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古代転生~目が覚めたら原始地球~  作者: Flaria495


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第一話 "古代転生"

 彼が熱さによって目を覚ました時、視界に映りこんできたのは一面がマグマの海だった。


 ──え?


「っ!?」


 ここは生まれたての原始惑星。

 恒星の強烈な紫外線を遮断するオゾン層すら存在せず、一面がマグマで覆われ、大気のほとんどに二酸化炭素が含まれている死の世界。

 大気の温度は数千度にも及び、人間がこの環境に入いれば瞬時に蒸発するだろう。

 それを証明するかのように、彼が声を発しようとした瞬間、暴力的な熱量によって身体の水分は瞬時に蒸発し、皮膚は溶解し、骨すらも蒸発して彼はこの世から消え失せた。




 ~~~~~~~~~~




 次に彼が目を覚ました時、自分がまだ生きていることへの疑問を浮かべる前に再び蒸発したのだった。




 ~~~~~~~~~~




 何度も何度も、蒸発しては復活を繰り返した彼は、次第に蒸発までの時間が長くなっていった。

 最初は一瞬、数百の死後は数秒、数千回後には十数秒。

 ただひたすら圧倒的な熱量によって蒸発した彼は、幾千にも及ぶ死の果てに、自身を焼却してくる暴力的な熱への耐性を獲得したのだった。

 だが、


(苦しい……っ!)


 熱で蒸発しなくなった彼を待っていたのは、呼吸ができないことによる窒息死だった。

 それも当然だろう。

 マグマで覆われた原始惑星の空気中に酸素など存在せず、あるのは二酸化炭素やメタン、アンモニアなどの有害な物質のみ。

 当然そんなもので呼吸ができる訳もない彼は、再び死を繰り返すことになるのであった。

 それも蒸発のような一瞬で意識を刈り取られるものではなく、時間をかけて苦しみながら死んでいく窒息によって。




 ~~~~~~~~~~




 数百回もの窒息による死を経た彼は、少し息苦しいながらも呼吸を行えるようになった。

 そんな彼に待っていたのは豪華な報酬ではなく、幾千もの死と苦痛の記憶による精神の発狂であった。

 精神崩壊を引き起こして廃人となった彼は、マグマの海で仰向けに寝転がりながら、分厚い雲に覆われた空を眺める。


 最初の頃はまだよかった。

 なにせ、死ぬのも一瞬だ。

 だが、何故か生存できるようになり、死ぬまでの時間が長くなるにつれ、自分の身体が徐々に溶かされていく感覚を味わうことになってしまった。

 呼吸ができない時もそうだ。

 最初は一切の呼吸ができなかったためすぐに死んでしまったが、徐々に呼吸ができてくるようになると、反射で呼吸をしてしまい死ぬまでの時間が長くなる。

 そんなことを繰り返していたら廃人になるのも致し方ないだろう。


 完全に精神が破壊されていた彼だったが、自然は彼を休ませる気はないようで、覆われていた分厚い雲に空から何かが突撃してきた。

 それは岩だ。

 人間である彼から見ればとてつもなく大きな岩。

 宇宙から飛来する岩。

 のちの人類が"隕石"と命名する岩石は、一直線に彼のいる場所へと向かい、そのままマグマの海の中へと押し込んだ。

 マグマの中へと押し込まれながら、彼の身体は引き裂かれ、彼の意識は再び消え去っていった。




 ~~~~~~~~~~




 再び彼が目を覚ましたのはマグマの中だった。

 前後左右すべてがマグマの中を漂っていた彼は、口と鼻から入ってくるマグマを一切気にせず、ただひたすらボーっと過ごす。

 そんな彼は窒息によって死にながらも徐々に浮かんでいき、再び大気の元へと顔を出した。

 だがそんな彼を嘲笑うかのように再び隕石が彼へ衝突し、再度身体を破壊されながらマグマの中へと押し込まれるのであった。




 ~~~~~~~~~~




 それから一体どれほどの時が経っただろう。

 マグマの中に押し込まれ、呼吸ができないことで死んでいた彼は、いつのまにかマグマの中ですら呼吸ができるようになっていた。

 だが呼吸ができるようになったのだとしても、浮かび上がれば再び隕石によって身体を引き裂かれながらマグマの中へと押し込まれる。

 何度も浮いては沈みを繰り返していた彼が、再び浮かび上がった今、既に数分はマグマの海で分厚い雲をボーっと見ながら浮かんでいた。


 不思議なことに、この数分は彼へ直撃する隕石は一つも無く、あるとしても小さな隕石で彼の身体に穴を空ける程度。

 それが原因で死ぬこともあったが、そこで死んでも目を覚ますのはマグマの上。

 完全に廃人となって、何度身体を引き裂かれて死のうとも無反応だった彼は、徐々に徐々に意識を取り戻し始めていた。


(……)


 未だに言葉を考えることすらできない有様ではあるが、廃人だった彼の精神は間違いなく、復活の兆しを見せている。




 ~~~~~~~~~~~




(……ここは、どこだ?)


 隕石が降り注いでマグマの海が波打つ中で、彼はついに意識を取り戻し、


(なにを、して……っっ!)


 自分がどういう状況なのかを思い出した。今までの苦しみ、痛み、絶望の全ても同時に。


(っ……?)


 幾万にも及ぶ苦しみの記憶を思い出した彼だったが、不思議と再び廃人へ戻ることは無かった。

 それが良い事なのかどうかは置いといて、とにかく正常な意識を取り戻した彼は現状の把握を始める。


(しんで、ない……?)


