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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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⑨ ホームカミング

「じゃあ、そろそろ彼女を、元の時空に送り届けなくちゃね?」

 雪子に言われて、サン・ジェルマンも準備に入った。

「元の場所の座標は分かっているから、あとは時間ですね?」

「それは貞子さんが鳥居のポータルに入った、翌日にしましょう。」

 雪子が提案し、それをサン・ジェルマンが採用し、入力した。


「貞子さん、それでよろしいですね?」

「はい…あのう…。」

「何だい?」

「良かったら、お二人も一緒に来ていただけませんか?私一人では、事態をおばあ様に上手く説明できないかもしれないので…。」


「どうします?雪子さん。」

「いいわよ。どうせヒマだし。つき合うわ。」

「じゃあ、決まりですね。」

「ありがとうございます。」


「貞子さん、はい、コレ。大事な箱を忘れないでね。」

「ああ、ありがとうございます。」

「私はまた、別ルートで行くから、貴方たちは仲良く二人でいらっしゃい。」

「…。」

「なによ?サン・ジェルマン。」

「いえ、なんでもないです。」


 そんな訳で、サンジェルマンと貞子は、一緒にポータブルタイムマシンで元の時空の翌日に戻った。

 到着した場所は、藤原宅の庭だった。

 すぐ後方に、雪子も到着した。

 それは1796年2月4日の午前10時のことだった。


 縁側にはこの家の女当主が居た。

 恐らく年齢は70歳を過ぎているだろう。

 しかし濃緑色の留袖を隙なく着こなし、背筋を伸ばして美しく正座をするその佇まいからは、見る者に老いを一切感じさせないのであった。


 そしてやはり、まるで予期していたかのように、突然庭に現れた三人組に対して、彼女は別段驚きもせず、こちらに注目していたのであった。

 

 この場面で一番冷静でいられなかったのは、他ならぬ貞子だった。

「おばあ様!」

 彼女は走り出すと、すぐに祖母の膝にすがりつくなり、まるで小さな子どものように泣き出した。

 当主はそんな彼女を暫くそっと見つめていたが、やがて優しく声を掛けた。


「貞子さん、いつまでも泣いていては分かりませんよ。しっかりして。何があったのか、ちゃんと説明なさい。」

 それでようやく彼女は顔をあげ、祖母に今までの出来事を説明した。

 少しずつ冷静さを取り戻した彼女は、しっかりと事件の要点を話すことが出来たようだった。


「なるほど。」一言そう言うと、彼女はその場で立ち上がった。

「お客人のお二方、こちらで履物を脱いで、座敷に上がっていただけるかしら?」

 彼女にいわれるままに、サン・ジェルマンと雪子は、縁側につながる畳敷きの座敷に入って行った。


挿絵(By みてみん)

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