最強守護神の黒猫、「この力は使いたくなかった……」を擦りすぎて台無しにする
王都上空。
空が、割れていた。
紫電が走り、
黒い裂け目の向こうから巨大な腕が伸びている。
「次元災害です!!」
「封印が破られた!!」
「王都が飲み込まれるぞ!!」
兵士たちは半泣きだった。
当然である。
空から世界の終わりみたいなのが出てきてる。
そして。
その絶望的状況の中。
ふくは。
めちゃくちゃカッコつけていた。
『……』
窓辺。
風。
なぜか揺れるカーテン。
演出完備。
「また始まった」
ユキトは真顔だった。
ふくは、ゆっくり振り返る。
黄金の瞳。
やたら重たい空気。
そして低い声。
『この力は……使いたくなかった……』
沈黙。
王がごくりと息を呑む。
兵士たちが震える。
空気は完璧だった。
なのに。
「使え」
『え?』
「今使え。国が滅びる」
『いや、こういうのは流れが』
「流れ待ってる場合じゃねぇ!!」
空から黒い腕がさらに伸びる。
城壁が砕けた。
「ぎゃああああ!!」
「南区画が!!」
ユキトはふくを指差した。
「ほら! 被害出てる!」
『む』
「む、じゃない!」
『……余韻が』
「いらん!!」
兵士たちも叫ぶ。
「守護神様ぁぁぁ!!」
「演出後回しでお願いしますぅぅ!!」
『くっ……』
ふくは悔しそうに目を細めた。
『せっかく考えたのに』
「そこ気にしてたの!?」
すると横で、
若い兵士がそっと手を挙げる。
「あの……個人的には嫌いじゃないです」
『本当か?』
「はい。ちょっと言ってみたい感あります」
『ほう……』
ふくの機嫌が少し直った。
「チョロいな!?」
その瞬間。
空の裂け目から、
巨大な目玉が現れた。
王都全体が震える。
「も、もう限界です!!」
「早く倒してくださ――」
ふくが前に出る。
そして。
『……仕方あるまい』
「おっ?」
ふくは空を見上げた。
黒い神威が膨れ上がる。
空気が震える。
世界が軋む。
完璧な最強演出。
そして。
『この力は使いたくなかった……』
「二回言ったぁぁぁ!!」
『大事な台詞は擦るものだと聞いた』
「誰からだよ!!」
次の瞬間。
ふくが猫パンチした。
ドォン!!!
空の裂け目ごと、
世界の終わりみたいな何かが消し飛んだ。
静寂。
風だけが吹く。
王も兵士も口を開けて固まっていた。
ふくは満足そうに頷く。
『……決まったな』
「台詞二回言ったせいで全部台無しだよ」
『えっ』




