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断罪したのは俺なのに

卒業式…そう、その日は俺の誕生日でもあった。

誕生日に卒業式を合わせ、国を挙げての大パーティにする。

いつも煩わしい、お目付け役のルドリックも、今日の準備のため、しばらく姿を見ていない。

次の王になる男の、18歳…成人の祝いの日なのだ。

大いなる祝賀の日とするべきである。


そこに水を差すものは…

学園で一人。

俺…ラザリオ・フォン・レグナントの婚約者とされている、エリシア・ド・ヴァルトリエだ。

この生意気な…ありとあらゆる面で生意気で、空気を読まない女に、学園生活の間中、不愉快だった。


だが、俺も成人となる。

俺が愛する女は、俺が決める。


ミレナは、貧民の中から選ばれて学園に来た。

選び抜かれた女性だ。

エリシアのような、生意気な貴族とは違い、いつも俺に微笑んでくれる。

男なら誰だって、ミレナを選ぶだろう。


卒業式のために、学園中の生徒、教師。国の関係者、民間からも有能な人間が集められた。

この国で最も美しい建物と言われている、レグナント学園の大集堂。

中には俺の10歳の肖像画もある。俺が10歳の時に、俺が将来学ぶために、この学園が作られたからだ。

舞台の中央には、我がエクリシア王国の国章が飾られている。

星がちりばめられた銀の盾に、金色の三日月が輝く。我が王家の紋章だ。

俺の胸元にも、豪奢な宝石を詰め込まれたペンダントとして、誇らしく輝いている。


学園長が立ち上がり、最初に俺の名を呼ぶ。

俺はすべてにおいて一位であり、首席である。当然だ。

次に呼ばれるのは、エリシア…この生意気な女。


壇上に上がると、俺は、学園長を無視し、そこにいるすべての者に聞こえるよう叫んだ。

「俺は、ラザリオ・フォン・レグナント!この国の王となる者だ!今から、この女、エリシア・ド・ヴァルトリエの婚約を破棄する!」

どよめきが、この学園一のフロアを埋め尽くした。

「この女は!貴族であることを鼻にかけ!平民から選ばれて学園に入ったミレナをさげずみ、辱めた!貴族と平民が共に学ぶべき、我がレグナント学園において、許されざる行為だ!」

エリシアは、俺が幼いころから俺を馬鹿にし、冷たい目で見てきた。

こんな女が妃になってたまるものか。

「俺は、エリシアとの婚約を破棄し、ミレナと婚約する!これが王と平民の新しい世界の始まりだ!」

エリシアを壇上から突き飛ばし、近くで目を輝かせていた、ミレナの手をつかんで壇上にあげる。

学生たちが立ち上がり、口笛を吹いたり歓声を上げ、俺を後押ししている。

「新しい国の始まりを!諸君らと共に!」

大歓声だ。

エリシアは、興奮して駆け寄る人々の中に見えなくなった。

そうだ。

薄汚い奴らは消え、俺の愛すべき者たちだけの、新しい国が始まる。


俺の…ラザリオ・フォン・レグナントの。エクリシア国王にとって、最も輝かしき日であった。


それから、12年。12年が過ぎた。

俺がもうすぐ30歳になるのだから、間違えようがない。20歳で即位し、今年が王として10年の日にもなる。


30歳を祝うための準備がすすめられ、国外からの賓客が来るということで、周囲に促され、出迎えにでたところ。

そこにいたのは、反逆者の集団と…あのエリシア…エリシア・ド・ヴァルトリエだった。

卒業式から、社交界にも姿を見せず。尼にでもなるのではと、俺の周りでは嘲笑われていた、あの女だ。

「お前!なんだこれは!」

「あなたはもう、国王ではありません。私は、それをあなたに伝えるために来ました」

こいつらは…反逆者は、俺の近衛騎士団だった。

「どういうことだ!手を!手を放せ!俺の言うことを…」

先ほどまで俺の側にいた配下たちも、逆賊に混ざりいなくなった。両側から騎士らに腕をつかまれ、身動きが取れない。

「あなたが私を断罪した、卒業式の日に。すべてがこうなると決まったんです」

こんな声で話すのだったか、エリシアは。

こんなに冷たい…憎しみさえない声で。

「断罪されるべきはあなたです。あなたが王として行ったこと、行わなかったこと。すべてがあなたの身に戻ってきます」

叫ぼうとしたが、口に布を押し込められ、腕を縛られ、床に転がされた。


許されるべきことではない。怒りに燃えて見上げた先では…

誰も、俺を見ていなかった。

「エリシア様!」「ヴァルトリエ家‼万歳!!」

周りは立ち上がり歓声を上げ、エリシアは、もう俺を見なかった。

俺はそのまま地下牢に入れられた。

全てがわからなかった。


エリシアが、ヴァルトリエ家が後押しし、新しい王が擁立されたようだった。

俺は、ミレナや家族と共に、どうやら地方で幽閉の身となるようだ。

「誕生日おめでとう、王様」

幽閉場所に向かう馬車に乗る際、御者に声をかけられた。

ぼさぼさの髪に、着替えていない服。

紋章のペンダントだけが、まるで不釣り合いに残されている。滑稽だろう。


馬車は窓に鉄格子がはまった上でカーテンが閉められ、椅子は固く、乗り心地は最悪だった。

このまま数日移動することを思うと、信じられなかった。

かなり長く進み、山の中に入ったかと思うと、馬車が止まった。


扉があけられ、雨が降る山道が見えた。

「出ろよ王様」

なんだ?

腕をつかまれて、馬車から落とされた。

なんだ?

「こんな機会があるとは、願いは叶うもんだな」

護衛のはずの騎士と、御者。

俺の周りと取り囲み、しゃがんで顔を覗き込まれる。

「王様、あんたは知りもしないだろうが、お前のせいでこいつらと俺の家族は死んだよ」

なにか言いたかったが、歯がカチカチと鳴るばかりだ。

「仇討ちだ」

その言葉に、体が動き暗闇を逃げようとした。

足がもつれ、すぐに転ぶ。泥水に顔をついた。

言葉にはならないが、ひいいいいいと悲鳴が、自分の喉の奥から聞こえた。

追いついた相手に蹴り飛ばされ、背中をつかまれ四つん這いにされた。


なんだ?これは


こんな暗いところで


誰も知らぬ山の中で


泥にまみれて


この俺が?


刃が振り下ろされ、首に何かが触れた。

紋章のペンダントが、泥に落ちた。


そこに血が流れ。


星が輝く銀の盾に、黄金の三日月が


王家の、我が王家の繁栄の象徴が。

俺の血と、闇に染まり、見えなくなった。


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