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古代転生~目が覚めたら原始地球~  作者: Flaria495


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第三話 "束の間の大地"

「ねえ、今ってどれくらいだと思う?」


 固まった岩石を見つけてから幾度もの夜が過ぎた日。

 ほんの少しだけ温度が下がったマグマの海で、彼は誰かに語り掛けていた。


「え? 先カンブリア時代? 

 それはちょっと広すぎるから、もっと具体的にどれくらいだと思う?」


 明らかに誰かへ話しかけているが、返答の声は全く聞こえない。

 なのにも関わらず、彼はまるで返答されているかのように会話を進める。

 冷却によって多少の温度は下がっているものの、未だに極熱の環境と有害物質だらけの大気で構成されている地球。

 そんな場所に彼以外の生命がいるものなのか? 

 答えは否。

 彼が話しかけている正体は手に持っている黒い岩石。

 前に見つけた岩石とは別物であり、彼はその手に持つ岩石と会話を繰り広げていた。


「冥王代? いやそれよりもっと具体的……あ、そろそろ終わり?

 うん、じゃあまたいつか会おうね」


 どうやら黒い岩石からお別れの言葉を言われたようだ。

 彼がお別れの言葉を口にする前から既に溶け始めていた岩石は、その形を保つことができずにどろどろと溶けていき、辺り一面に広がるマグマと一体化した。


「はぁ……次の玄さんが出てくるのはいつになるんだろう」


 彼の言う玄さんというのは先ほどまで手に持っていた岩石のことで、たった今彼の目の前でマグマになったのは玄19世、享年9秒だ。

 ちなみに初代玄さんの享年は1秒で二世は3秒である。


 彼は寂しさを紛らわせるために岩石に名前を付けたわけだが、数秒で消える岩石に語り掛けても、生まれてくるのは虚しさだけだ。

 まあ、この環境でできることなんてマグマ遊泳か妄想くらいなので、岩石に話しかける遊びをするのも仕方ないだろう。

 岩石から言葉が返ってきているのはおかしいが。


「あ”~、あとどれくらいでお前らは固まって、あと何年で生命は生まれるんだ~」


 マグマの表面を掌で叩いてマグマ飛沫を上げながら、文句を言うようにマグマへと話しかける。

 当然のことながら、岩石と鉱石が溶けたマグマが返答してくるわけがないので一切の反応はない。

 あるのはマグマを叩いたことで生まれたパシン、という音と、むなしく響く彼の声だけ。


「はぁ……」


 悲しくなった彼はため息をマグマへ吹きかける。

 月と思わしき物体を見てしばらくの間は希望があったが、時間が進むにつれて徐々に絶望へと変わっていった。

 そもそも人間の平均寿命ですら60~80年程度。人類が生まれてからの歴史ですら500万年程度しかない。

 そして彼が待たなければいけないのは最低でもその100倍。

 人類が生まれるまで待つのならば、人類の歴史が900回繰り返せるほどの永き時間を生き続けなければならない。


「5億年って思ったより凄まじい時間だなぁ。

 ……というか、もしも俺が人間の時代まで生きれたら年齢=地球の年齢ってこと? 

 もはや爺とかいうレベルじゃないな」


 やることがなさすぎてくだらない事を考え始めたようだ。

 彼はどれだけ死のうが復活することが証明されているため、年齢なんてどうでもいい数字でしかないだろう。

 そもそもどこから判断するかで彼の年齢は変わってくる。

 彼の前世から換算するのか。この世界にやってきてから換算するのか。それとも復活の度に年齢がリセットされるのか。

 前者二つならば彼の年齢は爺を通り越した地層レベルだが、後者の場合はまだ赤ちゃんということになる。

 なにせ、減ったとはいえまだまだ降ってくる隕石によって何度も磨り潰されているため、一週間も生き残ったことが無いからだ。


「ま、年齢とかどうでもいいか。どうせ45億年後まで年齢を気にする生命は生まれないし」




 ~~~~




 彼が岩石を発見してからかなりの年月が経ったころ。

 その間も隕石に殺され続けていた彼が今、何をしているのかというと。


「……」


 マグマの海の上で、胸にいくつかの岩石を置いた状態でぷかぷかと浮きながらすやすやと眠っていた。

 もはや彼にとってマグマとはベッドのようなものであり、溺れることも焼かれることもない彼からすれば完璧な寝床だった。

 欠点としては揺れて顔にマグマがかかってくることと、ベッドの周りの空気が悪いことくらいか。


 当然だが彼はずっと寝ているわけではない。

 ならば起きている時の彼は何をしているのかというと、彼の胸の上にある岩石を集めていた。

 彼の胸の上に置かれている岩石たちは全て、彼が玄さんと呼ぶ岩石たちであり、起きている時の彼はこの岩石を集めるためにそこら中を泳ぎ回っていた。


 集めても集めても、目を覚ましたころには無くなっている玄さんだが、彼は無くなるたびに集め続けている。

 何故集めているのかだが、それには理由がある。


 一つ目の理由としては暇つぶしだ。

 やることが何もないこの世界において、一面マグマの海に時たま浮いている岩石を見つけるのは、まるでお宝探しをしているような気分になり暇をつぶせる。


 二つ目は今がどれくらい冷却されているかの確認だ。

 彼が最初に見つけた岩石である初代玄さんの享年は一秒だった。

 対して最近の彼が見つけた玄さんは10秒以上耐えることがある。

 徐々に耐える時間が伸びているということは、大気の温度が徐々に下がってきていることの証。

 彼としてはお宝さがしついでに今の状況を把握できるので、まさに一石二鳥の暇つぶしというわけだ。




