放課後。号令を終えた直後の騒がしい教室で、カナタは窓の外を眺めていた。


(……うん、だいぶ回復した。眠気は完全に覚めてるし)


 自分の体調を確かめ、一人小さく頷く。


(にしても、これからはずっとこんな生活が続くんだなぁ……)


 そこで心配になることは一つ。


(宿題いつ片付けよう……)


 通常学校で出された課題は夜に片付けるのが普通だ。しかし、彼ら殲士の場合はその夜が完璧に塞がってしまっている。


(……タイガくん達、どうしてるんだろ? ……今日夜に会ったら聞いてみよ……)


 よし、とカナタが頷いて振り向くと、突然すぐ目の前に直子の顔があってカナタは驚き、大きく仰け反った。


「うわぁぁ!? ……なっ……なに?」


 カナタが問いかけると、直子はどこか面白がっているような顔をして、逆にカナタに問いかけた。


「キミこそ今日はどうしたんだい? いつもより集中力が欠如していたように見えたけど」


「えっと……それは……」


 カナタはどう言ったものか困っていた。いままで正直に生きてきたために、こういった言い訳を考えるのは苦手なのだ。それは美徳ではあるのだが、それが災いすることもあった。結局カナタが思いついたのは、極めて無難なものだった。


「なんだか昨夜は寝つきが悪くて……あんまり眠れなかったんだ」


「なるほど。確かに中庭で寝ていたね、昼休みいっぱい」


「え……見てたの?」


 少し驚く、が、すぐに納得する。カナタのクラスの教室の窓から、中庭のあの木がよく見えることを思い出したからだ。


「うん、珍しい光景だったからね。相変わらず仲が良いようだね、あの猫とは」


「まぁね」


 そこまで話すと、直子は何か思い出したように手を叩いた。


「と、そうだ。このあと時間はあるかい? できればキミに付き合って欲しいところがあるんだが」


「特に予定はないけど……どこ?」


「本屋だよ。英語の文法書が見たいんだけど、選ぶのにアドバイスが欲しいと思ってね。キミ、英語の成績は良かったろう?」


「そりゃ、もちろん構わないけど……でも、直子さんだって成績は良いじゃない。いまさら参考書なんて要るの?」


「それがそうでもないのだよ。いや、もちろん長文は読めるし単語も分かるんだが、どうにも文法だけは苦手でね」


「へぇ、そうなんだ。……じゃ、行こっか?」


「うん、頼むよ」


 そしてカナタは自分の席に戻って鞄を持ち、直子と並んで歩き始めた。




 カナタと直子がやってきたのは、少し遠くの駅前にある大型の書店だった。小さい書店ならもっと簡単にいける場所もあったのだが、そこでは高校生向けの参考書を扱っていないため、ここまで足を伸ばしたのだ。


「さて……参考書はどこで売っているのだったかな?」


「えっと……あ、五階みたいだよ」


 階層表示を見てカナタがそう言い、二人は五階へと向かった。階層へつくと、早速英語関係の棚へと向かった。さすがに勉強関係のフロアだけあって、人は数人しかいない。もっとも、参考書のフロアが混む時など、受験期以外に無いだろうが。


「さて……どれがいいかな?」


 棚に着いた二人は、早速参考書を物色し始めた。ふと目に付いた文法書を手に取り、直子がカナタに見せてくる。


「……これなんかは?」


「うん、なかなか……あ、ダメだよこれ。例文が少なすぎて分かりにくい」


「ふむ……こっちは?」


「さっきよりは良いけど……今度は見にくくない?」


「あ~……確かに。じゃあ今度は……」


 と、いうような風に選び始めて数十分。ようやく納得のいくものを選び出すことができた。


 書店から出て、直子はカナタに向き直った。


「今日は助かったよ。ありがとう」


「大したことはしてないよ。アドバイスとして適当だったのかも分からないし」


「そんなことはないよ。すごく助かった」


「……そっか。なら、良かったけど」


 そこまで話すと、二人は帰るために歩き始めた。しばらく行ったころ、直子がポツリと言った。


「……実はね、今回参考書を買ったのには、理由があるんだ」


「理由?」


 突然の言葉にカナタが首を傾げていると、直子が続けた。


「中学生相手の塾のアルバイトで英語を教えることになってね。そのために今よりも詳しく勉強する必要があるからさ。先生が生徒より物を知らない、という訳にはいかないからね」


「なるほど……あれ? 確かうちの高校ってバイト禁止じゃ……」


 カナタが直子の方を見ると、直子が悪戯っぽい表情でカナタに笑った。


「家庭の事情でね。内緒にしておいてくれよ、信用している人にしか教えていないんだからね」


「うん、それはもちろん。……でも、教える相手は中学生だよね? 今日買ってたの、高校生向けだったと思ったけど……」


「そう。ま、普通に教えるだけじゃつまらないからね。それに、英語は中学だけじゃなくて高校でも勉強するんだ。先を見据えて教えたほうが、得だろ?」


「……確かに」


 それを聞いて納得した。確かに、せっかく高校までの英語をまだ途中とはいえ学んでいるのだから、先を見据えて、というのは正しい。


「じゃ、私はこっちだから。今日はありがとう」


「あ、うん。また明日」


 分かれ道で直子と別れ、カナタも家へと向かい始めた。




 家に着いて、カナタは息をついた。ふと時計を見ると、タイガたちとの合流時間までもう一時間しかない。


「やばっ! 早く食事済ませちゃわないと」


 時間の短縮のために冷凍庫に保存しておいた冷凍ご飯を取り出し、電子レンジで解凍する。その間に冷蔵庫から肉と野菜を取り出し、同じような大きさに細かく刻む。レンジからご飯を取り出し、フライパンで先ほど刻んだ具材と一緒に炒めて、完成だ。