 自分は死んだはず。当然の疑問を思い浮かべた彼だったが、それを否定するかのように幾度もの苦しみが脳内を駆け巡る。


(いや、たしかにしんだはず。でもなぜかいきかえった。そんなことが、ありえるのか?)


 普通ならばあり得ないだろう。

 だがそれを言うならば、寝ていたはずの彼が突然、マグマの海へ叩き落されているのもあり得ないことだ。


(これはたぶんマグマ。最初にとけたりしていたのは熱によるもの)


 彼は自身が浸っている赤いマグマを手に掬って握ったりしてみるが、既にその熱は一切感じ取れない。

 むしろ彼にとってはとても快適な環境といっても過言ではなく、まるでふかふかのベッドの上にいるかのようであった。


(この世界にてんい。……いや、転生した? 

 そして、しんでも生き返って、環境に適応できるようになった?)


 今までの経験から、彼は自身の能力が二つあるのではないかと考えた。

 一つは絶対的な不滅性。

 熱によって蒸発しようとも、身体に穴をあけられようとも、何事も無かったかのように復活する。

 さらに、肺に入り込んだマグマによって窒息死しても、復活すれば身体の中にある異物は全て消え去る。

 これらのことから、死んだ瞬間に五体満足で復活するのだと考えた。

 まるで1mのブロックを積んで遊ぶゲームのように。


 もう一つの能力が適応能力だろう。

 それも徐々に適応していくタイプの。

 そう考えれば、前は死んでいたはずの環境で生きれるようになった説明が付く。


 そして、ここまで仮説を立てれば、


(これ、異世界だよな、絶対)


 自分のいる場所が異世界であることも想像がつく。

 もしも彼のいた世界で一面マグマの海に放り込まれれば、一回死ねば終わりなはずだ。


 この世界はVRなどの技術で作られた世界で、自分は実験対象として誰かに監視されているのかもしれないと考えたが、人間が瞬時に蒸発するような熱気に耐えれる素材は無いはずだ。


 なので彼は、この世界を異世界だと定義し、恐らく一片も残らず蒸発したのに復活した点から、自身は不滅になったのだと推測する。

 ただ、


(でも、それが分かったからといってどうすればいいんだ……?)


 自身の現状をある程度予測したが、だから何だというのが正直な感想だ。

 自身の現状を知れて、ここが異世界だからといって、創作物のように冒険したりすることはできない。


 なにせ見渡す限りマグマの海に空から飛来する隕石。

 彼以外の生物はどこにも見えず、あるのはマグマのボコボコという音と、隕石がマグマに衝突した時のザバァン、という音のみ。

 マグマの中で生存できるような生物がいる訳も無く、これから彼は孤独の中で生きていくことになるだろう。


(どうすれば……)


 彼が今後をどうすればいいかを悩んでいた俯いていると、分厚い雲を割いて今までに見たことが無いほどの巨大な隕石が、遠くの方へ落ちてくるのが見えた。

 だが彼が視線を奪われたのは隕石ではない。

 彼が思わず視線を奪われたのは、隕石が引き裂いた雲の先。

 それは間違いなく前世で見たことのあるものだった。

 明らかに前世で見た時よりも巨大で似ても似つかないが、それは宇宙の中でも特に珍しい物体。

 一つの惑星の周囲を回り続け、自身の重力によって干潮と満潮という現象を引き起こす天体"月"だった。


 それが月であると認識する前に、隕石による衝撃波で消し飛んでしまうが、次に目覚めた時に考えるのは先ほど見えた月と思わしき物体のこと。


(明らかに大きかったけれど、惑星の周囲に別の天体があるなんてあり得ない。それがあり得るのは……地球のみだ)


 実際には彼が知らない別の星という可能性もあるだろうが、彼の中で一度芽生えた希望は中々消えることは無い。


(あれが月だとして、ここが前世と同じ地球なのだとしたら、恐らくここは現代から45億年前の原始地球。

 そして何度死んでも蘇るという点から異世界だろう。

 ……つまり俺は、異世界へ転生した上にタイムスリップしたのか?)


 彼の記憶の中で、地球が一面マグマの海だったのは約45億年前の冥王代の時期だ。

 だとしたら、人間が生まれるのは最低でも約45億年後。

 つまりは45億年間生き続ければ、人間の生活へ戻れるかもしれない。

 だがそれは45億年もの間、一人で生き続けなければならないことを意味する。


(……いや、一人じゃない。

 現代から40億年前には生命が生まれていたと記憶しているから、それは異世界でも変わらないはず。

 ……最低でも5億年か)


 気が遠くなるほどの時間だ。

 彼は5億年もの間、マグマと隕石の中で一人生き続けなければならない。

 そして五億年もの間生き続けたのだとしても、待っているのは会話ができるような生物ではなく、微生物のような小さい生物であり、そもそも生まれるかすらも定かではない。

 だがもしも生まれたのならば微生物だろうが生物である。

 自分以外の生物がいない環境で出会う自分以外の生物はさぞ感動することだろう。


(問題は5億年のあいだ何すればいいんだ? ここにはゲームもないし。

 ……とりあえずマグマの中で泳げるようになっておくか)


 目下の問題として何をすればいいかを考えた彼は、マグマの中で泳げるようになることにしたようだ。

 とりあえず泳ぐ練習として、マグマの中でクロールをしようとしたが、そんな彼をバカにするように空から隕石が降り注ぎ、再び彼の意識は途絶えたのだった。

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