 ~~~~




「はは、何言ってるんだよ」


 人間の平均寿命を超えるくらいの時間が経過したころ。

 今でも日々疲れるまで岩石を探しては眠る生活を続けている彼だが、ついに頭がおかしくなったようだ。

 彼が見ている先は何もない虚空であり、そんな場所へ顔を向けて楽しそうに話をしている。


「いやいや、この玄さんは俺のだからあげないってば」


 一体何の話をしているのかは不明だが、彼は先ほど手に入れた岩石を取られないように上へ挙げた。

 当然と言えば当然だが、彼が上に掲げた岩石は大気の熱によって溶解してマグマへと姿を変える。


「あーあ、玄さんが死んじゃった」


 彼は手の中でマグマへと姿を変えた岩石を見て呟くが、死んだと思っているはずなのに、そこへ悲しいという感情は含まれていない。

 まあ、自分が何度も死んでいるので死の価値が下がってきているのだろう。

 彼にとって、死とは日常だ。




 ~~~~~~~~~~~




 文明が滅ぶくらいの時間が経過したころ。

 彼は昔と同じように、溶岩の上で浮かびながら空を眺めていた。

 岩石を集めていたころと違うのは、彼の目が完全に死んだ魚のような目になっていることだろう。

 目の中に一切の光は無く、まるで全てを諦めているかのようだ。


 ……いや、彼は既に諦めている。

 昔は毎日岩石を集めたりしていた彼だが、今はそれすらしていない。

 今は日々をずっと空を眺めて過ごしている。


 こんな彼だがまだ廃人と言えるような状態ではなく、精神は正常と言ってもいい状態だ。

 だからこそ彼の目が完全に死んでいるわけだが。




 ~~~~




 今日も死んだ魚のような目で空を眺めていると、起きろとでも言わんばかりに隕石が何度も襲撃してきていた。


 隕石に殺されて復活してまた隕石に殺される。

 何度も繰り返しているが、彼からすればそれは目覚ましにもならないただの日課だ。

 隕石によって身体を裂かれる痛みなんていつものこと。

 既に何度も隕石によって殺されている彼からすれば、それは既に慣れてしまった痛みである。




 ~~~~



 最近の彼は、マグマに突入した隕石が生み出す高波に揉まれていた。

 今日は結構大きめの隕石が飛来したようで、そのせいで生まれたとてつもなく大きな高波。

 数百mはくだらない規模のマグマの波によって上から押しつぶされて死に、復活した瞬間にマグマの中で攪拌されて何度も死ぬこととなった。




 ~~~~~~~~~~~~




 マグマの上に浮かんで正常のまま狂っていた彼の頭へ、遠い記憶と同じように何かが当たった。

 緩慢な動作で視線だけを上に向けた彼の目に入ったのは、かつてのような手で持てるような小さい岩石ではなく、上陸できるほど大きな岩石だった。


 彼は緩慢な動作で振り返って岩石の上へ這い上がろうとするが、ずっとマグマの海で浮かんでいたからか中々上がることができない。

 それでもなんとか這い上がろうとした彼の皮膚が、岩に削られて血液が流れるが、自身から流れ出る血を一切気にせず、数時間を使って岩石の上へと這い上がった。



 岩石の上へと這い上がった彼がうつ伏せに寝ころんだ状態で感じるのは、マグマの海とは違う確かに肌で感じる感触。

 ゴツゴツとしていて、手を少し動かすと凹凸があってザラリとした粗さがあり、軽く引っかかるような感触だ。

 ずっと揺れていたマグマの上に居たせいで、この世界で初めての陸酔いを経験するが、彼にとってそれは嬉しいことだろう。

 彼の死んだ魚のような目から涙が溢れ、沸騰して蒸発していく。

 今までずっと死に続けながら孤独に耐えてきた彼は、ついに自身の足で歩ける大地へと上陸したのだった。


 そして彼はこの世界に来て初めて、失血によって、陸での死を迎えるのであった。

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