「よし、即席チャーハン♪」


 と、喜んでいる暇も惜しく、そそくさと食べ始める。いつもの数倍の速度で食べ終えたが、それでも残り40分だ。


 片付けは帰ってきてからすることにして、カナタは自室に向かった。クローゼットを開けると、中のハンガーにかかっているスーツを取り出し、素早く身に着ける。着用し終わると、偽装用に上下にジャージを着る。着替え終えたカナタは鏡の前に移動し、問題ないことを確認すると素早く戸締りを確認し、タイガ達との待ち合わせ場所に急いだ。




 一方、所変わって待ち合わせ場所の公園には、既にタイガとノゾミが揃っていた。


「……なぁ、ノゾミ」


 タイガが話しかけると、ノゾミはそちらを見ずに返事をした。


「なに?」


「カナタのこと……大丈夫か?」


「……何が?」


 何でもないように答えようとしたノゾミの声は、若干震えていた。


「……せっかく帰って来たかと思えば、中身は別人。……辛く、ないのか?」


 答えはしばらく帰って来なかった。タイガは余計なことを言ったと後悔したが、謝る前にノゾミが口を開いた。


「……辛くないわけ、ないでしょ? ……ずっと帰って来なくて、心配して……帰って来たかと思えば、私のことを覚えてもなくて……本当に、辛いわよ……」


 タイガに振り向いたノゾミは、しかし泣いてはいなかった。


「でも、それは今彼の中にいる“カナタ”のせいじゃない。彼自身は、悪い人ではないから……」


「……そっか。……そうだな。……まるっきり別人で、かえって良かったかもしれねえな。……でも、だとすると謎なんだよな」


「えぇ。一体あの日、彼に何が起こったのか……」


「……ま、考えるのは後にしようぜ」


 そう言ってタイガが公園の入り口に向かってあごをしゃくった。ノゾミがタイガが見ている方向に目を向けると、こちらに向かって小走りで近づいてくるカナタの姿があった。


「ごめん、少し遅れた?」


「いや、大丈夫。ちょうど時間通りだ」


「ならよかった……」


 ホッと息をついたカナタ。


「じゃ、行きましょうか」


 ノゾミに促され、タイガとカナタは頷き、歩き始めた。




「危ないカナタ、上に飛べ!」


「っと! タイガくん、助かった!」


 今回現れた妖獣は、狼のような姿だが、足と手が複数あるクモのような見た目をしていた。足の多さに比例して非常に機動力が高く、かつ複数ある手で多方向から攻撃してくるので、厄介なことこの上ない。


「ミチル、あとどれくらい!?」


『ごめん、後五分くらいで着くから、もう少しだけ待ってて!』


「うん、なるべく早くお願い! 到着したらいきなり滅光で仕留めて!」


『分かった、やってみる!』


 と、ミチルと話していたノゾミが通信を切り、妖獣に再び向かっていった。何をしていたのかというと、実はスーツの首のカラーの部分には小型の通信機が仕込まれていて、対象との距離が近ければ相互通信が可能なのだ。もっとも戦闘中にわざわざ外部と連絡を取ることなどそうあることではないので、そこまで頻繁に使われる機能でもないが。


「じきにミチルが来てくれるわ! それまで持ちこたえましょう!」


「「了解!」」


 カナタとタイガが同時に返事を返し、再び三人で妖獣に向かっていく。その後三人で同時に挑んだが、相手の体勢を崩すことはできなかった。しかし一瞬の隙を見逃さず、ノゾミが妖獣に飛び掛かった。


「はっ!」


 ノゾミが手に握った武具を振りかざして妖獣に飛び掛かる。が、複数ある腕のうちの一本で防ぐ。


「やばい! ノゾミ!」


 タイガがノゾミに叫び、ノゾミは初めて自分に向かってくる妖獣の腕に気づいた。が、もう今から回避しても間に合わない。タイガとカナタが応援に駆けつけようとしているが、間に合わない。


「ノゾミ!!!」


「アスノさん!!!」


(守光を展開するのも間に合わない……使うしかないかな……?)


 ノゾミが、自分の中にあるもう一つの力を使おうと……した、その時。


「……滅光豪射めっこうごうしゃ!!!」


 突然誰かの声が響いたと同時に無数の魔洸の矢が飛来し、妖獣の体を蜂の巣にした。


「ウ……ルゥ……ァ……」


「……?」


 妖獣の死ぬ寸前の呻き声を聞いたカナタはなぜか首を傾げたが、すぐにそれどころではないと思い直し、魔洸の飛来してきた方を振り向くと、そこには……


「ふぅ……よかった、間に合って」


 弓の構えを解き、息をついているミチルがいた。

 はい、十一話でございました。最近どえらく時間がなくて、携帯でも執筆を行っているので、もしかすると予測変換のミスによる誤字があるかもしれません。もし見つけたらご指摘ください。なるべく迅速に修正いたします。


 しかし、ただのクラスメイトとして登場させただけなのに、なんか予想外にキャラが立っちゃったな、直子。めんどくさいキャラ作っちゃったなぁ、とちょっぴり後悔していたり。


 ま、生み出した以上は責任持って精一杯あの世界で生きてもらいますが。


 今後の展開はまだまだ不明です。が、それでもがんばっていこうと思います。そこで皆様に一つ頼みごとがあるのですが……お願い、誰かコメント書いて! PVがなんと800を超えまして、非常に喜ばしいのですが……PVだけだとこの作品が楽しんでもらえているのかいないのか分かりにくいんです……。「面白い」とか「つまんない」みたいに一言でも構いませんので、感想を頂けると嬉しいです。


 今回はこの辺で。では、次でもお会いできることを願いまして。

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